真夜中の踏切
最近周りでホラー系をよく見かけるようになったので、便乗して書いてみました。
ホラーな雰囲気出てたらいいな~
某24時間営業の飲食店でアルバイトしていた頃のお話です。
夜帯(たしか17時頃~22時)シフトでの仕事を終えて、深夜帯の人に引き継いで帰ろうかと思っていると、1人遅れてくるからと言われて、延長でヘルプに入った日がありました。
深夜帯は給料も多くなるから、と気軽にOK。
そのまま、4時間弱程仕込みなんかを手伝った所で、遅れていた方が到着。
簡単に引き継いで、さっと着替えてから自転車で15分くらいの帰路に。
秋も深まり、少し肌寒くなってきた時期。
真っ暗の中にポツポツとある街灯の下をのんびりと走る。
途中、いつも通る踏み切りに差し掛かった時のこと。
小さく聴こえてきたのは、踏切の音。
それ自体は別におかしくはない。
終電が23時で終わっているはず、と言う事を除けば、だけど。
不思議に思いながらも、止まる事無く踏切に近付いていく。
カンカンカン
徐々に大きくなってくる踏切の警報音。
ぼんやりと光って見える踏切は、真っ赤なランプを点滅させながら電車の接近を知らせている。
それなのに、遮断機が降りていなかった。
首を捻りながらも、踏切の手前で念のためブレーキをかけるけど、数秒待ってみても、一向に遮断機は動かない。
電車、来てるんだよね?
そう思い、電車が来るであろう方を覗き込もうとした所で。
にゃ~
いつの間にか足元に来ていたらしい黒猫が、警報鳴らす踏切の方へと、トテトテと歩いていく。
本当に電車が来ていたら危ないと思い、自転車を降りて近寄ったけど、伸ばした手をすり抜けるように、黒猫がひょいと線路に飛び込んで。
次の瞬間
ライトの様な強い光が迫って来たのが見えて、咄嗟に身を引く。
そして、黒猫が轢かれてしまうと思ってギュッと目を閉じた。
しかし、いつまで待っても、ぶつかる様な音が聞こえてこず、恐る恐る目を開くと。
青白く輝く列車が、猛スピードで目の前を横切っていた。
真夜中なのに、車内には結構乗客の姿も見える。
ガタンガタンと音を立てながら走る列車自体が、ぼんやり青白い光を発しているせいか、乗客もなんだかみんな青白く見えてしまう。
そんな光景が数十秒。
今考えると、一体何両編成なんだと思わなくもないけど、そんな不思議な光景も、終わりの時は唐突に訪れた。
最後の1両が目の前を通りすぎた途端。
全ての音が消えたように、一瞬で静かになったのだ。
列車が通っている間は明るく感じた周囲も、切れかけの街灯にチカチカと照らされるだけの暗闇に逆戻り。
さっきまで、あれだけうるさく危険を知らせていた踏切も、今はシーンと静まり、上がった遮断機を夜風に揺らしているのみだった。
ワケが分からず、急に怖くなってきた私は、急いで自転車に跨がると、踏切が鳴っていないことを再確認して一気に線路を渡りきり、そのままスピードを上げて家を目指した。
風に乗って耳に届いた、微かな鳴き声から、逃げるように……
あの時の黒猫は、助けてくれようとしたのか。
それとも連れていこうとしたのか。
みなさんは、どっちだと、思いますか?