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EP1アースシェイキング・オカマ・ショー エピローグ

 『御用聞き』は特殊能力者の家庭や職場を回り、最近の出来事を聞いて回ることだった。

植山が事件の匂いが無いか嗅ぎ分け、赤沢が防犯や犯罪組織から身を守る方法を説くのだ。

黒木もそのうち特殊能力の変調であるとか、特能省への要望なんかを聞き出す役割になる。

相談室はそもそもこっちから話しかけに行くのであって、あくまで部屋は待機室らしい。

三人はSUVに乗り込み無人の大都会をひた走る。


「ちょっと、黒木聞いてよ。一昨日、このおっさん自分の過去が云々言ってだでしょ」

赤沢が愚痴っぽく話しかけてくる、装甲車の運転も無線も出来ないない黒木は後部座席だ。

「で、ウチのオヤジ、警察で柔道とか、逮捕術の教官だったんだけど、そのツテで聞いたの、

このおっさんの過去。なんだったと思う? 」

黒木は植山が言っていた言葉を思い出そうとする。

味方を疑え、怪しいやつを利用しろ……そういう警察の役職か

「公安とかなにかの潜入捜査官とかですか、僕詳しくないですけど」

「それがね、私の最初の思い通り捜査一課の刑事だったんだけど」

フフンと植山が鼻を鳴らす、まるでこれから自分の英雄譚が語られるのを期待するように。

「ただアメリカ連邦捜査局、つまりFBIの捜査官養成所、クアンティコアカデミーにには日米捜査機関同士の連携強化って名目で送り込まれてるの。でこのおっさんはそこの正規の卒業生、つまり日本の警官でありながらFBIの捜査官バッジを持ってる。バッジそのものは記念品で、アメリカでの捜査権限はないんだけど」

「まさかそれだけじゃないだろ、赤沢教官の教え子はそんな話しかしてくれなかったのか」

植山は得意げになって先を促す。

「あー、頭痛くなる。なんだかお望みの様だから功績から先に話すわ。それでおっさんは

クアンティコから帰ってくるなり『休職を申請。休職中に管轄外の時効切れが迫る大事件やら未解決事件を複数解決に導く』……この導くっていうのが重要で、県を超えた越境事件とかの合同捜査での対立をうまいこと回したり、重要視されてなかった証拠品にヒントを与えたりして日本中を駆け回ってたのよ。書類上解決したのは地元警察だから、おっさんは一切勲章は持っていないわけだけど」

赤沢はこのどう扱っていいか分からない功労者を相手に困惑している。

「そう、現場にいちゃ勉強したこと生かせないし、事件に介入できないケースもあったのよ。

だから休職して流浪の旅にでたって訳だ。だから手柄も認められないペーペーの平刑事ってことだ」

植山が演技の臭い自嘲混じりのため息を漏らす。

確かに植山が持っているであろう人脈から察するに日本各地を飛び回り、その場の警官ともよろしくやれそうな気がする。だが、彼の言葉はどの体験から生まれたものなのかがわからない。

「じゃあ、裏切りとか味方を疑えってどういうことですか」

「FBIの訓練課程には潜入捜査——ほら麻薬組織とかそういうの含まれてるわけ、その話なんでしょ」

「BINGO! 」

わざとらしい英語で植山が話す、というか植山は海外留学できるほど英語に堪能なのか。

「植山さん、そんな英語できるんですか」

「当たり前よ、刑事、ギャング、サスペンスそういう洋画をビデオテープが擦り切れるぐらい何度も見て勉強したのよ。いわば蛍雪の功ってな。おぉ、貧しき青春時代」

植山は今度はウソ泣きを始めた、見た目と経歴以外全然ハードボイルドじゃない男だ。

「まー凄い人っていったら凄い人なんだけど」

赤沢が頭を抱えている、この矮小な偉大なる大先輩への態度が定まらない。

「植山様、とよんでもよろしいぞ」

「却下、やっぱりあんたはおっさんよ」

一昨日、説教されたときに『植山さん』と呼んでいた赤沢がウソの様だった。

「ま、懐の広い植山様はおっさんでも許してあげるが、そろそろつくぞ」

そういえば次に会う特殊能力者がどんな能力かも聞いてない。

「どんな人なんですか、次に会う人」

「普通に教えても面白くないな、ちょっと考えてみろ。あだ名は『狙撃手ヤスコ』だ

当てたら、一杯おごってやる。ただしチャンスは一度だけ。美咲チャンどっちに掛ける」

「私、当てられないほうに掛けるわ」

狙撃手——なんだか、物騒なあだ名だ。が、あだ名が付けられるということは、実際に行われる行為はそこまで物騒ってわけじゃないだろう。本当に物騒なら、あだ名をつける前にこの世から消えるか、それとも何処かの省庁の実働部隊にいるはずだ。開示されたリストを思い浮かべる、アレか。

「好きなところにものを投げられる能力の人ですか」

黒木は得意げに答える、結構自信があった。

「残念ね大外れ。おっさん、今度おごってよ」、赤沢は鼻を鳴らして喜んでいる。

「美咲ちゃんと飲めるなら悪くないな。正解は『財布の中を透視できる』でした」

「ハズレですか、でもなんでそんなあだ名なんですか」

「『狙撃手のヤスコ』こと森康子は場所を選ばずに出没するスリの名人だ。

大金を持った相手だけを狙ってスリをしてたから捜査三課の有名人、付いたあだ名が狙撃手ヤスコ。

『ベイジンショック』以前から犯行を繰り返してたが、ようやく奴さんが特殊能力を使ってるってわかった訳だな。今は特殊能力給付金で生活は賄えるし、特殊能力を悪用した犯罪が重罰だってわかったら足を洗ってる。お、そろそろつくぞ」


 SUVは全く人気のない住宅街の一角にとまった。

「あそこの家だ。まぁ、さっき話は昔の話よ。先入観無しで話を聞いてみな」

三人が車を降りる、目指すは多少古いが手入れの行き届いた白い一軒家。

「そうだ、黒木君、あなたがチャイム鳴らしてみなさい」

赤沢から不意に命令が下る。

「なんで僕なんですか」

「アンタの場慣れのためもあるけど、森さんがちゃんと防犯対策できてるかってことを確認したいの、不用心にドア開けたりしないか確かめたりね」

「わかりました、やります」


 まだこの仕事に十分にやりがいがあるってわかった訳じゃない、

でも、ここで頑張りたい、そう黒木は思っていた。だから赤沢の命令にも前向きに従った。

チャイムを鳴らすと「はーい、どちらさま」とかわいらしい老女の声が聞こえてくる。

どう名乗るべきか——仕事に前のめりすぎたせいで若干、判断を誤った。

「毎度!都庁特殊能力者相談室です!」

毎度とはなんだ、出前か。言ったそばから自分にツッコミを入れる。

「あんたは寿司屋か」

赤沢に後頭部をどつかれた。


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特殊能力者管理番号176


氏名:大木大地


能力:彼の認識する『地面』に対し彼の『腕』が与える影響を増加させる(推定)


影響:周辺1キロの地域に対し最大震度2の地震様の振動を発生させる

   変更:周辺3キロの地域に対し最大震度3の地震様の振動を発生させる


特殊能力者認定:上記の変更に伴い『戦略的特殊能力者』へと認定を変更。給付金を増額


多目的化手段:薬剤、特殊能力、強化外骨格による腕力増強によって威力の増大

       認識介入能力による強制的に目標を地面と認識させることで能力対象を変化


使用目的:地震兵器

     却下、現在開発中の軌道爆撃機『八咫烏』による爆撃がより効率的であると考える

     巨大地震予防

     巨大地震を強制的に段階的に緩ませることで災害規模を分散化可能

     

     今後使用目的について検討する必要がある。

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