落ちこぼれと敗者
「ちっ」
俺と舞原は堀藤の不可視の攻撃に苦戦を強いられていた。
何しろ不可視なのだ。
どこにどのくらいの範囲でどのような速度で来るのかもわからない。
一見、詰んでいるようにも見えるが、突破口がないわけじゃない。俺ではなく、あいつが戦えばいいのだが、ここには舞原がいる。迂闊には出せない。となると、俺一人で何とかする必要がある。
「舞原…、大丈夫か?」
俺は、明らかに疲弊した舞原に問い掛ける。
「大丈夫、と言いたいところだけど、正直厳しいわね。体力も相当削られているし、能力がどこまでもつか…」
この状況。舞原が動けなくなれば、勝負は堀藤に傾く。
それを堀藤自身も分かっての立ち回りだろう。
だが、この場合、舞原が倒れた時点で俺が勝つ。そう断言できる。
何故なら、俺には#あいつ__・__#がいるのだから。
「舞原千歳もここで万事休すか。この学校のAクラスの中心人物がここで俺に首を垂れる姿が目に浮かんでくるぜ」
「…まだ…、終わって、ない」
舞原は最後の力を振り絞って立ち上がる。が、すかさず不可視の攻撃が舞原を襲った。
「う……、ぐ…、」
その諦めの悪さは褒めてやる。だが、時には実力差というものを知るべきだ。事実、この勝負で俺はお前に勝った。覆せない事実だ。どうだ、敗北の味は?」
「そうね、二度と味わいたくないくらいにはまずくて、苦々しいわね」
地面に這いつくばりながらそう言う舞原。
流石にそろそろ俺も参戦とさせていただこう。
「堀藤、次は俺だ」
「賢いな、お前」
そう言って、堀藤は俺を鋭く見据える。
「舞原との戦いで体力が万全じゃなくなった俺と戦うことで少しでも勝機を上げる。作戦としては悪くないが、俺の場合、能力的に体力はそう使うものじゃない。故に、お前には勝機はゼロなんだよ。無能力者。いや、落ちこぼれ」
「俺の名前が椿零だから、勝機は#ゼロ__・__#か。面白いシャレだ。にしても、『落ちこぼれ』ね~。俺にぴったりだな」
「だろう?気に入ったか?」
「ああ、気に入ったよ。お礼にお前にも肩書をプレゼントしてやるよ」
「ほう?それは何だい?」
俺は腰のあたりに手を置いてから、言い放った。
「敗者だ」
次の瞬間、胃に響くような銃声と、堀藤の絶叫が辺りに響き渡る。
「ぐあああああああああ!!!!」
俺のぶっ放した鉛玉は見事、堀藤の肩のあたりに着弾し、赤黒い液体が飛び散る。
「……椿、…零…!!」
「貴方…!」
二人の驚愕する声が聞こえたが、俺はそれらを全て無視し、堀藤に再び銃口を向ける。
「すまんな。俺は無能力者なもんでね、結局科学の力に頼るしかないんだ」
「ふざ、けるなよ…!俺をこの地に着けるとは、許されたことじゃない!」
「別に許しを求めているわけじゃない。それに、お前はいつから王子様になったんだ?ちなみに言うと、お前の能力にも見当はついている。お前の能力は『風を操る程度の能力』だろ?」
その言葉に、堀藤は目を見開く。
そうだ。この能力なら、すべての芸当は可能となる。
横方向の綺麗な切り傷は、突風による『かまいたち』のような現象。
体が浮き上がったのは上昇気流。
また、このことから、風を生み出すことも可能だということも分かった。
「どうだ?落ちこぼれに負ける気持ちは。きっと一生味わうことのない感情だ。しっかりと味わっておくんだな」
俺のような存在は細かい目で見てもイレギュラーな存在だ。
無能力者で、能力者と渡り合える。
そんな無能力者はいたとしても極稀だろう。
「あと、今回のお前の敗因を教えてやろう。お前の敗因は…、」
俺は一拍をおいて、
「自分の能力に過信し過ぎたことだ」
堀藤の能力は部類では強い方に入るだろう。何と言っても不可視の攻撃は回避は不可能に近い。
だが、堀藤は自らの能力に自信を持ちすぎたために、自身の身体能力面を考慮していなかったのだ。
そして、一番の理由は、俺の拳銃だろう。
こんなご時世だと、拳銃よりも能力に警戒をする。よって、相手が拳銃を持っているという思考には至らないのだ。あと、手に入れにくいというのもあるかもしれない。
取り敢えず、俺は堀藤が動けなくなったのを確認したのち、舞原の元へ歩み寄る。
「大丈夫か?」
そう言って、俺は右手を差し出した。
「貴方、本当に何者なの?」
そう言いながら、俺の手を取ってくる舞原に対し、俺は舞原を引っ張りながら、答えた。
「強いて言うなら、ミステリアスで無能力者の悪魔かな」
結果、この戦いは頭首の敗北によってA・Fクラス側の勝利で幕を下ろした。
宣戦布告をし、敗北したBクラスは極稀に見る一斉退学。その他、協力したC・D・Eクラスは一つ降格の処分を受けた。
敗者に興味はない。というこの学校の理念にも改めて、実感させられた。
俺たちFクラスは空いたBクラスへの史上最高のクラス昇格を達成した。
つまり、現在はCクラスが不在という又もやこの学校歴史史上初の状態となった。
そして、世界の変動は止まることを知らなかった。




