表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/55

試験概要

 Sクラス争奪戦のことを学園長直々に示唆されてからの翌日。教室に入ると嫌でもわからせられた、そのピリついた空気に。

 俺は少しばかりの居心地の悪さを感じつつ、自席に座る。何なんだこの空気、そんなに機嫌が悪くなるような出来事があったのだろうか。

「ほんと、マイペースね。まあ、今回に関しては私も同じだけども」

 突然俺に話しかけてきた少女、舞原千歳はいつもと変わらぬ様子でいる。

 俺は率直に疑問を投げかけた。

「なあ、何でこんなに空気がピリついてんだ? なんかあったか?」

「そういうところよ……」

「どういうところだよ」

 いきなりため息をついた舞原は、改めて答える。

「昨日、Sクラス争奪戦の話があったでしょ? それが原因よ」

「まあ、予想はついていたが、何か気に障ることでもあったのか?」

 そんなにあの話が気に食わなかったのか? 別に悪いような話ではなかったが。

「みんな、Sクラスに上がるために必死なのよ。実際、卒業後は必ず警察組織に組み込まれるけど、いくらAクラスから入ったって言ったって、最初の扱いはかなり乱雑なものよ。けど、それがたった10人しか所属できないAクラスの上のクラスから卒業したとなると話は変わってくる。それなりの好待遇は受けられるはずよ。つまりは」

「Sクラスに上がって自らの評価を上げるため、か。確かにこのクラスじゃ舞原と西園寺がいるからな。比べられればどうしても見劣りする。いくら所属クラスが同じといえどもな。そんな中で10人という少数の中に所属できれば評価はまた違ってくると。なんか、めんどくさい考え方だな」

 今のクラスじゃ評価は上がらないから、もっと上のクラスで戦えばもっと評価は上がってくると。要約すればそういう考えをしているということだろう。

 ただただ、自分の実力に多大なる自信を持っている、ということが伺える。まるで、自分の評価は間違っていると、舞原と肩を並べる程度には実力があると、そういうことだろうか。

 まあ、実力の向上心は結構だが、先ずは自分の程度を知ったほうが身のためだとは思うけどな。

 自分の現在地がわからないままに突進しても、見誤って詰むか、返り討ちに合うか。どちらにせよ、自身の力量ぐらいは理解したほうが良いということだ。

 あれ、これ何の話だっけ。

「それに今日はそのSクラス争奪戦の概要が発表されるから、それも原因だと思うわ」

「そんなこと言ってたか? まったくもって知らないんだが」

「貴方って本当に人の話を聞かないのね」

 と、呆れられてしまった。

 話を聞かなかったのは俺が悪いが、別にそこまで重要な話とは思わないがな。

 今のところ、Sクラス争奪戦にどう向き合うかは検討中だ。概要も大事な判断材料になりうるが、ぶっちゃけ恐らく個人戦ということは予測できるし、そこまで大事なものとは思っていなかった次第だ。

 今日に説明があるなら真面目に聞いてみるか。減るものでもないしな。


 朝から授業はなく、Sクラス争奪戦についての概要を説明する時間が設けられていた。

教師はAクラス全員が集まっていることを確認すると、話し始める。

「既に学園長直々に言葉をもらっているとは思うが、新たにAクラスの上のクラスを設けることになった。それに伴い、Aクラスとほかのクラス各2名を加えた全50名で10の席を奪い合ってもらう。資料を回す。手元に渡ったのち、一通り目を通しながら聞け」

言われた通り、手元に来た資料を開き、目を通してみると、教師が早速説明を続けた。

「今回の特別試験は個人戦形式のポイント争奪戦だ。場所は我々が保有し管理している無人島、期間は2週間だ。ポイントの入手方法は三つ。まずは課題だ。これは1日10個、エリアにランダムに出現する。内容は公にはできないが、課題クリアで平均20ポイント程度は得られる。課題がある場所に行くと、教師が必ず待機している。その教師に受け付けをすませばエントリー完了だ。エントリー数は課題によって様々だが、多くの人数を受け付けているわけではない。少数の可能性は極めて高いということを視野に入れて行動することを勧める。報酬はポイントは勿論のこと、水や食料といった本試験に役立つアイテムも手に入れることができる。次にエリア占有だ。これは島に30の電子端末をかざす機械が設置されている。そこに電子端末をかざすことによってエリア占有をすることが出来る。占有は占有開始時に即刻20ポイントが振り込まれ、そこから1時間ごとに10、20と10の倍数で占有時間が長いほど高ポイントを得られる。そして、試験終了時占有しているエリア一つにつき自分が占有した累計の時間×100のポイントがボーナスとして振り込まれる。占有は誰でも何個でも出来るが、他の者が先に占有していた場合、その者が占有してから30分後以降から上書きが可能となる。最後に戦闘についてだが、戦闘は試験開始から三日後から解禁とする。島内にあるオブジェクトは使用しても構わない。また、1対1の形にこだわって戦う必要はない。勝利条件はこれから配る電子機器を相手のものに10秒かざす、又はランプを一つ点滅させることだ。得られるポイントは相手のポイントの4分の1を得られる。ただし、最終日前日と最終日は2分の1とする。これらによって集めたポイントの合計が最終日に高かった10人がSクラスに昇格する」

つまり、1週間でポイントを掻き集めて、残りの一週間で争奪戦を行うってことか。どちらにせよ、2週間も無人島で過ごすということは、なれない環境での生活を余儀なくされる。そんな中でポイントの争奪戦。しかも個人戦。頼るような仲間はいない。想像しているよりも過酷な試験になりそうだ。

「また、得たポイントは即座に振り込まれ、試験中に使用可能だ。使用用途としては無人島生活においての用品の購入である。試験前には必需品として2リットルペットボトルの水1本、一人用のテント、懐中電灯、救急用品、乾パン7つ、バックパックが支給される。が、基本的には地図にある本部で初日から食べ物、水などの用品を販売している。なお、無料の冷水機を設置しているが、容器に入れて持ち運ぶのは禁止とする。また、下着などの必需品については無料で配布することとする。それに加えてこの間の試験に用いた腕時計だ。これにはGPSが付いており、生徒の位置、また生徒の健康状態は我々本部がリアルタイムでチェックしている。もし、体調の悪化、怪我など試験続行が難しい状態におかれれば、即刻リタイアを判断し、救護に向かう。また本部でリタイアを申し出れば認める対応をする。だが、今回のリタイアは前回の試験とは違い、リタイアすれば今試験復帰は叶わない。つまりはSクラスへの昇格はなくなるということだ。故障などの異常が生じた場合、本部で無償で取り換えることができる。加えて、最後の一週間は課題は停止とする。これは全エリアが戦場とするための措置だ。だが、エリア占有は可能とする。しかし、占有しているエリアでの戦闘には何も影響はない。勿論、エリア移動も行われるが、移動失敗に関するマイナスポイントはなしとなる。これも戦闘をメインとした争奪戦のためだ。ここまで急ぎ足で説明したが、詳しいことは資料に載せてある。それでもわからない場合は我々に訊くように」

長い説明を終えると教師は去っていく。

俺は資料に目を落とす。先程ポイントでの購入と言っていたが、どうやら水、食料、更には釣り道具等々、数多くのラインナップが並んでいる。一番心配している水は500ml、1ℓ、2ℓdが用意されており、それぞれ10、70、100と消費ポイントが明記されている。話を聞くと課題としてこれらの用品を手に入れることはできるが、恐らく少しばかりの購入は避けられないと考えたほうがよさそうだ。幸い、テントといった必需品は無償配布のため、そこそこポイントは抑えられるだろう。

ここまで考えてみたものの結局は最後の戦闘でどれだけ勝てるかの勝負になることは変わりない。ましてや、場所は慣れない環境である無人島だ。そうことがうまく運ぶとは思っていない。いつだって臨機応変に。感情を殺して冷静に物事を進めることこそ効率的な勝利方法だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ