アーティビュレフル
―――チチチ
微睡む意識の中、鳥の鳴く声が聞こえてきた。
いつもなら、けたたましい時計の音から一日が始まるのに……あぁ、今日はなんて良い日なんだろう。
もう一度眠りにつこうと、ふわふわの毛布を掛けなおした瞬間私の意識は覚醒した。
「しまった!目覚まし壊れてるんだった‼」
慌ててスマホの画面を確認してみると時刻は7時52分を指しており、HRが始まるまで残り38分。
私の家から学校までの時間は35分くらいだったから、え~と……走ってギリギリってところだ。
急いで制服に着替えバタバタと階段を下りて行き、そのまま玄関のドアノブに手をかけたが、大事なことを忘れていた。
私は家族がいる部屋へと向かい、手を合わせた。
「お父さん、お母さん、おはよう。高校生にもなって寝坊とか笑っちゃうよね。今日も一日、私のこと見守っててね……いってきます。」
よし、これで忘れ物はないはず。
玄関へと向かい、今度こそ私はドアを開いた―――――いや、ちょっと待て。
一本通行の道路だったはずの家の外が、なんかおしゃれな空間になってるんですけど。
これどういう事ですかね?
今の私の状況を説明すると「間違えてど〇でもドア開けちゃった!」みたいな感じだな、うん。
実際に見たことないけど。
そもそも、そんな状況ありえないけど。
……ふぅ、夢か。
回れ右をして家の中へと戻ろうとしたら、ドンっと肩を押されたような衝撃がはしった。
予想外の出来事だったため私は謎の空間の方へと出てしまっていた。
そう、ドアノブから手を放して
―――ガチャン
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
無情にも私の目の前でドアは閉まり、最初からドアなど無かったかのようにシュンと消えた。