6・殲滅開始
「ハンヴィー隊、射撃開始しました」
「よしっ! 全員降車!!」
車が停止し、射撃を開始したと同時に俺は指示を下した。
車体上部に取り付けられながら火を吹いているのは、毎秒75発というチートな連射速度を持った『ミニガン』というガトリング銃。
車の中にいては、熱々の空薬莢が大量に降ってくるのでたまったものではないのだ。
「さて、随分とたくさんいるな」
ハンヴィーを降りた俺は、すかさず木の裏へ移動してアサルトライフル(Mk18Mod1)を構えた。
そして、セミオートでリズミカルに3発撃つ。
「ぎゃっ!?」
魔法の杖らしきものを持っていた男は、首と額に5.56ミリ弾をくらって倒れた。
さすがにこちらは特殊部隊、展開は迅速の一言で各々がカバーし合いながら盗賊軍団へ射撃を開始した。
「なにが森なら有利だ! アイツら化物じゃ......ぐはっ!?」
「魔導士部隊! 早く、早くアイツらをなんとかしろぉ!!!」
よし、いい具合に奇襲できたようだ。
ホロサイト越しに見える敵は戦闘においてかなり拙かった。
「こっちも仕事なんでね、怨むならリーダーを恨むんだな」
サプレッサーで抑制された銃声がさらに6回。
俺は遮蔽物からほんの少し顔を出した敵3人を仕留めるのに、3秒と掛からなかった。
「逃がすな! 第1分隊から交互に前進、ミニガンは射撃を継続せよ!」
指示を出す。
俺とエミリアたちが前進し、さらに敵との距離を詰めた。
その間も、ガトリングの繋がった銃声がカバーしてくれる。
秒間75発はダテではなく、もはや太い木ごと相手を薙ぎ払っていた。
「このままじゃ全滅だ! 頼むオルンゲ、アイツらの魔導具を黙らせてやれ!!」
「あぁ......了解した」
俺が再び射撃していると、木の裏から男が出てきた。
あれは弓か? あんな大きいのは初めて見たな。強キャラか?
「射抜けっ......!!『蛇王の一閃!!』」
放たれた弓矢は俺に一直線で飛んできたので......。
「よっ」
首を軽く動かして避ける。
拳銃弾の速度に比べれば、大したものではない。
――――ガィンッ――――!!
狙いを外した矢は、たまたま移動中で俺の真後ろにいたハンヴィーにぶつかった。
7.62ミリクラスの弾すら弾く設計なので、当然傷くらいしかつかない。
「なんか......、連中の切り札っぽかったんやけど今の弓」
「たかが弓ごときにハンヴィーの防弾板が割られてたまるか、エミリア」
「なんでしょう?」
「カバーしろ、少し突っ込んでくる」
エミリアがいたずらっ子のような笑みを見せる。
「相手と至近距離でお話でもしてくるんですか? 陰キャで有名な中隊長が?」
「バカ言え、極上の恐怖をデリバリーしてくるだけだ。あと陰キャ言うな」
「はーい、でもわたしはそんなハルバード少佐のこと好きですよ?」
「言ってろ」
ニッコリと笑ったエミリアが、ハンドガード下部に取り付けたグレネードランチャーを放つ。
俺はスリングでライフルを背に回すと、車内からスコップ――――我が軍の用語で言うと"エンピ"を取り出した。
「こちらエミリア! 中隊長が前に出るっ! 援護は最低限でいいとのこと!」
ミニガンの射撃を背に、俺は地を蹴った。
スコップとは、昔あったという塹壕戦において機関銃と並んで敵を殺傷した凶悪な近接武器だ。
「ヒッ!?」
「ごきげんよう盗賊諸君っ、そしてさようなら!」
最低限の会話しかしたくない俺は、木から顔を出した男を首チョンパした。
倫理的にアウトだって? そんなことを気にして特殊部隊などやっていられませんよ。
すぐさま標的を変更――――俺は魔法陣を展開する男と目を合わせた。
「くっ、来るなああぁぁああッ!!!」
氷結魔法とでも言うべきか、氷のつぶてが無数に向かってきた。
「ハッハッハッハッッ!!!」
全て丁寧に弾き返す。
キラキラとした氷のつぶが、周囲に四散した。
「ふざけんな......なにが白の英雄だ!! とんだ化物じゃねえかっ!!」
「言いたいことはそれだけかい?」
「待てっ......! 話せばわかる! 村で幼女を犯したのだって軽いノリだったんだ! 周りの空気のせいであって俺のせいじゃ――――――」
「俺に詫びられても困る、あの世で少女に懺悔してくれ」
スコップを振り下ろし、クソ野郎を絶命させる。
「よくもターナーを!!」
勇敢なお仲間たちが剣を持って突っ込んできた。
俺が近接武器を出してきたので、勝算があると踏んだのだろう。
俺はスコップを左手に持ち替え......笑った。
「掛かったな盗賊っ、誰が全員エンピで相手してやると言った!?」
「なっ!?」
すぐさま腰のホルスターからハンドガン(SFP9)を抜き、片手で連射した。
敵は急いで遮蔽物に隠れようとするが、そんな隙は与えない。
「ぎゃあっ!」
「がっ......!?」
「ぐはっ!?」
2人をヘッドショット。
1人の持っていた武器を撃ち抜いた。
「動かない方がいい、銃の強さは十分わかっただろう?」
周囲を10人の兵士で囲む。
最後に残った1人は、絶望したような表情で両手を上げた。
「エミリア、そいつを縛ってハンヴィーに詰め込め。基地に連れ帰って情報を引き出す」
「りょうかいです」
「ミニガンと重機関銃は周辺警戒、他の者は死んだフリをしているヤツがいないか探せ」
周囲に散らばる死体の確認を行っていると、部下が駆け寄ってきた。
「ハルバード少佐、第3分隊より連絡です。敵の生き残り数名が森を抜けて逃走中らしいです。あとは少佐の指示1つで終わります」
「よし、計画通りだ。スカッドに容赦はいらないと伝えてくれ」
「了解!」
死体の中にあの弓男がいない、っとなると逃げたのはそいつか。
まぁ......東洋の将棋で例えれば、もう彼らは"詰み"だがね。