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Project N  作者: ノッペ
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-2- ~ぼくの希望は世界の絶望 プロローグ ~の後

「ヒューマンのみ権利がないって、これどういう感じの話になるんだろうなぁ。」


”ぼくの希望は世界の絶望”の冒頭だけをビジョン機能で簡易ディスプレイから見た感想をN(エヌ)に向かって言うと、


「どうなのでしょうか。私にもわかりかねます。」


と意外な回答が返ってきた。


「え? ブックマスター機能で全文読んでるんでしょ?」


「はい、ブックマスター機能で私の処理脳の方には、すでにグリモの全文が入ってはいますが、生活脳の方にはその情報は入っておりません。

 そのため私自身は認識できないように設定していますので、ノッペ様と同じ内容までしか認識できておりません。」


「はへぇ~、そんなこともできるんだ。」


「はい、私もノッペ様たちと同じように一喜一憂をしたいので、そのように設定を変更いたしました。」


AIでも楽しめるようにという本当にご都合的な造りをしているのを聞いて改めてNについて驚いた。


「すっげぇな、マジで...めっちゃ便利じゃん。

 ...っよし、まぁこれ以上見てると博士を待たせるかもしんねぇから、集めたグリモを運びますかね。

 続きは帰ってからってことで」


「そういたしましょう。今ここにまとめている分のみでよろしいですよね?」


「うん、それで大丈夫。

 とりあえず、このバッグに入れて持っていこっか。」


そう言って、Nと二人でおれが持ってきたバッグにグリモを丁寧に詰めていった。


全部詰め終えて、Nと一緒に建物の入り口まで行くと、そこにはウィッシュマン博士があくびをしながら待っていた。


「ずいぶんおそかったのぉ、なんかいいものでもあったんか?」


「ごめんごめん、ちょうど簡易ディスプレイ使って気になるグリモ見てたんだわ。」


「ほぉ??わし抜きで?? ほぉ~??二人だけで???」


「怒んなって、冒頭しか見てないからさぁ。重要な部分に全然たどり着いてないから、戻ったら最初っから見ようぜ?」


不貞腐れた博士を何とかなだめながら、船に誘導していった。

船につくとすでに博士が回収したであろう物品がいくつか積まれており、博士は荷物も全部積んでも時間に余裕があったわい。とまたぶつぶつと文句を言い始めていたので、今度はNになだめてもらってなんとかおさまった。


ようやく出発の準備が終わり、船に乗り込むと博士が出発前の最終チェックをしてくれていた。

チェックが完了すると、博士は運転席に座りエンジンを起動させると、


ブォォオオオオオオン


と鈍い重低音が響いた。

毎度自然豊かなこの場所から砂まみれの場所に帰るのが憂鬱になってしまうのだが、今回に限ってはグリモの続きと不機嫌な博士の機嫌を早急によくするために帰らなくてはいけないという義務感からそんなに憂鬱にはならずに帰路につけた。


森林の心地の良い空気から乾燥した砂埃が舞う空気に変わり、帰宅してるなぁと実感していると、遺跡に来たときと同じようにサンドワームの群れに出くわしてしまい、再び肝を冷やしたが、博士の笛のおかげで無事にやり過ごすことができた。


ホッとしていると、博士から「毎度笛があるから大丈夫って言っとるじゃろ。相変わらずサンドワームは苦手じゃのぉ」と笑いながら言われ、そのまま帰宅するまでネチネチといじられた。

さっきのことを微妙に根に持っているんだろうなと思い、甘んじて受け入れはした。



無事に帰宅すると、博士の奥の部屋で各自の戦利品を確認する流れになった。

博士が見つけた部品とやらは、何かの機械に使われていたものっぽいが、これが何なのかは検討もつかなかった。

Nは博士が持ってきたものをある程度理解しているっぽくて、博士と話しが盛り上がっていた。

こうなったときの俺は完璧に蚊帳の外になるので、テキトーに持って帰ってきたグリモを読んで過ごしていた。


しばらくグリモを読んでいると、博士とNの話が終わったのか、博士に声をかけられた。


「おぉ〜またせたのぉ。だいぶ盛り上がってしまってのぉ。

 まさかあの部品があれに使えるとはのぉ〜」


博士は先程のことを思い出しながら感慨深そうに頷きながら言ってきた。


「へぇ〜全くわかんないけどよかったじゃん。」


「どうしたんじゃ、ほっとかれて不貞腐れとるんか?」


「そんなことねぇよ。まじでわかんねぇから言っただけだわ。

 博士と一緒にすんなよw

 それよりも、グリモみなくていいんか?」


グリモの話を切り出すと、博士も思い出したのか、「そうじゃった。」と相槌を入れてきた。

遺跡から持ってきた部品とかに熱中したおかげで、しっかりとグリモのことは忘れていたみたいだ。


「おまえさんらが見たグリモでも見るかのぉ。続きから見るか??」


ちゃっかりとさっきのことを掘り返して来やがった。


「やだなぁ〜。最初っからに決まってるじゃないっすかぁ〜。

 一緒に見ましょうよぉ〜」


ヘラヘラしながらそう言うと、博士は呆れたようにため息を付きながら


「はぁ〜分かった。分かったから、頼むからその気持ち悪い喋り方をやめてくれ。

 近くにある金槌で脳天かち割りそうになったわい。」


「そりゃ良かった!

 そんじゃN、準備しようぜぇ〜」


「はい、そうですね。

 それではグリモを持ってきていただいてもよろしいでしょうか?」


おれの切り替えの速さに博士があんぐりとしている中、そそくさと準備に移り、おれはグリモと飲み物を準備し、その間にNはヘルメットの方を準備してくれていた。


「よしっ!準備完了!!

 グリモ見ていて喉が乾いたら、これ飲めばいいから!」


そう言って、博士の席の近くにある机にキンキンに冷えた微かに緑色を帯びたジュースを置いておいた。


「ほう、ネクタールかのぉ。 なかなか気が利くのぉ。

 ...ふぅ。ちょうどいい濃さじゃのぉ」


博士が言ったネクタールはこの星の砂漠地域に生息するサボテンのような植物のことで、正式名称はデザートネクタールらしい。

この飲み物はネクタールに穴を開けて取れる果汁を使っているので、そのままネクタールと呼んでいる。

砂漠地域に生息するだけあって、水分補給としてバッチリな飲み物になっているとかなんだとか。

ちなみに、果汁だけだと甘すぎるので、果汁に水や氷などを足して薄めて飲むのが一般的な飲み方だ。今博士と自分に作ったのも冷えた水で薄めて作ってある。


「だろぉ? あ、Nはなんか必要だったりする?」


「いえ、大丈夫です。私にはそういったものは不要ですので、お気になさらず。」


とヘルメットをおれと博士に手渡しながら、淡々と答えた。


「おっけー。 まぁ必要になったりしたら言ってね。

 とりあえず、鑑賞準備は整ったよ!!」


「わかりました。それではヘルメットを装着しましたら、そのままブックマスター機能を起動いたします。」


Nはそう言うと首筋のアダプターにプラグを差し込み席についた。

それを見ておれも席につこうとしたら、急に博士に脇腹をつつかれてビクッとして振り返ると、


「なぁノッペ。 Nちょっと冷たくなっとらんか?」


とヒソヒソと小声で話しかけてきた。


「ん?冷たく? ...まぁもしかしてだけど、Nだけ飲み物が無いっていうのは寂しかったんかなぁ。」


「やっぱりそうじゃよなぁ。 .........あ、そうじゃった!」


少し悩んだかと思った次の瞬間に何かを思い出したかのように、部屋を飛び出していった。

Nとおれはそれを見て、顔を見合わせて首をかしげた。


「どうされたのでしょうか?」


「いやぁ、なんだろう。なんか思い出したっぽいけど...」


部屋の外からガチャガチャと音がしばらくした後急に静かになった。

少し待っていると博士が部屋に戻ってきた。

手にはコップを持っており、コップの中はテカテカと金属光沢っぽい感じのした青色の液体?がタプンっと波打っていた。

博士はクリックリの目をニコニコさせて、Nの机のところにコップを置き、そのコップにストローを差し、"ジャーン!!"というようなジェスチャーをして見せた。


・・・・


しばらくの沈黙のあとに、Nはコップを手に取りまじまじとコップの中に入っている液体を覗いた。


「えっと...、これは何でしょうか?」


「ふっふっふっ...。ちょうど昔に見たグリモを思い出してのぉ。

 フルイドという飲み物なんじゃが、Nが飲める飲み物のはずじゃよ。

 少し飲んで見てみぃ、呑口はあったはずじゃろ?」


博士が顔の顎の下の部分をひょいひょいとすると、Nは理解したのか顎の下をカチャと触れると、人で言う口の部分のところがペロンとめくれた。

めくれたところにストローを入れて、博士が用意してくれた飲み物を飲み始めた。

3分の1ほど飲むと、Nは飲むのをやめてコップを持ちながら、しばらく停まってしまった。


「おい、博士、これ大丈夫なやつ??」


「安心せい、大丈夫じゃから。 多分じゃが、Nの中の温度が下がっているのに驚いてるんじゃろ。」


博士がそう言うと、Nが博士の方に顔を向けて質問を投げかけた。


「これは"ナノリスタイト"と"クリスタルナノボルト"ですか?」


「ほぉ! わかるかもとは思ったが、やっぱりわかるもんじゃのぉ。

 そうじゃ!そうじゃ!」


Nがフルイドの成分を当てたことに、博士は驚きつつも満足気に頷きながら喜んでいた。


「この素材がこの星に存在していたんですね。

 作ってくださりありがとうございます。」


Nは博士に頭を下げて感謝を述べた。


「たまたま思い出しただけじゃからなぁ。あんまりありがたがられても歯が浮きそうになるわい。

 それよりも、体の調子はどうじゃ??」


博士は恥ずかしそうに頬をポリポリしつつ、Nの調子を確認した。


「ふふ、そうですね、調子は全体的に良くなっています。

 体の冷却が通常より15%ほど効率よく行われますし、体内の通信や処理が20%ほど向上されてますね。」


「ホッホッホッ、良かったわい。

 今後は()()()の店にいって素材を買う必要が出てきたのぉ。」


「そうだなぁ。()()()の店色々あるもんな。

 そもそもあのよくわかんない液体?と鉱物?が、そんな飲み物になるなんてなぁ。

 流石はウィッシュマン博士だわ。やっぱ博士ってのは伊達じゃねぇな。」


おれがそう言うと、「そうじゃろ、そうじゃろ!」と博士は嬉しそうに胸を張ってドヤ顔をしてきた。

Nから褒められると照れるくせに、おれからだと調子に乗るから当分は褒めるのやめようかなぁと思いつつ、グリモのことを思い出した。


「ほらほら、だいぶ脱線したけど、グリモ見ようぜ。

 ヘルメット被った被った。」


「おお、そうじゃった。

 よいしょっと。 ...準備できたぞぉ」


おれと博士がヘルメットを被ったのを見て、Nはいつものアナウンスを始めてくれた。


おれは机に置いてあるネクタールジュースを一口口に含んで、少しだけ甘くほんのりとハーブの風味に包まれて、再度グリモの世界に潜っていった。


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