ー第21話エピローグ
ー第21話エピローグ
アメンティティとミリティ姉さんを見送った後、星岡と理香子はネットカフェに飛び込んで、日本史を検索してみた。ネットカフェに行く路上には、昭和のフィルムで見た軍服の男達と何人もすれ違った。
検索した日本史は、ほぼ白根刑事の言った通りの展開になっていた。坂本龍馬は、三菱を世界最大の商社に育て上げていた。50才で突如、岩崎弥太郎に会社を譲ると、再び海援隊を組織して世界的なボランティア活動を始める。かたわらには、妻と言うよりは右腕として、おりょうさんが居たようだ。75才まで生き、高知の坂本家の墓地に葬られた。彼の銅像が、上野の西郷さんの隣に立っている画像には、星岡も理香子も驚きを隠せなかった。
ネットカフェを出た後、理香子は世界が変わっているので恐くて、星岡にアパートまで一緒に来てもらった。
アパートの階段を登る。
「ユキヒロ。もしかしたら、ユキヒロに軍隊の召集令状とか来てるかも…」
「志願制になってる事を祈っとくよ」
2人は理香子の部屋のドアの前まで来た。郵便受けに、何かが半分差し込んである。
「何だろ?」
理香子は、中に四角い物が入った封筒を抜いた。宛先は遠藤理香子になっている。差出人は…
「坂本龍一郎か…」封を切ってのぞくと、包みが2っ入っていた。
部屋のテーブルの上に、中身を出してみた。しっかりと梱包された包みを開けると、携帯電話が出てきた。もう一つも携帯電話だった。
2つ折りを開けると、電源が切れている。電源ボタンを押したが入らない。
「多分、私の充電器が使えると思う」
充電器に繋げると、電源が入った。
画面に、メールの画像が出て来た。
:Message
星岡さん。理香子さん。これを読んでおられると言う事は、無事2009年に戻られた事と思います。また、私の子孫が私の遺言を守ってくれたと言う事です。あの後どうなったかをお知らせします。公的には極秘事項になっており、知る事の出来ない話です。
我々は二条城にたどり着き、大目付の永井を通じて将軍を説得し、大阪に脱出を図りました。
大阪天保山まで来ましたが、そこにはエゲレス兵100人を擁したヘンリーパークスが待ち受けていました。パークスは将軍にー京に戻られよとー迫りました。100人の元込め銃を持ったエゲレス兵を前に、なすすべも有りません。しかしそこに、メリケンのファンケルバーグ公使がただ一人で現れました。将軍とパークスの間に立ち、こう言いました。
「ユナイテッド ステーツ アメリカは、将軍の安全を保証する事を要請され、これを約束した。もしユナイテッド キングダムが将軍の安全を脅かすのなら、この私を撃ち殺してからにせよ」
と。
パークスは怒り狂いながら、エゲレス兵に撤収を命じ、自らもその場を去りました。
将軍の戦艦開陽丸が現れ、我々は江戸に脱しました。
この後は、極秘事項では有りませんので、歴史書をご覧下さい。
もう一つの携帯は、久利坂さんの物です。彼は生涯に渡って、私の護衛を務めてくれました。数え切れない程の修羅場で、私の命を救ってくれました。
星岡さん。理香子さん。ありがとう。
才谷梅太郎こと、坂本龍馬
そこで終わっていた。
「そっちは久利坂さんのだって」
理香子は星岡を見た。星岡は包みを開けて、充電器にセットした。星岡は笑いながら言った。
「久利坂さんらしい」
:Message
星岡幸広さん。遠藤理香子さん。
私は坂本龍馬を一生守る事に決めました。何も言わず、石塔から抜けた事をお許し下さい。
私はこの時代に生きて幸せです。それがすべてです。
「うらやましい。この時代に生きて幸せだって…」
理香子は思わずつぶやいた。星岡にも、なんとなく久利坂の気持ちが分かる気がしていた。
星岡は意味もなく、リモコンを押してテレビをつけた。
「理香子。こんな風になって、良かったのかな…」
「アメンティティみたいに割り切れないよね。世界大戦は消えた。でも、東南アジアでは代理戦争…。結局はつじつま合っちゃうのかな…」
そう言う理香子の目がテレビに釘付けになった。
発掘調査が行われているらしい場所でレポーターがしゃべっている。
ー私は今。八王子市上野町本立寺の発掘現場に立っています。新撰組6番隊隊長 井上源三郎の遺体の調査の為、墓が発掘されましたが、その手に握られていた物を巡って、調査チームがトラブルに見舞われていますー
「まさか!」
星岡と理香子はハモリながらテレビに向かって、身を乗り出した。
ー握られていたのは、このようなIDカードで、ある美術館の学芸員の写真と名前が有ったとの事です。現物及びその内容は公表されていません。しかし、このような物が出土した事で、この発掘自体の信憑性が疑問視され、発掘は中止。発掘チームに参加した考古学者の学位剥奪にまで及ぶと見られていますー
「最後の最後に、源さんやってくれるよ。戊辰戦争が無くなったから戦死しなかったんだな…故郷に遺体が有るってのは。…よし、理香子!」
「なに?」
「この考古学者を救いに行くぞ!」
「でもさ!」
「これは俺達の責任だ…アメンティティを呼ぶぞ!」
理香子は、人の事になると疲れを知らない星岡の背中をジッと見つめた。
「どうした?」
不思議そうな顔で、星岡は振り返った。
「源さんもユキヒロも似てるね」
「めんどくさい所がか?。そこに惚れてるんだろ?」
「多分ね。ユキヒロは私のどこに惚れてるの?」
星岡はニッコリ笑って言った。
「理香子のめんどくさい所に決まってるだろ?」
「何それ?」
「行くぞ理香子」
「待ちなさいよ。私のどこがめんどくさいのよ…」
星岡はもう靴を履こうとしていた。
いつしか理香子も、他人事に首を突っ込む事が、好きになっている自分に気づいた。2人に平穏な日々は、しばらく訪れそうにもない。
ソングライター ホシオカ 龍馬編 完結
ー後書きにつづく