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第十話 プレイヤー:ヴェノム(2)




『ダンジョンシーカーズ』について、彼女と話を続ける。ダンジョンに突入したことのない初心者をもっと装うべきだと思い、本当にダンジョンはあるのか、とか、モンスターはいるのか、とかを聞いた。


 すると彼女は空中から見たことのないダンジョン産のアイテムを取り出してみせて、存在を証明しようとしてくれた。わざとらしく驚きながら、そのまま話を聞く。


「ヴェノムさん。聞きたいことがあるんですが……なんでここまで、親切にしてくれるんです? 何から何まで、ありがたい話ばかりで……」


 素朴に感じていた疑問を、彼女に投げつける。正直言って初心者に構っている時間があったら、ダンジョンに潜り続けた方が良いと思う。



 彼女が、俺に会おうとした動機が分からない。怪しい。



 ゆっくりと目を閉じた後、こちらを見据えた彼女が人差し指を立てて、口を開いた。


「……まず一つ。招待ボーナスのために、まだ成人もしていない君を出しにしてしまったから、責任を感じていること」


「法律変わったので、もう成人ですけどね」


「……ともかく、巻き込んだことに対する負い目さ」


 人差し指に続いて彼女が中指を立てて、手がピースの形になる。


「そして、先ほどの素質の話に関わるんだけど……僕のスキルは、後衛向きなんだ。だから、誰か別のプレイヤーと潜った方が効率的にダンジョンを攻略できる。最も進んでいるとされる東京では、集団の強みを活かして、すでにC級ダンジョンの攻略を行っているそうだ。負けられない」


「……なるほど」


 掲げていた手を下ろし、真剣そうな眼差しで、彼女が俺のことをじっと見つめる。彼女の雰囲気が、変わったように見えた。


「最後に。これが最も大きな理由なんだが……僕には難病に苦しむ、妹がいる。それを治すのにはとんでもない額のお金が必要で、用意するためには、DSをやるしかない」


「そのために、君の力を貸して欲しい」


「ーーー」


 本当に悲しそうな顔つきをした彼女が、消え入るような声で言った。


 これが、彼女の原動力なのか。俺は今のところ、戦いたいからという理由だが、俺のものに比べて綺麗すぎる彼女の理由に、素直に感心する。


「そう……なんですね。ヴェノムさんには色々教えてもらった恩もありますし、力になれれば、と思います」


「本当かい!?」


 彼女が立ち上がって、俺の両手を包み込むように握る。彼女の手のひらは、男の俺のものとは違って、柔らかかった。


「いや、嬉しいな! さて、どうしようか! うーんと、そうだなぁ」


 手を離した後顎に手をつけて、色々考え込んでいる彼女に提案する。


「じゃあ、今日のところはここでお開きにして、またDMでやり取りをした後、ダンジョン突入の準備をしませんか?」


「ははは! いいね。それで行こう。もっとも、お礼に今からディナーをご馳走したいくらいだが」


 レジの方に向かった彼女が、会計を始めた。スマホを使い電子決済をした彼女が、こちらの方を向く。


「じゃあ、今後ともよろしく頼むよ。また何か質問があったら、気軽にDMしてきてくれ。すぐに返信するから」


 会計を済ませ、店の外に出る。すでに日は沈みかけていて、どんどん辺りは暗くなっていくだろう。


「ありがとうございます。それと、ごちそうさまでした。では、失礼します」

「うん。じゃあね! では、また!」


 店の前。彼女と別れて、駅の方に向かう。色々、有用な情報を手に入れられた。家に帰った後、またスキルについて考えていこう。


 駅の改札を通り、地下鉄に乗る。帰り道はぎゅうぎゅうの満員電車で、人で溢れかえっていた。





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11/15サーガフォレスト様より発売

ダンジョンシーカーズ➁巻


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4/14サーガフォレスト様より発売

ダンジョンシーカーズ①巻

― 新着の感想 ―
漫画でも怪しい雰囲気でした! 登場シーンが電柱の上で!笑 さらに着物姿! PKが好きそうな名前、ヴェノムと名乗るのも怪しいだろう… 展開が早いのは良いが漫画も喫茶店で待ち合わせしろよ。着物着てるんだか…
[気になる点] ふむ、この女性…怪しい
[一言] いやー、不穏すね 宮城の少なさ、ねぇ
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