皮肉売ってます ジャンル【コメディー】
ひき肉を買いにきた男。しかし、売っていたのは別なもので……
※全文会話文注意
文字数約600文字
「あのひき肉百グラムください」
「すいません。うちひき肉は売ってないんです」
「えっ、いやさっきひき肉売ってますって言ってましたよね」
「いえ、お客さん。聞き間違えです。うちが売ってるのは皮肉です」
「皮肉?」
「はい、皮肉です」
「皮肉って毛皮の皮にお肉の肉って書く皮肉ですか?」
「はい、そうです」
「それ売り物じゃないですよね」
「いえ、売り物です」
「いやいやいやいや、皮肉ってなんだよ」
「皮肉というのは広辞苑第七版によると~」
「言葉の意味を聞いてるんじゃない。ばかばかしい、帰る」
「お客さん、他にもありますので」
「他にもある? それはちゃんとした商品なんだろうな?」
「はい。こちらのメニューをご覧ください」
「どれどれ、喧嘩、夢、媚ってどれもこれも実体ないだろ」
「いえ、全部売り物です」
「いい加減にしろ」
「お客さん待ってください。待ってくださ~い。今なら半額、半額にしますから」
「そういう問題じゃねぇ」
「ではではうちで一番高い商品を特別にお見せいたします」
「次にろくなもん言ったら承知しないからな」
「はい、メニュー表の裏側をご覧ください」
「裏メニュー、油……てめぇ、さっきからいい加減ばっかりいいあがってこのペテン師が」
「私に暴力を振るおうとするのはお止めください」
「元といえばお前が皮肉売ってますとかいうからだろうが」
「ひぃ~ごめんなさい。お詫びに売り物一つあげますからご勘弁を」
「この店にろくなものねぇだろ。もうキレた。一発殴らせろ」
「ここに二百グラム三万円のサラダ油が……」
「……それはあんのかよ」