黒幕
黒幕
「とうとう、黒幕のおでましね。残念ね、精神支配される前にあなたの念波を勝手に止めちゃって」
「いつから気付いていた、小娘?」
「私のレインボー・ショットが決まったときよ、ダーマ」
「結構、さすがは『香奈』の娘だ。それになかなか美しい、なあ?」
「ああ、その顔つきはお前の祖母『里香』に似てきたな」
ついに「ダーマ」と「ギバ」がなっぴたちの前に現れた。彼女はその時、キューを持つ手がわずかに震えるのを感じた。
「最後のチャンスに、わしたちの歴史を見せてやったのに、気が変わらんか。馬鹿な小娘、母の元に送ってやる」
ダーマがラグナに命じた。
「今こそわしのマルマを使い、最強のラグナとなれ、グラナーダ・ラグナ」
ダーマがそのラグナに取り込まれていく。黒いフードの衣服がドサリと岩の上に落ちた。そのラグナが動きを止めた。
「始まったか、ラグナ・マルマの再誕が。どれ、もうひとつの恐怖をお前に見せてやろう。アガルタのカイリュウ族、最後の力をな」
ギバはそう言うと、叫んだ。
「竜化」
渦巻く霧とともに、黒鉄色の竜がなっぴの前にたちはだかった。それは『ギバハチ』のもうひとつの姿だった。
「ダーマが羽化をするまで、少し遊んでやろう」
黒竜がなっぴを壁に追いつめた。タケルが二人の網を切り刻んでいた短剣も、ついに折れてしまった。床の岩に落ちた短剣の金属音が響き、気を失っていたセイレが気付いた。兄の手のひらからにじんだ血で、折れた短剣の柄は緑色にぬめっていた。
「兄さん、こんなになるまで……」
「かまうな、俺はカイリュウ族。だが『カイリュウの力』はない、少しでも網の力を弱めようとしただけだ、まあ無駄だったな、はははっ」
再び二人を捕らえた粘着網が締まり始めた。ミーシャが言った。
「無駄なんかにしない、タケル。わたしの『白龍刀』を使って」
しかし、長い『白龍刀』はその縮んだ網の中では、鞘から抜く事もできない。
「この『バジェスの剣』なら、網の間から出せる……」
そう思った時には、セイレは後ろ手のまま網の目から「バジェスの剣」を突き出していた。しかしすぐに網の目が詰まりセイレの腕は挟まれていった。セイレは声を出さなかった、気付かれてはいけない。セイレにとってはもうそれが最後の切り札だった。
それを受け取ったタケルがそれを高々と上げた。
「ミコ、兄さんとともにアガルタを守って……」
黒竜の前に進み出た若者があの「タケル」だとギバは気付かない。ただこの男からは懐かしい匂いがする。それはカイリュウ族のものだ。彼はとっさにこう思った。
(こいつだったのか、念波を受けていた奴は?)
「タケル、あなた戦うつもり? 相手は『竜化』した黒竜。アガルタで最強の相手なのよ」
「なっぴ、アガルタには、この星のすべての『母』、『クシナ』につづく『エスメラーダ』がいる。もっとも強く気高いものは『母の意志』、『エスメラーダの意志』なのさ」
そう言うとタケルはその剣を回転させ始めた。
「この剣を使うのにもはや言葉はいらない、これはアガルタそのものだから。ただこの剣をここに降り出せるのは「クシナの意志」が認めた『エスメラーダ』ただ一人に限られる」
「ミコ、ここへあれ!」
タケルが『バジェスの剣』を空中に放った。




