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17・壁に耳あり

 

 アルストロメリアのコロシアム――――その地下で、男は部屋のトビラを開けた。


「やぁ、いい子にしていたかいアリシア?」


 入ってきた男は、20代後半を思わせる顔つきに全身をジャラジャラとした装飾品で覆っていた。

 ローブで隠された体には、無数の紋章が刻まれている。


「あっ! 兄さん!!」


 質素な部屋の中央から、椅子を倒して少女が駆け寄る。


「さっき、"全ての準備"が終わったところなんだアリシア」

「大会は!? コロシアムの受付はできたの!?」

「あぁ、お前の望んでたあの少女――――"フィオーレ"のエントリーも確認した。決勝まで行けば会えるだろう」


 紋章で満ちた顔を笑みで歪ませる男へ、アリシアは青色のサイドテールを揺らしながらまた笑顔で返す。


「嬉しい! 嬉しいわアーノルド! あの"紅髪あかがみ"とやっと戦えるのね! 素晴らしい邂逅となるに違いないわ、この祝福を尊ばなきゃ」


 アリシアの青色の髪から、光の粒子が漂う。


「わたしの対、わたしの姉妹、フィオーレ・アーカディアスに祝福を届けるの。それがわたしの使命なんでしょ?」

「あぁ、そうだよ」


 アーノルドは、興奮するアリシアを優しく包容した。


「コロシアム大会運営も既に買収して傀儡にしてある、政府と共謀し......この国の富を独占するマギラーナの一強を終わらせる偉大な革命だ」


 彼らこそ、フィオーレがテロリストと断定する集団――――『グローリア』だった。

 このアーノルドという男は、その革命的武装闘争組織の若頭である。


「問題は白の英雄だが......、まぁ計画に支障はない。トロフィーの位置も既に把握してある。順調......順調......! これまでになく順調!」


 両手を大きく広げ、アーノルドは天井を仰ぐ。


「全ての富を独占する忌まわしき資本主義の豚ギルドは、今日をもって滅ぶのだ。そして救う、抑圧された恵まれない子供たちを......だろうアリシア?」

「わたしは別に資本主義がどうとかはいい、とにかくフィオーレと戦えればそれで......それで!」


 膨大な魔力がアリシアから溢れた。


「心が踊る!!!」


 一連のくだりは、部屋にしっかりと防音魔法を張った上での会話。

 少なくとも通路に漏れるようなことは決してなかった。


「ふーん、なるほどなぁ」


 隣の空き室――――関係者以外立入禁止の部屋で、エミリア・ナスタチウム中尉は"聴診器"を用いて会話の全てを聞いていた。

 丸聞こえとまではいかずとも、内容の把握には十分だった。


「あいにく今は爆薬もSCAR−Lも手元にないし、とりあえずもうちょっと聴かせてもらおっと」




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