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3・錬金術師の錬成

 

 ここは地下に造られたコンクリート製の射撃場で、みんなが銃の調整などを行う。


「そういえば少佐、【クラフト】ってどうやるんですか?」

「なんだまだ知らなかったのか?」

「はい、なので教えてください」


 俺はまずエミリアの"アサルトライフル"に付いてたサイトを見てみた。

 なるほど、射撃の反動に耐えられなくてレンズが割れたか......。


 使えんこともないが新調すべきだろう。

 俺は今日集めてきたクリスタルを広げる。


「【クラフト】!!」


 魔法陣が浮かび、クラフト画面が出てきた。

 燃料やミサイルと色々あるが、俺はその中から"光学照準器ダットサイト"を選択した


 ――――――――――◆


 イグニス・ハルバード レベル31。

 職業『白錬金術師』。


 選択欄......


【オープンドットサイト】(×3消費)


【ホログラフィックサイト】(×5消費)


【4倍+1倍ハイブリッドサイト】(×4消費)


 ――――――――――◆


「よっと!」


 今回選ぶのは"ホログラフィックサイト"。

 照準器の中では最も高コストだ。


 まぁ今回の無断外出で100個くらい手に入れたので、そこまで痛い出費ではない。

 指先でリストをタッチすると、たちまち"ホロサイト"が錬成された。


 いつ見ても奇妙な光景だ......。


「わっ! ホントに新品の照準器ができた!」

「原理はわからんがこっちで言う魔力とやらを使うんだろう、言うならば【クラフト】は魔法だ――――いや、もうここまでくると"錬金術"か」

「すっごー! これでキッチリ狙えますよ〜!」


 満足そうに構えるエミリア。

 さっそくマガジンを銃に差し込む。


「【クラフト】はまだわからんことも多いが、アルナクリスタルを起点に発動する魔法だ。これは今のところ俺しか使えん」


 アサルトライフルの銃声が響く。

 的を少し外れたので、素早くマイナスドライバーで調整を行う。


「へぇ〜、よくこんなの見つけましたね」

「ライトノベルが流行ってただろう? あれが好きで真似をしてたら偶然発見しただけだ」


 せっかくつまらん現代を追放されてファンタジーな異世界に転移したんだ、試さない道理などないだろう。

 ラノベを読み漁っていて良かったと心から実感する。


 再び発砲。

 今度は3発が50メートル離れた的のド真ん中へ命中した。


「さっすが少佐、わたしはラノベとかあんまわかんないですわ〜」


 全弾撃ち尽くし、銃のボルトが後方へ下がり切る。

 とりあえず必要なことは終わっただろうと思っていると、不意に後ろから声が掛けられた。


「さすがは自称陽キャのイキリ女、現代の娯楽であったライトノベルもわからないとか、日の本のハーフが聞いて呆れるよ」

「はっ?」


 エミリアの声と共に振り返ると、そこには1人の白い士官服を纏った男が立っていた。

 誰が見てもイケメンに部類するであろうそれは、黒髪でどこか陰鬱っぽい雰囲気を醸し出していた。


「常識知らずは罪だよ、今どきそういうノリは寒いんだからさ」

「ええ度胸しとうやん"スカッド"〜......っ!! 今すぐその女受けする顔をボロ雑巾にして滑走路拭いてもあげてもええんやぞ?」

「関西弁とやらが出てるけど? ったくこれだからグレネードオタクは......愛しの少佐が汚れるから即刻離れてくれない?」

「マークスマンっていうのはもやし陰キャがなるってよう分かるわぁ〜、アンタみたいな貧弱オタクに少佐は任せられんなぁ」


 あぁマズい。

 エミリアが関西弁になっている時は大抵マジの時だ。

 そんな彼女が噛み付いているのが、我が特戦第1中隊の副官を務める――――――


「スカッド、もう仕事は済んだのかい?」

「はい少佐、偵察隊の連中は全員無傷で帰しました」

「素晴らしい、ご苦労だった」

「あぁ光栄です少佐......! 少佐のためならこのスカッド・ガルドニクス大尉、異世界の果てだろうがついていきます」


 こんな調子だが、我が中隊の優秀な選抜射手マークスマン(かなり腕のいいヤツ)だ。

 ついでにオタク仲間である。


「さて、2人共喧嘩はそこまでにしてこれを見てもらいたい」


 俺はカバンから数枚の写真を取り出した。


「なんですかこれ?」

「先日、盗賊と魔物の連合群に襲われたらしい村を撮影した写真だ。ちなみにそこそこグロ注意な」


 っと言ってもこいつらはそういうの平気なので、オーバーなリアクションはしない。

 けれど内容を理解するとまぁドン引きだ。


「嘘......、子供まで惨殺されとるやん......!」


 子供が大好きなエミリアは目尻に涙を浮かべる。


「激しい性的暴行の後に拷問、虐殺したと言ったところでしょうか......。生きる価値のないクソ野郎がやったと断定します」

「そうだスカッド、そんな人間失格の連中とプラス魔物が、既にこの基地を目指して進行している」


 俺は傍に置いてあった9ミリ自動拳銃の弾を、1発だけスカッドに弾き飛ばす。


「ベルナール中将はなんと?」


 弾を受け取ったスカッドは、フムと見つめる。


「敷居を跨いだ瞬間――――全員撃滅せよ、だそうだ」

「なるほど」


 ホルスターからハンドガンを素早く抜いたスカッドは、スライドを引いた。

 慣れた手付きで薬室チャンバーへ直接放り込み、弾が装填される。


「お任せください――――少佐」


 ――――ダァンッ――――!!!


 発射された弾丸は、エミリアの付けた弾着跡を真ん中から綺麗にぶち抜いた。




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