#4:残された宿題
夏休みも残すところあと3日になった。
多くの人が残った宿題に苦戦を強いられている頃だと思う。僕の方はというと基本的に夏休み始まって10日以内に終わらせるので問題なかったりする。
しかし、僕の幼馴染は前者の方であり、毎年僕が手伝わされるのが恒例となっている。
「ねぇ晴登、この問題どう解くの?」
楓が何かを頼む時の少し甘ったるい様な声が僕の耳に届く。答えを教えてあげてもいいけど、それでは楓の為にならないので僕は心を鬼にする。
「自分で考えなきゃ。休み明けのテストで似たような問題も出ると思うしさ。少しくらいならヒント出すから頑張って」
「うぅ・・・、分かった」
返事をした楓は問題にもう1度目を向けてあれこれ考え始めたようだ。しかし一向に手が進まないところを見るとお手上げのように見える。楓の大の苦手な数学だから仕方ないかもしれないけど。
しょうがない、助け船を出してあげようかな。
「ここはさ、計算しやすいように代入を使えばいいんだよ。そうしたら文字が1つ消えてすっきりするでしょ」
「そっか。代入か、ありがとね晴登」
お礼を言うと楓は僕のヒントで何かを掴んだのかすぐに答えを導き出した。次の問題も似たような形式の問題であり簡単に答えを出した。ちらっと僕が確認したところ、正解だったので楓は基本的に何でも出来るんだという事を改めて実感した。
「へぇ、当たってるじゃん」
「本当?晴登の教え方が分かり易かったからだよ」
楓は笑顔でそう言ってくれるけど僕はちょっとヒントを出しただけ。特に役に立っていないような気もするけどそう言ってくれるんだし素直に喜んでおこう。
「晴登はさ、私なんかと違って頼りになるよね」
「そう?僕から言わせれば楓の方が頼りになるけどな」
「本当?」
「うん。そもそも僕が何の役に立ってるのかまったく見当がつかないんだ」
「色々だよ。晴登は優しいから」
「そう言ってもらえると嬉しいけど。いきなりどうしたの?」
「なんとなく言いたかっただけ。ありがとね、晴登」
「うん」
「じゃあ、さっそくだけどここ教えてくれない?」
ガラッと雰囲気を変えたかと思うとさっきとは違った種類の問題を指差して楓はそう言った。ちょっと雰囲気にのまれかけて簡単に答えを教えてしまいそうになったけど僕は再び心を鬼にした。
「晴登のケチ」
僕はケチじゃない。
多分・・・。
作者の月飼いです。
夏休みの終わりといえばある意味これですよね。
毎年、悩まされたものです。
歳を重ねるごとにやらなくなりましたが・・・。
それと、感想ありがとうございます。
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