とある家族の話
パタンと、物語を読み終えた女性は本を閉じた。
女性の足元にジッと座り物語を聞いていた少女は尋ねた。
「お母さん、女の子はどうなっちゃうの?」
母と呼ばれた女性は答えた。
「殺されてしまうのよ。街の人たちを助けるために自分を犠牲にして。」
少女はその答えに対し不満げに、
「村の人たちはぜんっぜん助かってないじゃん!女の子いなくなって、もう笑わなくなっちゃうんでしょ⁉そんなのハッピーエンドじゃない!物語に出てくるおばあさんだってひどいよ!元に戻せるなら殺さなくてもいいじゃん!」
少女は納得がいかないといった様子でバシバシと本を叩いた。
そんな少女に対して母は頭を抱え、ため息をついた。
「はぁ、何度言ったら分かるのかしら。物語の全てが幸せになるとは限らないのよ?自分の感情で読んではダメ。私たちはただ淡々と語り継ぐのが役目なの。かわいそうとか、ひどいとか、そんなことで物語を変えようとしたら、もっと悲惨な結末になってしまうわ。絶対に本の内容を誰かに教えようとするんじゃないわよ?分かったわね?」
「・・・」
「まったく。ほら、この本はあなたのなんだから。過去になって文字が消える前に記憶してしまいなさい。」
「・・・はぁい。」
少女はぶすっとしながらも本を受け取り、自分の部屋へと戻っていった。