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【なろうラジオ大賞3】参加作品

結城先輩の助手

作者: 鷹野 進


 院生の結城(ゆうき)先輩は変人だ。


 黒髪をボブカットにして、外見はカワイイ系女子なのに、いつも白衣を着ている。足元はサンダル。


「寒くないんですか?」

「厚手の綿100%だ。温かいぞ」

「それ、洗濯したら、乾きづらいんですよね」

「洗濯したらな。ふふ」

 

 洗えよ。



 結城先輩は変人だ。


 研究室のガスバーナーと500mlビーカーで、ミネストローネスープを作る。


「ほら、農学部産のシシリアンルージュだぞ」

「どこのご令嬢ですか」

「トマトの品種だ。そんなことも知らんのか」


 トマトに詳しい結城先輩が謎だ。あんた専攻は、ハーブの香気成分分析じゃなかったのか。


 

 結城先輩は変人だ。


 器具乾燥器(オーブン)でバナナチップスを作る。

 甘ったるいバナナの匂いが、無機質な実験室に漂う。


「微生物研から苦情がきますよ!」

「餅ならいいのか?」

 

 実験机の下から、古風な壺を取り出した。


「10年物の醤油」

(かも)しすぎです」

「5年物の梅酒もある」


 ごとり、と実験机の上に置いたのは、赤い蓋の瓶。琥珀色の液体に、シワシワになった梅が浮いている。


「街路樹産ですか?」

「いや。駐輪場の梅。毎年漬けている」


 毎年漬けている?



 結城先輩は変人だ。


 ゼミの飲み会の時に、30mlアンプル瓶でテキーラを飲む。


「ちゃんと煮沸消毒したぞ?」


 気にするところは、そこじゃない。



 結城先輩は変人だ。


「助手。おい、助手」

「助手って呼ばないでください」

「お前は、手塚宗助だろう。省略して、助手」

「勝手に人の名前を省略しないでくれませんかね」


 結城先輩が笑った。

 とびきりの笑顔。


「先輩の言うことは?」

「……絶対です」

「そうだ。研究室から生きて卒業したくば、大人しく従うが良い」


 結城先輩は変人だった。



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― 新着の感想 ―
[一言] この物語が成立しているということは、実験器具で飲食していた私は学生時代にまわりから変人だと思われていたことになってしまいますが…(汗
[良い点] 結城先輩、面白い方ですね~。 実際いたら、一度はお話ししてみたい方ですね~(´▽`) おもしろかったです! 読ませて下さりありがとうございました☆彡
2021/12/02 16:58 退会済み
管理
[一言] 面白かったです。 身近にいると楽しそうな人ですね♡
2021/12/02 12:11 退会済み
管理
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