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ー第10話龍馬暗殺される?




ー第10話龍馬暗殺される?





アメンティティと中岡は、山里の民家に身をひそめていた。

囲炉裏いろりだんをとるものの、寒い。

山仕事の作業小屋で、持ち主は居ない。海援隊が持ってくる、おにぎりだけが食事だった。そのおにぎりを、食べながらアメンティティは聞いた。

「伊達小次郎さんは、土佐弁じゃないですね」

「伊達小次郎は変名で、陸奥陽之助むつようのすけが本名じゃ。あいつは紀州きしゅうの出じゃきに、土佐弁は話さん」

ここに隠れて、13日14日と陸奥がやって来て、数十人の武士が山の中に出没して居ると話していった。そして、今夜は15日の夜。陸奥は現れ無かった。史実では坂本龍馬暗殺の日だ。しかし、彼はこの時代に存在しない。

日付が16日に変わろうとする頃、三上太郎と云う海援隊隊士が戸の向こうで、合い言葉を言った。

中岡が三上を招き入れる。

「こんなに遅くどうした?。陸奥に何か有ったか?」

三上太郎は、越前なまりの土佐弁と云う妙なイントネーションで言った。

「五っ半過ぎに、隊長と中岡さん藤吉が新撰組に斬られたと、藩邸は大騒ぎになっちょります」

「何じゃと?。誰が言うちょるか!」

「藩邸で聞いた話ですが…谷や毛利が、菊屋の峰吉の知らせを受けて、近江屋に入ると隊長は頭を割られて絶命。中岡さんは屋根の上で重症との事でした」

中岡は目をいた。

「谷がぁ〜何を血迷うちょるか!」

中岡は刀をドスンと床に立てて怒った。三上がかまわず続ける。

「17日に葬儀が決まっちょります。我々は遺体を見せてもらえません。陸奥が藩邸に掛け合っちょりますが、近江屋に入る事もかないません」

「死体が無いぜよ。入れられる訳がない。後藤象二郎は何と言うちょる?」

後藤象二郎は坂本龍馬と中岡慎太郎の上司に当たる人物だ。

「後藤は、内輪もめで藩を割る訳にはいかん…事を荒立てるなの一点張りで、話になりません」

中岡は目をつぶって考えた。

「もう16日の朝じゃき。才谷が戻って来る。わしゃ薩摩藩邸に行く。西郷に掛け合えば、谷らを押さえられる」

今度は三上が目を剥いた。

「西郷は助けてくれましょうが、そこに行くまでに首が胴から離れましょう。お止め下さい」

中岡は浮いた腰を落として、首を振った。

「ならば何とする。座しとる訳にはいかんぜよ」

「高台寺党の伊東甲子太郎いとうかしたろうの与力を、陸奥が取り付けております」

「あれは、元新撰組ぞ。しかもこの山狩りも見て見ぬ振り…信用出来ん」

「出来ます」

三上は言い切った。

「根拠は?」

「この民家は、伊東が世話してくれ申した。敵なら…中岡さんの首は、とっくに胴から離れておりましょう」

中岡は愁然しゅうぜんとした顔をした。

「そうか…」

「ですが、隊長は甲子太郎の事は知りません。中岡さんが行かないと、斬り合いになるかもしれません」

「ここからどうやって、酢屋に?」

「今から山越で、五条橋下の材木屋敷の木橋に行き、鴨川を渡って、下の口から高瀬舟に乗る手はずを整えてあります。出ましょう。ご案内申す」




16日の朝が明けた。

酢屋から数十メートル南の近江屋…東に大通りを挟んで土佐藩邸が有る。

店先で海援隊が番人役と押し問答を繰り返している。

「何故、入れん!。斬られたは我が隊長ぞ!」

「藩邸の命でござる。新撰組が亡骸なきがらを奪いに来るとの噂が有るゆえ、何者も入れるなとの命でござる」

「わしゃ新撰組か?。身内じゃ、海援隊じゃ。亡骸をどうにかすると思うか?」

「藩邸の命でござる。藩邸に掛け合いなされ」

「同じ事を我らは、一時半も繰り返しておるぞ。一目見れば済む故…融通せよ」

海援隊は押し通ろうとした。番人役は顔を真っ赤にして、わめき始めた。

「出来ん!。出来んもんは出来ん!」

「何だと…」

言い返そうとした千屋寅之助の肩を誰かが叩いた。

「寅之助…とりあえず退け」

「小次郎か…」



小次郎こと、陸奥陽之助は近江屋前から、海援隊士を引き連れて北に向かって歩き始めた。

「どうじゃった藩邸は?」

「後藤は相変わらずラチが開かん。それより、酢屋の舟入に隊長が戻って来るぞ」

「いつ?」

「今日である事は確かだが、いつかは判らん。中岡さんも雨谷も舟入で待ち受ける。我らで周辺を固めねばならん」

「谷達は、今日も山狩りらしいな」

「万が一の事が有る。谷らは心配ないが、薩摩は酢屋にも人を配して来るかもしれん。これは内密だが…この襲撃、エゲレスの画策じゃと西郷から言づてが有った」

「西郷は敵か味方かどっちじゃ?」

「隊長をこの天地で、最も理解しているお人じゃ。だが、正面切れば、薩摩が割れる。そう言う事だ」


陸奥らが酢屋の舟入に達するのに5分と掛からなかった。酢屋は三条大橋から一本南の路地を入った所に有る。南から路地に入った。

そこには。

丸に十の字の旗が立ち、50人程度の武士が立っていた。

陸奥を始め海援隊全員の血の気が引いた。





ー次話!

第11話酢屋到着

星岡 理香子 久利坂そして才谷梅太郎。加えてミリティ姉さん。薩摩兵が待ち受ける酢屋舟入に落下する…5人の運命は?。

慶應3年の京で、歴史は思いもよらない方向に動いてゆく!





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