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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第十一章 聖王国の聖女

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漆:作戦会議

 私達が玉座の間に着くとほぼ同時に、トリスタンとクラリスもやって来た。

 二人共、先程アリーヤが放った殲滅魔術の気配と地下から発せられたビュートの魔力を感知し、私の魔力を辿って来たのだ。


 すぐそこでガリューに会ったと言っていたので、あの子狐は町へロジェとジルベルトを探しに行ったはずだ。


 それよりも、クロヴィスはまだ来ないのだろうか。

 先程通信の魔具でことのあらましを伝えると、心底驚いてすぐ聖王国に向かうと言っていたのだけど。

 国を覆う結界が破壊された以上、転移魔術で一瞬にして聖王国の王都まで来られるはずなのに。


 と、玉座の間の扉がノックと同時に開き、そこからガリューを肩に乗せたクロヴィスと、ロジェとジルベルトが入って来た。


「クロヴィス! ロジェとジルベルトも、一緒だったの?」

「あ、ああ、二人とは城の前で鉢合わせて……俺はちょっと用があってたまたま聖王国に来ていたんだ……お前からの通信を聞いて驚いたよ」


 クロヴィスは何やら歯切れ悪く言いながら頬を掻いている。

 つまり、クロヴィスは私が聖王国に招かれて来訪していたことを知らずに、別件で来ていたということか。服装を見るに、おそらくお忍びだろう。


「申請は? 本名でなければ国境を越えられないはずだけど」


 私が事前に飛ばした紙には本名を記載するよう注意書きがされていた。

 勿論事前申請だけでなく、越境当日に関所で名前を書くことで入国することは可能だ。

 だが、帝国の皇族が一般市民に紛れたところで、名前を書けば一発で露見する。突然帝国の皇太子が現れたら国境で大騒ぎになるはずだ。


「ちゃんとオズワルドに連絡を入れたさ」


 言われて王太子を振替えると、彼はにこっと微笑んだ。 

 そうか、この二人は友好国同士の皇太子と王太子で年も同じだ。必然的に昔から顔を合わせる機会も多く、親交が深いのだろう。


「……で、さっきの話は本当なのか?」


 話を逸らしたクロヴィスに、私は頷いて、神官四人に事情を説明した。


「古代の、怪物……?」


 ロジェが呆然と呟く。


「聖女様が結界の継承に行かれてから、俺とクラリスでパオ遺跡に関する書物を調べたのですが、パオ王国に封印されていたとされる太古の魔物の名前もビュートでした……何か関係があるのですか?」


 冷静なトリスタンの問いに、私は頷く。


「ええ。パオ王国に封印されていたのが頭、聖王国に封印されていたのが胴体だそうよ」


 私の言葉の後を、国王が引継ぐ。


「ビュートは、千年前、五人の王によって封印されました。ファブリカティオ王国、パオ王国、リベラグロ王国、モンスフォリウム王国、プレアデス聖王国です……強大すぎるビュートを倒すことは叶わず、古代の魔術によって頭、胴体、両手、両足、心臓に分けて封印することがやっとだったと、我が国の記録には残っています」

「千年前……」

「帝国がまだ王国として建国された当初ね……そんな昔に、そんな強い魔物がいたなんて……」


 ジルベルトとクラリスが順に呟く。


「何故帝国にビュートに関する記録が残っていないのかは謎ですが、とにかく今は、その解放されてしまった胴体を探し出して、再度封印することが最優先事項という訳ですね」


 ロジェが状況をまとめてくれたので、私は頷きつつ全員を順に見た。


「その通りよ。ただ、聖王国の結界が破られてしまっているから、その結界は張り直す必要がある。二手に分かれましょう」


 そこまで言って、私はロジェを見た。


「まずは、結界再構築組。トリスタン、ロジェ、ジルベルト、クラリスの四人は、オズワルド殿下に協力して聖王国の結界を張って、ガリューはその補佐を。結界の核だった魔晶が割れてしまったけど、一時的に国を覆うだけなら核は要らないから、とにかく今はこの国に魔物を入れないようにして」

「承知しました」


 名を呼ばれた四人の神官が頷く。


「次に、ビュート討伐組。私とクロヴィスとオロチで、逃げた胴体を探しましょう……陛下、そういう訳ですので、私達は胴体を追います。陛下は、アルシオーネ公爵から、魔薬の入手経路を聞き出してください。それから、念のため国境沿いに騎士団を派遣し、魔物が入り込んでいないかの確認を」

「はい。帝国の聖女様にご苦労をお掛けして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」


 聖王国の王族も聖女も、これまでの長い歴史の中で、結界の精度ばかりを重視してきているため、攻撃魔術はあまり得意ではないらしい。

 

「オロチ、探知魔術を」

「既に先程実施しました。先程地底より飛び出したビュートと思われるものは、現在高速で北西の方角へ移動しています」

「北西の方角……パオ遺跡だ……!」


 切り分けられた胴体が、本能で惹き寄せられるように頭を探しているのだ。


 胴体にどこまでの知能が備わっているのかは甚だ疑問だが、少なくとも頭の封印が解かれてしまったら大変なことになるのは明白。


「胴体に何ができるのかわからないが……強大な魔力を持っているなら油断はできないな。今すぐパオ遺跡に転移して迎え撃とう」

「では私が転移魔術を……」


 オロチの申し出に、私達は頷き、ガリューを見た。


「何かあったらすぐ私に報せてね」

「わかっている。アリスも気を付けて」


 直後、オロチが転移魔術を唱え、彼と共に私とクロヴィスは、パオ遺跡に移動したのだった。

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