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2・錬金術師は上司と部下にサンドイッチされる

 

「イグニス・ハルバード少佐......! "性格その他対人コミュニュケーションに問題あり"とは聞いていたが、随分と好き勝手やってくれるじゃないか......!」


 おー怖い怖い、基地へ戻った俺は早速この施設で一番偉いお方に呼び出された。

 目の前には、比較的若い男性軍人が額に血管を浮かべている。


「まぁまぁ......、そう怒らんでくださいガリル・ベルナール准将。ご覧の通り大量の"モンスター素材"が手に入りましたので」

「手に入りましたじゃないだろぉ!! 特殊作戦軍ドラゴニアの中隊長にそんな散歩気分で出かけられてはこっちの心臓がもたんのだ!!」

「失礼ながら、准将の心臓はタングステンでできていると部下から聞いておりますが」

「根も葉もない捏造だ! いいか! 我々がこの世界に転移して今日でもう2週間経つ! 未だ帰還する手段もないのになにを呑気な......!」


 2週間ねぇ......。

 だからこそより速やかに現地慣れしといた方が良いと思うんだが。


「偵察隊の連中を待ってたのでは初動に遅れが生じますよ、准将」

「まぁ貴官の言葉も理解はできる、確かにこの大陸の情勢は平穏とは呼べんからなぁ」


 輸送ヘリの音が響き渡った。


「よって、速やかに補給体制を確立すべきと考えます」


 この人はかなりのお偉いさんだけど、結構楽に話せるタイプなので助かる。


「少佐きみだったか? モンスターから取れる結晶で【弾丸】や【アタッチメント】、精製された【ガソリン】が造れることを見つけたのは」

「はい、なので近隣の魔族をより効率よく倒してアイテムを手に入れるべきです」


 MMORPGだってそうだ、狩場を見つけて効率よく序盤でアイテムを揃えたヤツが有利になる。


 このモンスターから取れる結晶は現地人いわく【アルナクリスタル】と呼ばれており、なんと我々の使う武器や弾、ガソリンに変換できるのだ。


 これにより、転移してしまった帝国軍は補給不足に喘がずに済んでいた。


「なるほど、ならばちょうどいいニュースがある」

「なんでしょう?」

「先刻この基地を襲撃しようとする魔物と盗賊の群れを偵察航空隊が発見した、【アルナクリスタル】調達のためにもぜひ返り討ちにしてほしい」

「了解いたしました」


 俺は敬礼すると、准将のいる部屋を出た。


「あっ、少佐やっと出てきた〜」


 すると、部屋の前で1人の少女が待っていた。

 つややかな茶髪をポニーテールにした、童顔の女性兵士。


 服装は俺と同じ白の士官服だが、若い女子用にズボンではなくプリーツスカートとなっている。


 待ち伏せされていたか。


「ん、エミリア・ナスタチウム中尉か。どうしたんだい?」


 俺が声を掛けると、彼女は歩み寄って不機嫌そうに顔を上げた。


「准将に影響されてお固くなってますよ少佐、第1中隊では名前呼びってこないだ決めたじゃないですかぁ」


 そうだった......! この子の熱に逆らえずつい流されてしまいこんな軍隊らしからぬルールを決めたんだった。


「あぁすまんね、つい癖が出てしまった。ところでどうしたんだエミリア?」

「聞いてくださいよ少佐〜!! わたしのアサルトライフルに付いてた"ホロサイト"がぶっ壊れたんですよ〜!!」


『アサルトライフル』とは、ウチの特殊部隊も使う世界の主力小銃で、フルオートとセミオート両方撃てる。

 要は、それに搭載していた照準器(相手をゲームのようなレティクルに入れて狙う物)がハズレ個体だったらしい。

 ご愁傷様である。


「わたしアイアンサイトじゃ全然狙えないんですよ! これから敵の襲撃があるのに自分だけハードコアモードです!」

「予備はないのかい......?」

「いきなり異世界に転移させられたんですよ? 装備は首都の基地にしかありませんでしたし」


 なるほど読めた、エミリアは俺がクリスタル集めに行っていたのを知っていて待ち伏せていた......。


「俺のクリスタルでホロサイトを【クラフト】して欲しい......と?」

「さっすが少佐! 理解が早い!!」


 今度アイアンサイトの訓練もキッチリさせよう。

 そう思考しながら、俺はエミリアを連れて演習場へ向かった。


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