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舞とあーちゃんの関係

 俺が地面に倒れ伏している頃。

 舞は一人で学校に登校していた。


「なんで、りょーすけはいっつも……」


 眉間にシワを寄せ、ブツブツと不満を呟きながら、学校に続く道を歩く。

 舞にとっては結構死ぬほどに勇気を出して、デートのお誘いをしたつもりだったのにその返事があれだ。

 怒ってしまうのも無理はないだろう。

 そのままひたすらに道を歩いていると、後方から聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「舞さーん!」


 舞は反射的に後ろを振り返る。

 そこには小走りをして、追いかけて来たであろうライバルあーちゃんがいた。

 舞はなんでというような顔をして、無意識に足が立ち止まる。

 あーちゃんは追いついたと同時に膝に手を着き、はぁはぁと呼吸を整える。


「なんであんたが……」


 舞は驚いた表情をあーちゃんに見せた。

 すると、あーちゃんは息が整ったと同時に姿勢を元に戻し、にこっと舞に微笑みかける。


「舞さん、一緒に登校してくれませんか?」


「……は?」


「この際ですし、舞さんと二人きりで話したいことがあるんです」


 舞はあーちゃんの言葉を聞いて、一瞬黙り込む。


「……分かった。で、話したいことって何?」


「それはですね、今後の私たちの関係についてです」


「関係?」


「はい、唐突ですけど、舞さんって、りょーくんのことが好きですよね?」


 本当に唐突な質問を投げかけて来たあーちゃんに対し、舞は不意をつかれたような感じになる。


「えっ?! べ、別に好きじゃ……」


「じゃあ、嫌いなんですね。私がもらってもいいですか?」


「そ、それはダメっ! りょーすけは私のもの!」


 舞は勢いでそう言ってしまったことに後からになって気づき、顔をカァーと赤く染める。

 あーちゃんはそんな舞を見て、クスッと笑い、


「本当に舞さんはツンデレ屋さんです」


「にゃ?! そ、そんなわけないだろ! ゆ、誘導したな!? このバカっ!」


 舞はうぅ~っと恥ずかしそうに唸りながら、顔を隠すように一旦俯く。


「誘導なんてしてないです。でも、舞さんの気持ちも分かりました」


「……」


 舞の顔は依然と赤いまま。というよりも前より赤くなっているようにすら見える。

 そんな舞の様子を見たあーちゃんは可愛いなぁと思いながらも、本題を切り出していく。


「私と舞さんはライバル関係にあります。今まではお互いを敵視して来たと思うんです」


「今までって言っても、あんたが転入して来てまだ三日くらいだけどな」


 舞は思わずそうツッコんだ。

 だが、あーちゃんは気にすることなく、それをスルーして話を続ける。


「これからのことを考えて、私から提案があるんですけど、私たちがこう毎日いがみ合っている姿をりょーくんに見せるのはよくないと思うんです。 なんと言うのでしょうか、りょーくんからの好感度を下げているような気が……その、とにかくするんです!」


「それは、たしかに。なんか、りょーすけって、あたしたちを見る目が少し冷めているようにも見えるような……」


「そうですよね! 私もそう思ってたんです!」


「……じゃあ、その提案っていうのは?」


「私と舞さんこのままでは二人とも結ばれずに失恋してしまうということもありえます。そこでです。私と協力関係になりませんか?」


「……ごめん。ちょっと何言ってるのか分からない」


「そうですよね。いきなりこんなことを言われても分からないですよね。簡単に説明すると、敵視するのはやめませんかという提案です。お互いがお互いの恋愛を応援し、かつライバルとして頑張るのです」


「ということはつまり……?」


「舞さんが先ほどりょーくんにデートのお誘いをしていましたよね。それは別に構わないのですが、それだと不公平じゃないですか? だから、どちらかがデートをする場合は翌日か来週あたりにもう一方がデートをするというのはどうですか?」


「あ、あんたさっきの見てたのね……まぁ、いいよそれで」


 舞は渋々な感じであーちゃんの提案に乗っかることにした。

 さっきのやりとりを見られていたことに舞は少し恥ずかしさを覚えるも今更恥じることも仕方がない。

 とりあえずのところ協力関係が成立したところで、


「じゃあ、決まりです!」


 あーちゃんはそう言って、どこか嬉しそうな笑顔を舞に見せる。

 舞は、少し恥ずかしそうに一瞬目を逸らすが、小さな笑みで返す。

 こうして、俺の知らないところで二人の協力関係が築き上げられた。この当時はまだ知らなかった俺ではあるが、こんなことがあったという事実を知ることになるのは、まだまだ先の未来への話である。

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