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1・追放された錬金術師

 

 この世界では魔法が全てだ。

 あらゆる戦闘階級は魔法によって変わる、いっちゃえば環境トップに居座っていた。


 しかし、俺はつい先日までその魔法なるものを知らなかった。

 カースト的に言えば最底辺である。


「よっと」


 繁殖期で凶暴だったモンスターの体へコンバットナイフを一突き。

 死骸を踏みつけながら、俺は敵の死亡を確認した。


 周囲にはこれと同じように無数のゴブリンが横たわっており、いずれも全て急所を切り裂かれている。

 死んだフリなどそもそもしようがないほどの致命傷を与えていた。


 血のついたナイフを素早くしまうと、俺は声を出す。


「もう大丈夫ですよ〜、出てきてください」


 そう俺が言うと、茂みがガサガサと大きく動く。


「いや〜助かりました! まさかこんなところで【白の英雄】に出会えるとは......!」


 茂みから出てきたのは、荷物を運搬中だった行商人のおじさん。

 その顔は恐怖から抜け出た表情をしている。

 若干コミュ障気質なので、ぶっちゃけ人とあまり喋りたくはないんだが......。


 頑張って口調を崩さないようにしよう。


「ま、まさかゴブリンの群れをそんなに短い得物で全滅させるとは......」

「これでも軍人ですので。おっと、素材を持って帰らないと」

「ゴブリンの素材をですか? あまり役に立たないと聞きますが......」


 資料によるとゴブリンは確かに低ランク素材だ、だが俺にとって欠かせない必需品を生み出してくれる。

 もう何体かは結晶化が進んでおり、順にその結晶を採取していく。


 たまーにレアドロップする素材もあるらしいが、今回はないようだ。まぁつまらない話だったしどうでもいいだろう。


「さて、ではそろそろ行きましょうか。この辺はまだモンスターがウロウロしているので」


 これ以上人間が来るとコミュ障が隠しきれずにドモりそうだ、さっさと撤退しよう。


「は、はい......しかしどこへ? この辺りに町なんて......」

「大丈夫です、ちょっと大きめの広場に心当たりがありますので」


 俺は道中、行商人のおじさんと歩きながら質問を受けた。


「【白の英雄】は異世界から来た未知の存在と噂されていますが、あなた――――いえ、イグニスさんって何者なんですか?」


 さっき教えた俺の名を呼んだおじさんへ、ニッコリと答える。


「弊社は中立ですよ、今後とも皆さんと友好関係を築いていきたいと思っています」

「それを聞いて安心しました......!【白の英雄】は山賊に襲われていた村も助けてくれていると聞く」

「スローライフのためです、そんな高尚な理由じゃありませんよ......ん、見えてきました」


 俺が指差した方向には、木々もない草原だけの広場があった。


「こ、こんなところで何を......!?」

「ご安心ください、すぐにわかります」


 俺は装備していた信号弾を空に向かって撃ち上げた。


「ひ、火属性魔法!?」

「似たようなもんです、あっ、俺の後ろに下がっててください」


 見れば、今の信号弾によって同胞を殺され怒り狂っている、とっても仲間思いなゴブリンたちがこちらに気づいていた。

 なんとも醜く恐ろしい、あれは俺たちを惨殺するまで気が済まないだろう。


「逃げましょうイグニスさん! あんな数はさすがにあなたといえど......」

「問題ありません、それよりも......姿勢を低くしておいてください」


 俺は1個だけ持っていた発煙筒をゴブリンの大群へ思い切り投げ飛ばした。

 黄色の煙がドッと広がり、ゴブリンたちは怯む。


 さて、これで今頃必死で俺を探している上空の連中も気がついただろう。

 案の定、騒々しい音がやって来た。


 ゴブリンたちは色付きの煙が毒でないと気づき、一斉にこちらへ爪と牙を指向した。


「も、もう終わりだぁッ!!!」


 行商人のおじさんが叫ぶと同時に、俺の耳へ通信が飛び込んだ。

 さぁ、仕事の時間だ。


『サンダーボルト1より特戦軍リーダー! やっと見つけたぞ』

「説教は後にしてくれ、黄色の煙幕に敵が迫っている」

『分かってるよ! 発射ッ!!』


 凄まじい炸裂音が響き渡った。

 数百発の30ミリガトリング砲弾が音速でゴブリン群へ叩き込まれたのだ。

 おじさんは、一緒に伏せている俺の後ろで呆然としていた。


 まっ、当然っちゃ当然の反応か......。


 ――――ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴォォンッ――――!!!!


 あまりにも激しい空爆を受け、ゴブリン群はまたたく間に敗走。

 上空をジェット攻撃機が通り過ぎ、煙の晴れる頃には大量の結晶が残されていた。


 空の仲間による機銃掃射が終わったのだ。

 俺は仕事モードでできるだけ噛まないよう通信を取る。


「ご苦労サンダーボルト1、上出来だ。この素材で色々アイテムを作れるよ――――輸送ヘリを降ろしてくれ」

『錬金術の素材集めが目的かよ! 俺たちまでちゃっかり利用しやがって』


 オタク仲間のパイロットがギャンギャン言ってきた。


「A−10攻撃機はこの世界じゃ最強の対地チートを誇ってるじゃないか、あとでビール奢ってやるからさ」

『うっせー戦闘バカ!』


 一通りの通信を終えて輸送ヘリの着陸を見ていると、行商人のおじさんが震えながら聞いてくる。


「あ、アンタは......あんた達は何者なんだ!?」


 俺は真っ白な士官服を正すと、着陸するヘリコプターを背に答えた。


「ただの不幸な錬金術師ですよ。故郷の世界を追放されてしまったこの世界の環境ブレイカー......とでも言いましょうか、今後とも【白の英雄】としてどうぞお見知りおきを」




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