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jack runner  作者: 天ノ川 緋史
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EP0 shadow of moonlight

 初めまして、読者の皆様。私、天ノ川 緋史と申します。以後、お見知りおきを。

この度、サイバーパンクの小説を書いてみようと思い立ち、執筆してしまいました。初投稿、初執筆故に至らないところも多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると幸いです。

 前置きが長くなってしまいましてすみません、では本編をどうぞ

―――西暦2070年-

月光とほのかな星々の輝きを覆い隠す、ヘドロのような黒々とした厚い雨雲が鉛のように重い雨を落とす。時刻は午後八時を回ったところだろうか。天体の光に頼らずとも、この時間のこの街は周囲数キロに渡る輝きを煌々と放っている。

 いくつも連なる建物から発せられる輝かしいLEDライトによるネオンは様々な言葉を連ねた看板を、数十階層になるビル群を、そして街を歩く人々をハッキリと、そして容赦なく、浮彫にするように照らし出している。

 人々の容姿や表情は様々だ。生真面目に今後のスケジュールでも思い返しているのか、難しい表情するビジネスマン。前も見ずに片手サイズの携帯端末である『コムリンク』を使用し、様々な情報を得続けている学生、赤ら顔で機嫌よさげに近くの女性に声を掛け、警備システムに引っかかり連れていかれる酔っ払い。高級ブランドで固めた服装で周囲の男性の注目を浴びながら夜の街に消えていく風俗嬢。黒いスーツに身を包み、何かに警戒しているのか周囲に目を配らせるヤクザ。

まさしく十人十色。人生という道を行軍する者達による軽い混沌を孕んだ領域。この街はこう呼ばれている。

 日本帝国、首都東京。

 八つの世界的企業体の三つを国内に置き、ネットワークシェアを掌握した東アジア有数の巨大国家である日本帝国の首都である東京はいつも通り、その輝きから退廃的な香りを放ちながら、世界になくてはならぬ巨大な歯車として動いている。

それは日本帝国の花々しい現在を象徴するものとして、必然的なのかもしれない。

 そして、光あるところに影ができるのも、また必定である。

 「おっさんさ、俺達のこと舐めてるでしょ?」

 「その財布(スティック)さ、早くこっちにくんない? 俺のジャケットのクリーニング代にするからさ」

 駅前の広場から風俗街に出る通り、そこに連なるビルとビルの隙間、ビルの廃棄ボックスの他に、路上でまき散らされたゴミや酔っ払いの小便で汚れた小さな隙間には三人の男がいた。

 三人がどういう立ち位置なのかは、傍から見た人々でも明白に理解できる。いつの時代でもある、血気盛んな若者から臆病な成人男性に向けられる恐喝だった。

 「そうそう、こいつってばお気に入りのジャケット着て来てるのよ。なのにこんな雨っしょ? しかもおっさんの血がついちゃったっしょ? ちゃんと洗ってクリーニングしなきゃいかんっしょ」

 「そーそー、それね。大体、俺らをムカつかせるおっさんが悪いんだぜ? ぶつかっても謝りもしねーんだもんよ」

 「すいません、すいません! 自分、急いでまして! 余裕がなくって!」

 「それが舐めてるって言ってんだよ!」

顔を殴られ、鼻血を流す小太りの男性が何度も頭を下げて、謝罪の言葉を発するも、赤毛の若者は声を強めて、容赦なくその少し出張った下腹に蹴りを入れる。

「ウグ…ゲホッ」

「どーせ、お気に入りの女が取られるって焦ってんだろ!そんな金があるなら、俺たちが有効利用してやるよ!」

 「だからとっとと財布スティック出せや!」

痛みと惨めさで呻く男性を若者たちは踏みつける。この場所は周囲から見て、あまり見通しが良くない。音も駅からのアナウンスやリニアの風を切る音によって遮られてしまう。確かにそういう場所ではあるが、おそらく通行人がこの光景を視界の端に見つけたとしても、通報するだけで止めには入らないだろう。

 関わったところで良いことはない。面倒に巻き込まれるくらいならば、知らぬ存ぜぬを通したほうが被害はない。おそらく警察トローデンがこの場所に来るまで、この男性は若者たちの暴力にさらされ続ける。最悪、死ぬまで。

 そう、もし関わってくるとしたら、この空間に利を見出せる人間だけだろう。それがどんな利となるのか、その当事者にしかわからないが、それがわからない他者から見た時、不可解なもの見えるだろう。

「…あぁ? なんだテメェ…っ!」

だから金髪の若者は背後にいきなり現れた人物に向かって、そう言った。若者がその人物に気付いたのは、男性をいたぶる為の道具を調達しようとした時だった。

 それはフード付きロングコートを身に纏い、靴と手袋をしており、肌色と呼べる部分はまったくなかった。その者を指し示す色は二色だけだった。

黒、黒、黒。何もかもが黒い。その黒が雨に濡れて光沢を帯び、まるでコールタールじみた色合いとなっている。そしてフードの奥底にあるのは黒いマスクとその中心で点を穿つようにして存在する赤色のアイ・カメラ。若者はその見た目に不気味さを覚え、少し言葉に詰まった。

「あ? 何々お仲間? 俺達に毟られに来たの?」

そんな不気味さを感じないもう一人が、男性をいたぶるのを止めて、コートの人物に近付く。コートの人物は金髪の言葉に毛ほども反応を見せず、伏せ気味だった顔を少し上げると言った。

「お前ら、『アーセナル』の者か?」

その声はこの雨にも負けぬ、感情を切った冷たさと若者らしい幼さがあった。しかし、そんなことに意識することのない若者たちは言葉の意味を理解すらもできず、お互いに顔を見合わせた。

「…はぁ? 何言ってんの?」

「わっけわかんね。混乱するだけだし、もうボコっちゃいます?」

「賛成」

不安感を持っていた金髪の若者も数の有利がこちらにあると思ったのか、言うが早いか、先ほど男性の顔面を殴った拳を黒コートに目掛けて振り下ろした。瞬間、黒コートが動いた。顔を狙った拳に対して首を傾け、最小限の動きで躱すと、右手を伸ばし、若者の顔面を捉える。

「ぶっ!?」

そしてそのまま掌で覆うと、相手の足を払い、後頭部から地面へと叩き付ける。その後、ゆっくりと手を放し、若者が脳震盪で昏倒しているのを確認し、もう一人へと向き直る。

「なっ…てめっ!」

赤毛の若者は焦りながら懐から折り畳み式のナイフを取り出すと、ゆらゆらと威嚇するように、刃先を黒コートに向ける。

「そ、それ以上近付くとこいつでメッタ刺――」

続く言葉が口から発せられるよりも早く、黒コートはナイフを持った腕の手首を掴み、捻り上げる。その後、意識せぬ方向からの痛みに前かがみになる若者の腹に膝蹴りを入れ、覆いかぶさるようにして。

「ゴフッ!?な、なん―――」

「失せろ」

そう、耳元で言うと腕を開放する。支えを無くした若者は先ほどまでの勢いを完全に殺され、体を起こし、這うようにして、通りへと移動する。

「忘れ物だ」

黒コートはそう言うと、足元に転がっていた金髪の若者の腹を蹴り上げ、逃げる若者の方へと跳ばした。片足とは思えない膂力だったが、そんな考えが頭を過ぎるほど彼に余裕はなく、金髪を掴み、引き摺る様にして、通りへと出て行った。

「あ、ありがとうございます」

震えの止まらぬ男性は絞り出すように礼を言った。小さな厄介事を終わらせた黒コートはそんな男性へと向き直るとカツカツと近付いていく。その姿に男性は全身を強張らせた。男性の混乱した脳でも、明らかに先ほどの若者達よりも、目の前にいるコートの人物の方がより強力で、より危険であると理解できたからだ。

田幡(たばた)(まさる)、『設計図』を渡してもらおうか」

自分の名前を呼ばれ、より一層悲壮の色を強めた田幡は急いで立ち上がろうとする。すぐさまこの場を離れなければならない。もしこの黒コートが言う物を渡したら、おそらく考えたくない方向の結末を迎えることになる。

「あがっ!?」

だが、田幡に逃避は許されなかった。先ほどまで鮮明だった視界が一瞬で砂嵐に代わったのだ。何も確認することのできない田幡は何かに躓いて、その場に倒れる。

「な、なんで…私の目が…」

「…あまり手荒な真似はしたくないんだがな」

突然の出来事に混乱する田幡の耳に、足音と声が聞こえる。まるで水溜まりで暴れる蟻の如く、四肢を振り回して、どうにか前に進もうとするが、すぐに首根っこを掴まれられた。

「俺の目的は『設計図』だけだ。お前に被害を与えようとは、思っていない…ただし、それは抵抗しなければの話だ」

黒コートの言葉は田幡の恐怖を一層煽った。ただでさえ相手はよくわからない人物である上に、視界まで奪われてしまっているのだ。

「わ…わかった…わかりました…」

恐怖がピークに達し、黒コートの言葉に応じると一瞬で視界がクリーンになり、地面を覆うアスファルト合成材料が映る。田幡はすぐに黒コートに向き直ると、懐から白い強化アルミニウムで作られた筒状のデータパックを取り出した。黒コートはそれを受け取るとしばらくそれを眺めた後、コートの奥へとしまい込む。

「素直に渡してくれて助かるよ」

先ほどまでの威圧的な声色は消えた黒コートはそう言いながら、田幡に一枚のデータスティックを突き出した。カードと目の前の人物を数度見比べた後に田幡は恐る恐る受け取った。

「その中には治療費の足しにはなるキャッシュが入っている。これに懲りたら、御社の不正アクセスなんて止めることだ。マトリクスで逃げられても、ボディが消されるぞ…って」

黒コートが忠告を言い終わる前には、田幡はその場から駆け出していた。後頭部を掻きながら、小さく溜息を吐くと黒コートはチョーカー型の『コムリンク』に接続指令を出す。

「こちら『レッド・アイ』、ブツは回収した。この足で依頼人に会いに行くぞ」

声帯を使わない声で接続した空間ノードに伝えると一秒足らずで、接続先から少女の声が返ってくる。

「了解。アルは寝ているけど…どうするの?」

「叩き起せ、あいつは交渉役コンダクターとしての自覚が足りん。紅花ホンファはどうしてる」

「警備隊の後始末。粗方片付いたからすぐに迎えると思う」

「よし、じゃあ紅花は集合地点で待機」

声のないやり取りはそこで終了すると、黒コートはおもむろに空を見上げる。数多の輝きの裏に影を落とす街、東京。その東京に降り注ぐ、酸やスス、その他有害物質の多数入った雨。それに晒されながら行われる、後ろ暗い仕事ビズ

「…酷い話だ、まったく」

しかし周囲と財布はそんな酷い話を運んでくる。ならば、文句を言うよりもやるべきことがある。不機嫌に呟いた後、黒コート…久世景一は再び輝く街へと消えていった。


今回はプロローグといった形で書いてみました。いかがでしたか?

 いろいろとサイバーパンクを読んでみて、書いてみたのですが、なかなか納得のいく物をかけません。私としては自分の文章はとにかく文章が堅苦しく、同じような表現が続いてしまうと考えています。とりあえず以上の事を直すという目標で、しばらく書いていきたいと思います。

 それでは、今後ともよろしくお願いいたします。


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