見誤り
「邪魔くせ~」
俺はナイフを巧みに操り、度々来る光線をよけながら、来る敵をさばいていく。
舞原はというと、まあ、言わないでもわかるだろう。流れ作業を行うベルトコンベヤーのように敵を倒していく。見るからにオーバーキルのような気がしなくもないが、俺は舞原と戦った生徒たちにご愁傷様、と心中で呟きながら目の前にいる敵を倒していく。
「一通り倒し終わったか?」
「恐らくは、ね。だけど、上に行けばまだまだいると思うわよ。用心はまだ必要のようね」
「ああ、だが、いちいち相手してたら日が暮れちまうぞ?キリがない。ちゃっちゃと登っちまいたい気持ちは分かるが、ここは慎重に…、」
と、俺が言い終わる前に、舞原は階段を駆け上がっていく。こいつ、人の話を聞けないのか。
「おい、人の話を聞け。慎重にって言ったろ。そんな音だしたら、またうじゃうじゃわいてくるぞ」
「だったら、追い付かないくらい速くいけばいいじゃない。ほら、突っ立ってる場合じゃないわよ。歩兵がきちゃう」
もしかしなくとも、お前…、
「お前、脳も筋肉でできていないか?」
「は?」
「いや、何でもない。まあ、お手柔らかに頼むよ。無能力者なんだから」
「私は貴方を#ただの__・__#無能力者だと思っていないから心配ないわよ」
「余計に心配だ」
そう言いながら、俺も階段を駆け上がるのだった。
「はあはあはあ。ソフトな対応はないのか。無能力者だって言ったろ。ちゃんとただの無能力者なんだ。ちゃんと配慮してくれないか?」
「何で私が自分よりも下のやつに合わせなきゃいけないのよ」
ド正論である。クッソ。だから単独で動きたかったのに。
「はいはい。いつまで息を整えてるの?それじゃ、ここまで駆け上がってきた意味がないわよ。
「わあってるよ」
そう適当に返事をしながら深呼吸をする。まだボスともご対面してないんだぞ。何でこんな疲れるんだ?
そんな疑問の答えも出る前に、俺達はBクラスの教室へと急いだ。
「ここまで来ていないって、冗談じゃない」
Bクラスの教室はもぬけの殻だった。先程まで人がいた気配もない。まるで、今日は人が一回も踏み入れていないようだ。
「危機を感じて、逃げ出したのかと思ったけど、流石にそれはないわよね」
「ああ、流石にな。自ら宣戦布告して、結果、危機を感じたから逃げる。なんて考えにくい。しかも、逃げたとしても、外はA、Fクラスの連中が周りを囲んでいる。学校から逃げてもそいつらが何とかするだろう。だったら、考えられることは一つ」
「まだ、学校内に潜んでいる」
「そうだ。そして、あいつのことだ。何処かに隠れるなんてことはしないだろう。かつ、周りが見れて、指示を出せるような場所」
「屋上ね」
そう結論付け、俺達は屋上へと踏み入れる。予想通り、そこには、
「予想より早い到着だね。僕の用意した歩兵は何していたのかな?」
「さあ?どっかでサボってるんじゃねえの?」
「ふ~ん。まあいいけど」
と、さも興味なさそうにしながら、堀藤は立ち上がる。
「で、ここに来たっていうことは、そういうことだよね」
「もう少し、語彙を増やして、ハッキリと言った方が良好なコミュニケーションが取れると思うぞ」
「それについては同感ね」
「厳しいな~。そう言ってるけど、分かってるでしょ?何を言っているのか」
「さあ、どうだろう?」
「なら、確かめることにしよう」
瞬間、堀藤が手を横に薙いだ。
「下がって!」
舞原は俺を後ろ引っ張り、俺の前に立つ。いきなり引っ張られた俺はバランスを崩し、情けなく倒れる。次に立ち上がろうとした時、地面についた手の甲に、赤い液体が垂れてきた。そう、血だ。そしてその血の持ち主は、舞原千歳だった。腹部に出来た横方向の切り傷を押さえてながら、臨戦態勢に入っている。よく見ると、足にも複数の横方向の切り傷が刻まれていた。まるで、紙で皮膚を切ったような綺麗な切り傷だった。
「おい、これって…、」
「いつまで、レディの足を嘗め回すように見ているのかしら」
「取り敢えず、そのような目で見ていないということだけ訂正させておく。ってそれどころじゃない。お前、その傷…、」
「心配はないわよ。ただ、これを何度も受ければ死にかねない。早急に対処法を探さないと…」
「話し合いしてるところ悪いけど、僕はそんなに優しくないからね。遠慮なく、攻撃させてもらうよ」
すると、堀藤は先程と同じように腕を横に薙ぐ。
瞬間、俺の腹部にも強烈な痛みが走る。すると、舞原と同じような横方向の切り傷が刻まれている。一体何が起きたんだ?見たところ、堀藤は腕を横に薙いだだけ。他には怪しい動きはない。何か形のあるものならよけることは可能だが、そんな形も残像も確認できない。そこから考えるに、やつの放つ攻撃は不可視の攻撃。つまり、よけるのは不可能に近い。だったら、だったらどうすれば……、と、考えを巡らしていると、
「まあ、切り刻むのもいいが、それだけだと面白くない。もう少し痛めつけてあげよう」
どうやら、こいつはSっ気があるようだ。と、どうでもいい軽口を心中で呟いた瞬間、
「んなっ……!」
いきなり、俺と舞原の体が浮き上がり、かなりの高さまで到達した時、感じていた浮遊感が突如として感覚がなくなったと思った直後、重力に従いながら落ちていき、
「がはっ……!」
勢いよく屋上の地面に叩き付けられる。腹から落ちたため、傷がさらに痛みを発した。
なんだ。何が起きている。状況がいまいち分からない。奴の能力がまだ分からない。
「おいおい、もう終わりかい?新作のゲームの方が暇つぶしになるよ」
高らかに笑いながら、そう話す堀藤。
ハハハ。
乾いた笑みが漏れる。
どうやら俺は、この男、堀藤雅を甘く見ていたのかもしれないな。




