翼と剣
98)
「では、やるぞ」
と、グレンが言う。
「はい」
「頼む、グレン」
姫とルビーチェが言う。
うなずいたグレンが、姫の背後に回る。
ルビーチェは、姫と向かい合うように立った。
グレンからは、姫の向こうに、心配そうなルビーチェの顔が見えた。
(まったく、姫のことになると、こいつは)
そんなことを心の中で考え、グレンは微笑んだ。
グレンは、鏖殺の剣をふりあげる。
目の前には、黒い翼を広げた、姫の美しい背がある。
——姫の身体から、魔の血が相互作用を起こして発現した翼や、鱗、獣の毛などを分離する。
それは人の力でも、魔の力でもできない、超絶の技ではあるが、なにをどうすればいいかは、剣が知っている。
姫は、絶対の信頼をもって、なにも怖れず、グレンと剣に背を向けている。
神気を満たし、
「はあっ!」
剣が閃き、姫の身体をすり抜けたかのように見えた。
黒い翼が、霞となって霧散していく——。
99)
歴史書に言う。
忠義の魔導師の献身により死の淵から蘇った美姫が、簒奪者の大軍勢を打ち倒し、その王権を取りもどしたのだと。
簒奪者を滅ぼし、王国の女王となった姫は、民を慈しみ、長く平和な治世を築いていった。
ここに、また別の言い伝えがある。
姫は、王国の混乱を鎮めると、政を後継者に譲り、魔導師を伴侶として、何処へとも知れず、旅立っていったのだという。
どちらが事実であるのかは、もはやわからない。
いつも読んで下さってありがとうございます。なんとか結末までたどりつきました。あと一回で完結です。
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