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負ける気はしない

 「先約って舞原のことだったのか?」

「ああ」

 汗衫の問い掛けに俺は本から目を離さずに答えた。

「いつそんなことを約束したんだ?そんなタイミングあったか?」

「お前が見えないところで動いていることもあるって事だ」

 別に約束とか、そういうことをしていたわけじゃない。

 まあ、たぶんそうだろうな。という予測に過ぎない。だが、まさかここまで上手くいくとは。

「ということは零とは敵同士ということか」

「んまあ、そうなるな。お前と真正面からぶつかるのはこれが始めてか?」

「ああ、そうだな。お互いに全力を尽くそう」

「ん」

 俺は短くそう答え、汗衫は離れていった。

 さて、舞原はあと一人の人材として誰を選ぶのか。

 少し楽しみだな。


 時は過ぎ、放課後。

 俺は舞原に連れられ、図書室に足を運んでいたのだが、

「誰だ、この性格が悪そうな清楚系女子は」

「誰よ、この弱々しい体躯の落ちこぼれは」

「それは俺を知らないとは言わない」

 こいつ、俺のことを落ちこぼれと呼んでいる限り、知らないはずないだろ。俺は結構この学校じゃ有名な方だぞ?勿論、汚名の方で。

 舞原がチームに入れたのはミサ・ミステリナという女子。

 こやつの能力は「防御魔法を無限に展開出来る程度の能力」。

 その名の通り、防御に関して言えば、右に出る者はいない彼女だが、攻撃面に関してはからっきしダメなAクラスの生徒。そして、性格に難あり。

「信じられない。千歳さんがチームに入れたい後輩なんて、きっとめちゃめちゃ強いんだと思ってたんだけど、まさか落ちこぼれとは……」

「そりゃどうも」

「何、私たちはハンデを背負って戦わなくちゃいけないわけ?ホント、信じられない」

「信じられないなら信じなくていい。ずっと現実逃避してろ。俺と舞原は作戦を練るから」

「はあ?あんたなんかに作戦が練れるわけないでしょ。何のとりえもない落ちこぼれなんだかさ」

「なんとでも言え」

 はあ、とわざとらしくため息をつき、さらに愚痴をこぼす。

「舞原もおかしいよね。なんでこんなやつを引き入れたのか、私には理解不能」

「いずれ分かるよ」

 舞原は端的にそう言った。

 当の俺はというと、

「今までの全ての悪口を俺の寛大な心で許してやるから、静かにしろ」

 俺は嘆息しながら、舞原へと視線を向ける。

「じゃあ、今回の基本的な戦略はミサが盾をして、俺たちが叩くってことでいいのか?」

「そうね、基本的にはね」

「はあ?冗談じゃない」

 すると、突然ミサが立ち上がった。

「何で私がこいつの盾をしなきゃなんないのよ!自分より実力が下のやつに守るほど、私はお人好しじゃない」

「そうか、だったら、」

 俺はミサを睨みつけながら、

「実力が上ならいいってことか」

「そうね。でも、そんなことは天変地異が起きてもそんな事はない」

「言質はとったぞ」

 瞬間、俺はマグナムの銃口をミサに向けた。

「何?おっぱじめようっていうの?残念だけど、あなたの攻撃は一生私には通じない。つまり、あなたは私に勝つことはない」

「そうか。じゃあ、少し場所を変えようか」

「ええ。そうね。ここであなたの醜態をさらすわけにはいかないからね」

「そのままお返ししよう」

 舞原はそんな俺とのやり取りに、やれやれと肩を竦める。

「貴方も随分とけんか腰になったものね」

「安心しろ。こいつにだけだ」

 最強の盾。

 対し、俺は最強の矛、というわけではない。

 だが、俺は……、


負ける気はしない……。


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