電子レンジの仕組みがわからない
「ちょっと、質問。」
「はい、なんでしょう。」
「電子レンジの仕組みがわからない。」
「スイッチ入れたら、あったまりますね。」
「それは事象じゃないか。なぜ温まるのか、それを知りたい。」
「マイクロ波が震えることで、分子が振動を始めて摩擦熱が何とかだったような…?」
「マイクロ波って何なんだ!」
「目に見えない電磁波?ああ、水分を振動させるんだって、ここに書いてある!」
「なんでそんな目に見えないものが発見されたんだ!!」
「さあ、誰かが発見したんじゃないの。」
「明らかにおかしい!電子レンジは昔から電子レンジだ!」
「何言ってんの、ああ、軍事レーダーから発見されたらしいよ!」
「発見?これは発見されて作られた痕跡が薄すぎるんだ!」
「難しい言い方してるけど意味わかんないな。」
「発見されたというならばもっと試行錯誤した形跡があるはずなんだ!!」
「形いろいろ変わってるじゃん。」
「外見のことじゃない!!大きさとか!仕組みの形とか!!」
「まあ、普通に使えてるからいいじゃん。」
「何言ってるんだ!!不可思議なことはたくさん溢れているんだぞ?!」
「そりゃまあ、多少はあるんじゃないの。」
「麻酔の原理、飛行機の原理、水の沸騰と冷凍、宇宙の成り立ち、意識の在処、時空論に海底神殿!」
「なんだ、えらく偏りがあるような。」
「俺は俺は!!この世の不思議が恐ろしくてならん!!」
「繊細というか…めんどくさいというか、几帳面が過ぎるんじゃないの。」
「お前がのほほんと暮らし過ぎてるだけなんだ!!!」
「あんたがこまかすぎるんだよ!!!」
「くっ!!無神経な奴め!腹立たしい!失礼するよ!!」
「はあ。」
ざり、ざり、ざり。
ほこりだらけの、おせんべいを食い散らかしたカスだらけのフローリングを素足で踏みしめながら、神経質で不躾な男は自室へとかえっていった。