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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第十章 神官昇格試験

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陸:リュカ組

 次に視線を移したのはリュカ組の映像だ。


『っ! そこは触れるなっ!』


 リュカが叫び、壁に手を突こうとしていたケイドが動きを止める。


『……僅かだが神官長の魔力の気配がする。おそらく触れた瞬間発動する罠魔術が仕掛けられているんだろう』


 壁を睨みながらリュカが呟く。


 その読み通り、そこにはジャンが罠魔術を仕掛けている。

 罠魔術は相手に悟られないよう、痕跡を残さないはずなのだが、魔術師の腕次第で微量の魔力が残ってしまう。

 普段罠魔術を仕掛けることなどないジャンが魔力を消しきれなかったのは仕方ない。


 それでも、意識してなければ気付かないほど微量な魔力だ。気付いたリュカの魔力感知能力が高い証拠だろう。


『……そちらは魔物の気配がする。迂回して行こう』


 リュカは極力魔物との遭遇を避けるようにルートを選び、ケイドとエルヴィラは大人しくそれに従っている。


「……エルヴィラも、反発することなく従っているわね」


 元王女のエルヴィラは、今でもたまに我が儘な言動を見せることはあるが、随分丸くなっている。

 とはいえ、彼女は神官見習いになってまだ日も浅い。

 今回昇格希望を出して来たのは正直驚いたが、本人が昇格を希望する以上、試験を受けること自体は拒否できない。


 勿論、立場上厳粛に審査はするつもりだが、正直私はエルヴィラが今回神官に選ばれることはないと思っている。


 今回、三人の神官の一人が大神官になることを踏まえ、神官に昇格できるのは六人のうち二人の予定だ。

 六人のうち、私の見立てで最も有力なのは最年長のハリーだ。彼もニール同様、私が聖女になった時点で魔術が使えた一人だし、性格は真面目で堅実、リュカとよく似ている。

 次点はケイドかニールだろう。魔術の腕でいえばニールが上だが、ケイドも私が聖女になって以降修練を積んで、簡単な魔術は使えるようになったと言っていた。ケイドもハリー同様、真面目で勤勉、私が帝都へ行く際の同行者に選ばれるくらい優秀だ。


 ニールも神官として力不足な訳ではない。ただ、彼の言動を見ていると、”自分こそが正しい”と思い込む節があり、彼が神官になるにはその辺りの考え方を改めなければならないという課題がある。

 寧ろ、人間性の素質だけでいえばリーゼルの方がよほど神官向きだと思う。


 デボラとエルヴィラは、丸くなったとはいえ元々かなり高飛車な性格だ。その元々の印象を覆す程の評価をこの試験中に得なければ難しいだろう。


『……リュカさん、魔力探知が得意なんですか?』


 ケイドが彼に続きながら尋ねる。


『得意という程ではないが……俺は浄化魔術の出力があまり高くないから、それ以外の魔術はできる限り精度を高めようと鍛錬した。魔力探知はその結果付随して強化されただけだ』

『そうですか……僕は浄化魔術は使えなくて、そもそも魔術も最近ようやく少し使えるようになったところなんですが……鍛錬すれば、僕もリュカさんのようになれますか?』

『魔術は才能によるところも大きいから、安易になれると答えることはできないが……鍛錬をしなければ上達もしない。上達したければ鍛錬するしかない。結果は後からついてくる』


 リュカが至極当然のことを答えると、ケイドは目を輝かせて頷いた。


『あの、この試験結果に関わらず、もしよろしければ、後日魔術の稽古をつけていただけないでしょうか』

『ああ、勿論構わない。時間を取ろう』


 ふむ、真面目で実直な二人らしい会話だ。


『……あの、鍛錬すれば、わたくしも魔術が使えるようになるかしら?』


 二人の会話に、エルヴィラがおずおずと口を挟む。


『さっきも話した通り、魔術は才能によるところも大きい。どんなに鍛錬しても魔術を使えない人も多いが、可能性はある。結局のところ、鍛錬しなければわからない。エルヴィラも、希望するならケイドと一緒に稽古を受けると良い』


 リュカが答えると、エルヴィラはまっすぐに彼を見て頷いた。

 リュカの面倒見の良さ、ケイドとエルヴィラの向上心も充分評価できる。


 評価表に記入し、もう一組に視線を移した、その時だった。


『何だこれはっ!』


 悲鳴に似た声が聞こえ、その元を探す。

 トリスタン組のハリーの声だった。


 映像を見ると、彼らの前には大きな魔物が立ちはだかっていた。


「あれは……魔牛!」


 漆黒の毛並みに、ぎらぎらした赤い眼。鼻息荒く、トリスタンを睨んでいる。


 魔牛は、中級クラスの魔物だ。

 牛の姿をしている事もあり、草原地帯ではよく見られるが、こんな足場の悪い森の中に現れるような魔物ではないはず。


「私が行ってくる。他に何か起きたら連絡して」


 クロヴィスが応じるより早く、私は飛翔魔術で飛び立ってトリスタン組の元へ向かった。

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