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ー第3話久屋大通り公園




ー第3話久屋大通り公園



誕生日プレゼントの京都旅行の次の週の日曜。

星岡はロサンゼルス広場で路上ライブをやっていた。

目の前には、ホームレスのオッサンが1人、早く歌い終われと言わんばかりに立っていた。

この手のギャラリーに星岡が動じる事はない。

「…んでは、最後の曲です。クライムズクライシスと言う、携帯小説に共感して作った曲です。聞いて下さい。

知恵をくれ。



言葉が何の役に立つ

レノンが撃たれてからも

世界は戦場のままで

抗議の列は長くなるけれど

世論は変わってゆくものだと

チェイニーは言い放つ



悲劇はいつも弱い者達の

せめぎ合いの間から

さらに弱い者達の

上に降り注ぐ



やめてくれと叫ぶしか

知恵のない 僕らに

誰か 誰か知恵をくれ

ほんのちょっとした知恵を




正義が何の役に立つ

いつも開戦の口実で

裏切り者と罵られ

志願の列は長くなるけれど

本当の敵はここに

居ないのだと

若者は塹壕に朽ちてゆく



悲劇はいつも 弱い者達の

せめぎ合いの間から

さらに弱い者達の

上に降り注ぐ



やめてくれと叫ぶしか

知恵のない 僕らに

誰か 誰か 知恵をくれ

ほんのちょっとした知恵を


誰か 誰か知恵をくれ

ほんのちょっとした知恵を




ホームレスのオッサンは急かすように、ぞんざいに拍手した。

「…いつになく、激しい暖かい拍手をありがとうございます。また来週、この場所でお会いしましょう。星岡幸広でした」


星岡がギターを下ろす前に、オッサンは近づいてきた。

「終わったか?。終わったんだろ?」

えらくせっかちだ。

「はい。何か?」

「俺ん所に居る梅太郎って奴が、ホシオカ ユキヒロってのに会いたがってる。同じ名前だから、お前かもしれん。会ってくれるか?」

「はぁ…。良いですけど。どんな理由で?」

「友達を助けるのに、ホシオカユキヒロの力が要るんだと。アメンティティとか言う名前の…多分エジプト人だな」

「アメンティティ?。…何があったんだ?」

星岡は、慌ててギターをケースに入れると、周りの物をザックに詰め込んだ。その様子にオッサンが言った。

「アメンティティを知ってるのか?」

「知ってるも何も、奥さんが妊娠中の旦那さんです。トラブルなら大変だ。行きましょう」

星岡は歩き出した。

「そっちじゃねえよ」

オッサンは、星岡を引き留めて、北にあるホームレスの段ボール小屋に案内した。



ロサンゼルス広場の北側。道を挟んでここも公園になっている。中央に歩道があり、両側が林になっている。その林の中に、ビッシリと段ボール小屋が建ち並んでいた。

ここのホームレスは凄い。犬まで飼っていて身なりも小綺麗だ。公園の水道で洗濯された、洗濯物が干してある中を潜って、中程の段ボール小屋に案内された。


オッサンが入り口から声を掛けた。

「オーイ梅太郎っ!。ホシオカさんを連れて来たぞ〜」

中からゴソゴソっと音がして、人が出てきた。

ちぢれた天然バーマの頭髪は、ボニーテールにして縛ってあった。目は細く太い眉。唇は厚く、鼻から下が長い。顎は細く、額は広い。身長は160cm有るか無しか。上はフリースで、下は腰履きのジーンズに白のスニーカーを履いている。

人懐っこい目が星岡をとらえた。

「どうも。才谷梅太郎じゃ。ホシオカさんか?」

「そうです。アメンティティに何が?」

「まぁ座っちょくれ」

段ボール小屋の前に、立派なディレクターズチェアが3脚あった。オッサンも交えて、梅太郎は話し始めた。

「アメンティティさんは、脱出ポッドに不具合があって再び遭難しよりました。奥さんは、おそらく救助隊に救助されて無事だと言っちょりました」

「今どこに?」

「京師じゃ」

「キョウシ?…京都?。分かった。すぐ行く」

立ち上がりかけた星岡を、梅太郎は押し留めた。

「京は京じゃが、慶應3年の京ぜよ」

「…何だって?。それはいつだ?」

「今から、だいたい142年前じゃ」

星岡はアメンティティなら有り得ると思って、気が重くなった。

「よし。落ち着いて聞くぞ…。どうして、そうなるんだ?」

梅太郎はアメンティティが舟入りに落ちて来た所から語った。

「…で。なんでアメンティティが残って、あんたがここでホームレスやってるんだ?」

「わしゃ暗殺されるとアメンティティが言うきに。わしが死ぬと幕府と薩摩長州の間で戦が起こってしまう。生きていれば止められると。殺される前に、こっちに跳ぼうと言う事になった」

梅太郎は、しばった髪の右側を右手でゴソゴソとほぐした。

「アメンさんの水晶は、1人しか跳ばせんらしい。11月12日に高台寺からアメンティティさんを残して、こっちに半年前に跳んできた。色々あって、宮本さんに助けられ、ここでホームレスをやっちょります」

オッサンは宮本さんと言うらしい。宮本は言った。

「梅太郎はな。坂本龍馬だ。間違いない」

星岡は、理香子の戊辰戦争にまつわる話しを思い出した。

坂本龍馬が生きていたら、戊辰戦争はなかったと言う話を…。しかし、アメンティティの名前がなければ、無差別級の妄想狂に捕まったと思う所だった。

「で?。アメンティティは俺に会えと?」

「そうじゃ…」

梅太郎は言った。

「…ホシオカユキヒロに会って、ホティオティと連絡を取ってくれと。別の水晶を持って、わしが戻り。その水晶でアメンティティさんをここに戻す。それが段取りじゃ」

どうもこうもない。

「分かった。やろう」

幕末の京都は、新選組と京都見廻隊が平然と人を斬っていた時代だ。素性が判らないアメンティティが、幕府の役人に捕まりでもしたら…命はない。

たがその前に、星岡は理香子の事を思い出した。

専門家が必要だ。

彼女のヒーローでもある。会わせてやりたいと思った。

星岡は携帯を開いて、理香子をコールした。





次話!

ー第4話 国家機密

坂本龍馬は日本政府の国家機密だった。星岡からの電話を傍受した公安久利坂が理香子に張り付くが…。事態は意外な方向へと暴走し始める!。






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