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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第十一章 聖王国の聖女

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零:友好国からの報せ

 結婚式まであと四ケ月を切り、目まぐるしい日々を送っていた。

 クロヴィスが式の準備は任せろと言ってくれたので、私は最低限のことだけで、基本的に神殿で聖女の仕事に注力できていた。

 それはありがたいが、ここ十日程、クロヴィスと会えていない。


 通信の魔具で話はできているものの、聖女の仕事で帝都に用があったついでに城へ行っても不在だったりして、顔を見ることさえできていないのだ。


 出逢ってから、三日とおかずに私を城へ呼び寄せるか、神殿に顔を出していたのはクロヴィスの方だったのに、ここ最近はそれもない。

 それだけ忙しいのだろうが、どうにも腑に落ちない。


 ここまで姿も見られないと、意図して避けられているような気さえしてしまう。

 クロヴィスに限ってそんなことはないと思う反面、あのクロヴィスがこんなにも会いに来なくなることが信じ難いのだ。


 と、その時メルが私に手紙を持ってきた。

 差出人は、プレアデス聖王国の国王。


 プレアデス聖王国は、帝国の東に隣接している古くからの友好国である。

 かの国にも聖女という存在がいて、国王と同列の権力があるというが、聖女の定義自体は帝国と異なり、浄化魔術が使えるかどうかは問題ではなく、より強い結界魔術が使える者が聖女となるらしい。


 そんな国の王が、帝国の聖女宛に手紙とは、一体何の用だろうか。

 勿論友好国であるため、国の大きな式典などには、皇族と並んで招待されることもあるので、手紙が来ること自体は不自然ではない。


 開封すると、そこには流麗な文字でこう綴られていた。


『ファブリカティオ帝国 当代聖女 アリス・ロードスター様

 聖女様に置かれましてはご機嫌麗しゅう。

 この度はお願いがあって連絡差し上げた次第にございます。

 現在、我が国では次代聖女の選定を行っておりますが、最終的な決定に難儀しており、どうかお力添えをいただきたく存じます。

 ご協力いただける場合は、同封の書面に署名の上、空に飛ばしてからいらしてください。

 プレアデス聖王国 国王 ローレンス・ソルテラ・プレアデス』


 聖女の選定、か。


 自分の時の苦い思い出が蘇り、思わず顔を顰めてしまったが、国が違えば当然聖女の選定基準や方法は異なるはずだ。

 友好国から協力を依頼されているのに断る理由は無い。


 それに、プレアデス聖王国はファブリカティオ帝国がまだ王国だった建国当初から交流がある国だ。もしかしたら、パオ遺跡や、封印されているという太古の魔物に関する情報を持っているかもしれない。

 協力することと引き換えに、歴史書などを確認させてもらえないか聞いてみるのはありかもしれない。


 よし、と私は同封された紙に自分の名前を書き込んだ。


 

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