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ー第7話遠藤研究員 坂本龍馬と会見する




ー第7話 遠藤研究員 坂本龍馬と会見する




星岡が再び、才谷梅太郎を呼んだ。ダンボール小屋の所有者である宮本は、用があると言って出て行った。才谷は、またノッタリと出て来た。

理香子は、息を呑んで才谷を見た。写真よりも元気に見える。しかも、手には携帯を持っている。

「遠藤理香子です。才谷梅太郎さんですか?」

「あ〜理香子さん。才谷です」

「あの…携帯で何を?」

才谷は照れくさそうに笑った。

「けんさくをやっちょりました。エゲレスもメリケンも相変わらずじゃ。道具は凄くなったが、人は変わっちょらん。やり口は同じじゃき」

理香子は、才谷の順応性にあ然とした。明治から昭和 平成に至る日本社会の基本的な部分は、龍馬の構想の中に有った事は良く知られている。同時代の人間の中で、彼だけが…。この順応性こそが、その理由だと理香子は感じた。


「…。才谷さん。聞きたい事が有るの」

「何ぜよ」

「才谷さん。ファンケル バーグ公使とは、話をしてるの?」

ファンケル バーグは、アメリカ公使館の公使だ。

「会っちょる。エゲレスが西郷や大久保を、あおっちょるきに。戦にせん為には、ファンケルバーグの後ろだてが必要じゃき」

「あなたが、ファンケルバーグと話をしている記録が無いの。陸奥宗光が、会ってる事だけメモに残してるのを見つけたけど…」

「そりゃあそうじゃ。今世界は、エゲレスの力が強い。メリケンが工作すれば圧力が掛かる。全部内緒じゃ」

「確認させて。あなたは、メリケンを後ろ盾にしてるの?」

「そうじゃ。エゲレスもフランスも仕組みとしては、行き詰まっちょる。行き詰まって戦ばかりじゃ。だがメリケンの仕組みは、エゲレスやフランスより優っちょる。これからは、議会制民主主義ぜよ」

「メリケンを後ろ盾にしてるのは、あなた以外には?」

「勝じゃ。後は大目付の永井。老中も将軍も本音はエゲレスでもフランスでもない。大政奉還は今言った連中でやった。…だが土佐藩は何処どことも組よらん。組よらんきに、動かすのに骨が折れた。土佐藩から話が出たと云う事にならんと、辻褄つじつまが合わんきにな」

ー出来レースか…大政奉還はー

久利坂がつぶやいた。



「じゃが。かなめは西郷じゃ。西郷が動かんと言ったら、小松も藩主も動かん。大義名分が無くても、西郷が動くと成れば戦になる。西郷もファンケルバーグに会っちょる」

理香子は目を見開いた。

「まさか…。西郷は、アーネスト サトウと頻繁ひんぱんに会ってるのが日記に残ってますよ?」

才谷さんはニヤリと笑った。

「じゃが、西郷はサトウの援助を断っちょる。今やらなければ、革命の機会は失われるなんぞと、戦を煽っちょる。こん国で東洋人が何千人死のうと平気じゃ。人の誇りを傷つけても何とも思わん。礼節を知らぬが、大砲や鉄砲でおどすのは平気な連中じゃ。メリケンと組まねば、こん国の将来は成り行かんぜよ」

「つまり。西郷もメリケンの側だと?」

「桂も岩倉も西郷も大久保も…新政府はエゲレスと距離を置く方が良いと言っちょる」

事実。日露戦争の前まで、イギリスから離れようとしている。それが理由で、西郷は西南戦争で、大久保は暗殺されたとする説もある。


星岡は、良く解らないと云う顔をして言った。

「サトウってのは誰なんだ?理香子?」

「イギリス公使館の通訳官で、日記を残してるの。外交官の見た幕末って本も出版してる。イギリス公使館は、幕末の日本における勝者よ。でも…坂本龍馬が生きてれば、本を出版する気にはならなかったと思う」

「何故?」

「通訳官サトウも。ヘンリー パークス公使も。日本の内政に干渉する事は出来無くなったと思うから。不平等条約も、もっと早く改正されたでしょうね」

星岡は、上目使いになって言った。

「陸奥宗光のアレか?」

才谷が眉を上げた。

「星岡さん。陸奥を知っちょられますか?」

「たしか…外務大臣に成って、不平等条約の治外法権を改正した人だったよな…理香子?」

「そう。才谷さんの知っている陸奥は、まだ海援隊隊士だけど」

「ほぅ。陸奥は外国と渡り合いますか…陸奥は剃刀カミソリのように切れるきに」

才谷がそう言った所で、久利坂が何かに気付いて、手で全員を制した。

久利坂は、顔の緊張を緩めて、男が近づいて来るのを待った。



「久利坂さん。何をやらかしたんです?。ここらあたりに、各国の特務機関が大集合してますよ」

柔らかい顔をしているが…明らかに気配がただ者ではない。

「ご苦労様です。白根さん。岐阜以来ですね。実は、才谷関係で事が起こってまして」

「でしょう。イギリス大使館は火がついたようになってますよ。恐らく、抗議が総理に出ると思います。落とし所を打ち合わせましょう」

星岡は出て来る名前の高さに恐怖を感じた。

久利坂は、白根に言った。

「落とし所は、全員がいったん消える事で、収拾しゅうしゅう出来ると思います」

「消える?」

白根と星岡がハモった。

「えぇ。関係者全員が、いったん慶應3年に行きます。その為には、2部にロサンゼルス広場を30分確保して頂きたい」

白根は心配そうな顔で返した。

「37分まで可能ですが。久利坂さんの立場が危うくなりませんか?」

「才谷梅太郎…龍馬さんの為なら、大した事では有りません」

星岡は、割って入った。

「待った!。関係者全員って、何で俺や理香子まで行かなきゃならないんだ?」

久利坂は、星岡の顔をゆっくりと見た。

「残った場合。お二人の安全を確保する事は不可能です」

「つまり。突っ込んだ首は抜けないって意味か?。勘弁してくれよ幕末なんて」

「行きましょう。戻った時には、この白根部長が事態を収拾して下さってるはずです」

白根がアキラメロと目で星岡を見た。

「お任せ下さい。星岡さん。遠藤さん」

白根は、まるで自分達を知っているかのように言った。



「そう言えば…宮本さんは?」

久利坂が言った。

「星岡さん。彼は私の部下です。すでに脱出しました」

星岡は、ため息と共に、自分達がかなり前から段取りに加えられていた事を知った。




次話!

ー第8話中岡慎太郎

じわじわと才谷梅太郎に暗殺の危険が迫り来る…心配した陸援隊隊長中岡慎太郎が酢屋を尋ねて来た。140年後の世界に飛ぶ為に高台寺に向かう才谷とアメンティティだったが…。





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