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試験1日目

 朝。

 俺はいつもより早く目覚めると、身支度を済ませてこの船に備え付けられた食堂に移動する。

 今日は試験初日。朝食の後、無人島に足を踏み入れたと同時に試験は始まる。そのためか食堂に来ている生徒は皆、戦々恐々とした表情が多い。無理はない。これまでの試験でも今回のような形式は初めてだ。ましてや戦闘系の試験が多い中で、選択肢として戦わなくとも十分にポイントが稼げるルールが設けられている。今までの学校の方針では考えられないルールの設定であるが、これもまたSクラスをつくるうえでの大きな改変の影響か否か。確認することはできないが、そんなことは些細な事。どちらにせよ、Sクラス昇格する10位までに入るには戦闘をすることは避けては通れない。結局は戦うことになる。ましてや、西園寺や舞原といった自他共に認める実力者がいる中で、できるだけ多くのポイントを取っておきたいと考えるのは当然の心理だろう。そうならば、戦わないという選択肢は効率が悪い。ポイントの稼ぎは戦闘が最も効率がいいように設計されているのは学校の方針ゆえ。2週間戦いきるタフさも求められる戦いだ。

 互いをだまし、自らの戦術を押し通すような戦いが繰り広げられることだろう。そこにどうやって割り込めるかも非常に重要な考え方だ。

 しかし、ずっとこんなことを考えていると、せっかくの朝食がまずくなるな。

 俺はそこで思考を打ち切って、豪華な朝食に舌鼓を打つことにした。


 

 前回のように試験開始を教師たちが宣言することもなく、Bから下のクラス代表二人ずつと、俺たちAクラスが船が着岸した港から降りたことで試験のタイマーは動き始める。

 今から2週間。この無人島でSクラス争奪戦が行われる。果たして、どのような結果となるかは誰にも予測はできない。

 生徒は皆、散り散りになって木々が並び立つ森の中へ踏み入れていく。それを見ながら俺は左側に、すなわち遠くへと広がる砂浜を海に沿って歩く。

 歩きやすい靴にはしてあるが、細かい砂は足を沈めるかのごとく俺の歩行を妨害してくる。が、俺は別に急いでいるわけではないため、そこまで億劫には感じない。

 目指すのは北西側にある岩山だ。

 衛星写真をもとにした島全体の地図では細かに確認はできないが、土壌の様子、周りの木々などを見るに恐らくは本試験の拠点には十分だ。

 俺は学校に配布された装備品を持っている。十分大きいといえるバックパックも背負っている。だが、そんなものを背負って戦闘するなど常軌を逸した考えだ。

 つまりはこの荷物を置く場所が必要だ。ありがたいことにこの試験にはエリア占有なんていうポイント入手方法が存在している。エリア占有をする機器の近くを拠点とすれば、基本的に俺がいる間に上書きされる心配はない。だが、逆にそれを逆手にとって考えれば、拠点としている所の近くには占有機器があるとも考えられる。

 そこから導き出される答えは、拠点そのものを隠す必要がある。それが可能なのは。

「洞窟、が正解だよな」

 辿り着いた岩山を回っていると、ちょうどいい洞窟のような穴があった。

 俺は中を目視で確認した後、その中に踏み入れる。それなりに奥は深いようで、外からのぞいただけじゃ、奥までは確認できそうもない。それに。

「だよな。そうだと思った」

 影に隠れるようにそこには、自然の色と見合わないメタルチックな電子機器が設置されてあった。俺はそこに自分の腕時計をかざして占有を開始する。

 すると即座に俺のタブレットに通知が飛ぶ。占有したことにより手に入れた20ポイントが振り込まれたのだ。

 これから1時間ごとにポイントが振り込まれていく。

 俺はその機械に自ら羽織っていたジャージをかけておく。なるべくのカモフラージュだ。

 そこからテントを立て、簡単に拠点をつくる。

 取り敢えず、1日目に立てたノルマはクリア。残りの時間は、課題かそれとも別のエリアを占有しに行くか。

 エリア占有はほとんどデメリットが存在しないポイント入手方法だ。しかも、長時間占有できなくとも、占有した直後に20ポイントが振り込まれる。

 それに今は戦闘は始まっていない。今が稼ぎ時であるのは明白だ。

 だが、その程度のことはこの試験に挑んでいるものならば全員が考えうることだ。恐らく、ほとんどの人間がポイントを手に入れるために血眼になって島を駆けまわっていることだろう。そう考えると、エリア占有が残っているとは考えにくい。そうすると、今は課題をしたほうが得策か。

 ここまで来るのに3時間程度を要した。現在時刻は12時過ぎといったところ。

 タブレットを取り出し、課題の有無を確認する。

 見ると、全体では数十個の課題が出現しているが、この辺りでは1つしかない。

 当然といえば当然。ここは島の奥のほうに位置する。初日からこんな所に多くの課題が出現するのは考えにくい。

 競争率は高そうだが、言ってみる価値はある。

 俺は立ち上がってタブレット片手に移動を開始した。GPSが本当に頼れるな。

 にしても、今回の試験は本当にイレギュラーなものだ。

 今までに戦闘以外の実力を求められたことはなかったはずだ。それに急すぎるSクラスの発足。学園長は別に今年から就任したわけじゃない。つまりはこの計画を今に執行しなければならなくなった理由があると考えるのが妥当か。まあ、単純に偶然が重なったという線も捨てきれないわけではあるが。

 しかし、前説が正しいのであれば、おそらく原因には革命軍がかかわっているとみて間違いなさそうだ。現に舞原によれば生徒の謎の失踪は続いていると言っている。

 大きな勢力が動き始めている。

 俺がこのままこの学校で生活し続けるのであれば、いつか革命軍とも戦うことになる。

 まあ、本心としてはそんな大きな衝突には巻き込まれたくはないわけではあるが。

 そんなことを考えている内に目的地に到着する。既に何人かの生徒がエントリーを済ませてカダイノカイシヲ待っている。

 俺は教師に課題参加の旨を伝えると、手持ちのタブレットで何かを操作すると、俺が持っているタブレットに通知が来た。

 エントリー完了とのこと。

 そして俺が最後のエントリーだったのか、タブレットが自動で動き、白い画面が映し出される。

「これから行う課題は数学。全部で10問ある。制限時間内の正答数で順位をつける。1位は60ポイントと水2L、2位は30ポイントと水1L、3位は15ポイントと水500mlだ。それでは始めてくれ。制限時間は10分だ」

 その声とともに俺のタブレットには問題が映し出される。俺はそれを難なく解いてゆき、やがて。

「順位を発表する。1位椿零、2位……」

 それほど難しくはなかったため、難なく満点を取ることができた。これにより60ポイントと水2Lを手に入れる。

 今日だけで80ポイント。試験開始としては順調だが、配布された物資から試験中のポイント消費は避けられない。それに万が一、戦闘で負けた場合にも立て直しが効くようにはしたい。

 取り敢えず、水を確保できたのは良い成果と言える。

 地図を開き、課題を確認するがこの辺りには見当たらず。ならば、長居は無用か。俺は大人しく拠点に戻ることにした。

 その後、近くに出現した課題でも1位を取り、60ポイントと食料である缶詰3缶を手に入れ、今日だけで合計120ポイントを獲得更には占有をしたことにより170のポイントも入手する。

 現在は午後7時。この試験では時刻による行動制限のルールはない。故にこの夜間に何か行動を起こしてくることも無きにしも非ず。

 だが、冷静に考えれば昼間行動するよりもずっとリスキーな選択だ。

 木々が生い茂る中を配布の懐中電灯の灯りのみで歩き回るのは、危険だ。何しろ、足場は木々の根や少しばかり大きな石、更にはちょっとした崖など流石に危険が伴いすぎだ。

 それに今は戦闘は禁止。そこまで歩き回る必要性はない。

 極めつけは夜の間に行動をするということは、睡眠という体力回復をしないことと同義。そんな生半可な選択ではこの無人島での試験は乗り越えられない。下手したら体調不良でのリタイアなんて可能性も十分考えられるしな。

 俺は寝袋にくるまると、目を瞑って睡眠をとる。2週間と長い期間尾のなわれるこの試験においては通常よりもタフさが求められるだろう。

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