坂の上の家
掲載日:2021/10/17
タタントトン。
カンカンカンカン。
ザワザワザワ。
ニギニギニギ。
ピヨピヨピヨ。
テクテクテク。
ただいま。
僕は割と線路に近い場所で育った。
そのためなのか、線路の近くは落ち着く。
何だか懐かしい気持ちになる。
引っ越しした後にいつも気付く。
窓からは線路が見える。
電車が通る音が聞こえる。
少し歩くと、小さな商店街がある。
ああ。そうか。
やっぱりそうだったんだ。
電車の音。
踏切の音。
駅の構内。
商店街。
横断歩道。
長い坂道。
ただいま。
おかえり。
玄関を開けると、記憶はいつもおでんの匂い。
子供の頃、おでんは苦手だった。
でも、今は一番好きな料理。
おでんと日本酒が最高に合う。
電車の音を聞きながら、静かに杯を重ねる。
子供の頃の記憶が、鍋の湯気のように立ち上る。
僕の記憶は、いつも夕方。
いつも玄関の前に立っている。
そして、扉を開けたその先には、懐かしい光景が広がっている。




