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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第十三章 結婚式

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終:これから

 滞りなく結婚式を終え、大広間で多数の王族貴族を相手に披露宴を済ませ、日が暮れた頃に夜会が始まった。


 代わる代わる挨拶にやってくる来賓に笑顔を貼り付けて応じてただでさえ気を張り詰めているところに、第三皇子のオスカーが「兄上に飽きたらいつでも僕の所に来てくださいね」などと言ってクロヴィスと一触即発状態になったりして、内心へとへとだった。


 しかし、これが終われば、一大イベントは完了。しばらくは聖女の仕事に専念できる。

 結婚式の準備は基本的にクロヴィスが担ってくれてはいたが、直前は私も何かと時間を取られており、各地からくる穢れの発生による浄化依頼が溜まってしまっているのだ。


 軽微であれば従来通り神官が対処してしまうのだが、神官が確認した結果、聖女の浄化魔術でないと祓い切れないと判断されたものがいくつかあるらしい。


「……アリス、疲れたか?」


 合間に私の顔を覗き込んだクロヴィスが、少し申し訳なさそうに眉を下げる。


「大丈夫。気疲れはあるけど」

「これが終われば、明日から新婚旅行だからな。あと少し頑張ってくれ」

「うん、わかっ……え?」


 聞き慣れない言葉を耳にして固まると、クロヴィスはにやりと笑った。


「聞いてなかったか? 明日から新婚旅行だ」

「聞いてない! 何で勝手に決めちゃったのっ?」


 明日から、穢れの浄化で彼方此方あちこちに出向くつもりだったのに。


「ジャンには相談して、了承済みだぞ? 三ヶ月ほど掛けて、帝国全土を回る予定だ。ついでに、各地で穢れを浄化してきてくれってさ」


 む、それはつまり、私が結婚式の後、大陸各地の浄化に掛かりきりになることを見越してのことか。


「単純に俺が浄化の仕事に同行するって言ってもお前は『これは聖女の仕事だから』と突っぱねかねないからな。俺が三ヶ月不在にしても大丈夫なように、全力で公務と引継ぎを済ませた」


 得意げに笑うクロヴィスに、私は不満そうな顔をしてみせる。

 と、今度は彼の方が唇を尖らせた。


「あのなぁ、新婚なのに仕事に掛かりきりで全く会えないなんて、俺は絶対に嫌なんだよ。わかるか?」

「全く会えないなんて言ってないじゃない。転移魔術もあるし、会おうと思えばいつでも会えるでしょう?」

「いいや、アリスのことだから、浄化依頼が来ている各地に出向きっぱなしで城に寄り付かなくなるのは目に見えている」


 ぐ、と言葉に詰まる。

 実際、仕事が山積みの内はそこまで頻繁に登城はできないだろうと思っていた。


 それでも何日かに一回は顔を出そうと思っていたのに。


「だが、俺はアリスに聖女の仕事を放棄しろとは絶対に言わない。だから俺が同行することにした。これが俺ができる最大の譲歩だ」


 そうまでして私と一緒にいたいのか。

 そう思うと急に頬が熱くなってくる。


「折角帝国の各地へ行くんだ。旅行だと思って楽しもう」


 そう言って笑うクロヴィスに、私は諦めて頷く。


「そうね、そうするわ」


 私だって、クロヴィスと過ごせるのは嬉しい。

 私が使命としている行動理念を理解してくれているクロヴィスだからこそ、この新婚旅行の提案なのだ。


 それは素直に嬉しいと思うが、相談もせずに決められてしまっていたことが正直悔しい。


 と、私の考えを読んだのか、クロヴィスが悪戯っ子のような笑みを浮かべた。


「アリスは、新婚でも数日に一回会えば充分だと思っていそうだからな。ちょっとした意趣返しだ」


 そこまで読まれていたのは正直予想外だ。ぐうの音も出ない。


「もう結婚したんだ。これまで以上に手加減はしないから、覚悟しておけよ」


 そうだ。結婚したということは、つまり今夜から寝所も共にするということ。

 前世の殺し屋時代、標的に近付くために色仕掛けをしたことは何度もあるが、結果として行為に至る前に殺していたので、実を言うと前世でも今の人生でも私は純潔だ。


 知識としては知っているが、体験としては未知の世界。

 今夜からのことを考えて、私は居た堪れない気持ちになるのだった。

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