舞原とデート!?と思ったことは一度もない
「で、何か目星だとか特徴とかそういうやつはわかっているのか?」
まさか何もわからず手探り状態で探し回ってるんじゃないだろうな。
「今わかっているのは、相手は能力者ということ。被害者と思われる人たちが行方不明になっていることから目的は恐らく拉致だとされてるわ」
「拉致?」
「ええ、ねらわれた人の共通点は全員能力者だということ。もちろん犯行現場は人目につかない路地裏が多いわね」
「何が目的なんだ? わざわざ能力者を拉致して。しかも金銭などの要求もない」
それはつまり、拉致をして何かを手に入れるという手段の一つとした犯行ではない。まるで拉致そのものに意味があるような。
「革命軍」
ぼそり、と舞原は呟く。
「今の世界は言うなれば能力者主義。持つ者が勝者、持たざる者が敗者。つまりこの世界において無能力者は異分子なのよ。何処からも求められない存在、必要のない存在がこの世界で生きていくにはどうすればいいと思う?」
「さあ、そんなものは見当もつかないが。そんな無能力者でも働けるような場所に行くしかないんじゃないのか?」
「残念ながら、この世界にそんな甘えた考えは存在しないわ。無能力者は同志を探し、それはやがて一つの宗教のように膨れ上がり、そんな者が目指すのは自分たちが優位にたつ世界。まとめれば、革命を起こす集団。それが革命軍、またの名をレジスタンス」
「そいつらが拉致? 求めてるのは同志何だろ。どうしてわざわざリスキーな相手を」
「この世界を根本的に変えるときに避けて通れないのは今の世界を継続させたいと願うものとの戦い。そのために必要な戦力を集めてるのよ。この世界なら洗脳やその類は珍しくないわ」
改変の際に避けて通れない能力者主義との戦闘。能力というアドバンテージを取られた状態で勝つためにはハンムラビ法典に従って。ってことか。
つまり、拉致られた能力者は戦闘の道具。都合のいい手駒、か。
何ともむごい話だ。
「だが、それ俺たちが首突っ込んでいいものなのか。もっと上の奴らが対応したりするレベルじゃないか?」
革命軍とか能力者主義とか。明らか俺たち学生がかかわるような規模ではない気がするが。
「能力者主義の世界でその能力で競い合う学校のエリート。それだけで上の人間だとは思わない?」
「年齢は些細な問題っていうのか」
俺もそんなエリートに仲間入りってか。面倒くさいったらありゃしない。
「んで、そんな情報から考えられる今の最善の調査方法を教えてくれないか?」
「え、っと、そうね、取り敢えず人が集まる場所で探してみる?」
「つまりは闇雲に探していると」
なんでだよ。そこまでわかってんならもうちょっと考えろよ。
というか取り敢えず、なんて使ってるのは考えてない証拠だろうに。
俺は嘆息する。
「勢いだけで調査して得られるものは少ない。先ずは犯行現場から調べるのが王道だろう」
「そうね、私もそう思ってたわ」
「どこまで取り繕うつもりだ……」
呆れの視線を向けながら俺たちは犯行現場へと足を向けた。
「バニラクリームフラペチーノのグランデでシロップはホワイトモカシロップに変更でキャラメルソースとホイップクリーム多めでお願いします」
「色々と言いたいことがあるが先ず言わせてもらおう。何だその注文は」
何かの呪文か? そもそも、飲み物か食べ物かもわからない。それに何より……。
「おかしいな。俺たちは犯行現場に向かっていたはずなんだが。やけに繫盛した場所だ。犯行現場ってのは人目がつかないような場所だったんじゃないのか?」
「時に人には休憩が必要なのよ」
「いうほど動いてないが?」
確かに犯行現場に向かったはずなんだが、舞原についていった結果、なぜか喫茶店に入ることになっていた。
何故?
「なんだ、俺はお前の用が終わるまで待たされるのか? 俺を連れまわしたツケは高くつくぞ」
「なら貴方も何か頼めばいいじゃない」
「そう言われても別に腹が減ってるわけでもないんだが」
俺はメニューを手にとって一通り目を通す。
「なんだかんだ文句言って、意外と乗り気ってどういうこと?」
「俺は別に休憩が嫌だと言った覚えはないぞ」
言うなれば、調査という名目で授業もさぼってその調査もさぼれるってことだ。
そんな面倒ごともない休憩がいやなわけがない。
休憩、大歓迎。
やっぱり時には休憩は必要なのだ。
「コーヒーでも頼むか。他のは……ようわからん」
ほとんどがカタカナで書かれたメニュー表。こんな店にはめったに行かない俺がそれを理解できるはずもない。
みんなだってイタリアレストランのメニュー表は読めないだろう。それと同じだ。
「お待たせしました。フラペチーノでございます」
なんだかんだ話していると、店員さんが先程舞原が頼んだ物を持ってきてくれる。
「あと、コーヒーブラック一つ追加オーダーお願いします」
俺はその店員さんに言ったのだが、その店員さんは笑顔をたたえると、
「でしたらご一緒にこちらもどうですか。カップルなら割引しますよ」
そう言って、一つの料理を指す。
「カップル?」
カップルってあれか。カレカノの関係のあれか。
「カップル!?」
目の前では舞原が赤面しつつ声を上げる。
つまりは、俺と舞原がカレカノと。なるほどなるほど。
「結構です。あとカップルとかそういうんじゃないんで」
「それは失礼しました。それではすぐお持ちしますので少々お待ちください」
それだけ言い残して店員は席を離れる。
変な先入観で勘違いされるのは困るな。
「え、即答されるのは少し傷ついたわ」
「変な邪推されるのを防ぐのは即答することだろ」
万が一、いや億が一。そう那由多の一の末に舞原と俺がそういう関係だったとして。
「舞原が彼女……。…………。ないな……」
「熟考の末の否定は失礼だと思わないのかしら」
思ってないから言っている。
というか、なんでこんな話になった。当初の目的を忘れてないか。
俺がそんな疑問を抱えたとき、気づいた。
「外、騒がしすぎやしないか?」
「ええ、私もそう思ってたところだわ」
店内にいても伝わってくる程の騒がしさ。
ただ事じゃないことはいやでも察せられる。
「休憩は終わりだ。仕事に戻るぞ」
「でもまだ飲み物飲み終わってない……」
「言ってる場合か。後でいくらでも飲ませてやる」
惜しそうに最後の一口を飲むと、きりっと表情を変えて言う。
「さあ、仕事の時間よ」
「この空気から一気にシリアスにするには無理があるぞ」




