塞がれたシャングリラ
塞がれたシャングリラ
ラグナはそれを聞き、シャングリラから這い出るのを止め、後ずさりをした。そして内側からその出口を塞いだ。大音響とともにそのシャングリラは塞がり、アガルタへの道が閉ざされた。それ以来、王国は異界にとり残されていたのだった。「ギバ」が発見した「チモニー」はその古いシャングリラだった。
ダゴスの知っていた、ヨミ族のはじまりは決して華々しいものではない。まったく逆の、『敗者の歴史』に他ならない。そう彼らは「アガルタ」を捨てたのだった。自分たちが生き延びるために……。
「火星と名付けられるずっと前から、わしたちの先祖はその星、マルマ溢れる星に住んでいた。ようやくこの星にも天と地が分かれ、海ができた頃、わしたちの元となるラグナがこの海に着いた。温暖な気候と深い海、何の不安も争いもなかった。なぜなら、全ての生き物はラグナの意志を持つラグナ自身だったからだ。「死」つまり活動停止したラグナは再びラグナの元へ帰り、そしてまた生まれ変わっていく。少しずつその経験は蓄積されていった。それが浄化、再誕のプロセスだ、全てのラグナは同じ記憶を持つ。だがある日この星は変わった」
「これは、ラグナが念波で私に話しているのね、ナナが言った事と同じだわ」
なっぴは、心を開こうとしているラグナから念波を受け取る事にした。しかしそれは危険な事かも知れない。彼女はテンテンに告げた。
「もし、私が戻ってこなかったら、テンテンあなたが私の体を使いなさい」
「何を言い出すの、そんな事できる訳ないでしょ。死んじゃうかも知れないわ」
「大丈夫、マンジュリカーナだって私の体を使えたんだもの。きっとできる、これは『マンジュリカーナ』としての命令です」
「人間界では、まだ見習いでしょ。まあ考えとくわ、気を抜いたら精神支配されるわよ。ラグナを簡単に信じないでね」
「オッケー、分かってるって」
なっぴは、ラグナの念波を少しずつダウンロードさせた。
「タオがマナとヨミからこの星に新たな神を産んだ。アマテラス、アマオロス、ツクヨミそれが『聖三神』だ。そして『創神』と呼ばれる『偶生の神』を産む、そしてそのものたちがわしらを次々に追いつめていった。『カンブリア族』のうちで、やつらに寄生したもの、それが『ラグナ族』のはじまりだ。しかし大多数の『カンブリア族』は死に絶えていった。わしたちは仲間とともに敵のいないさらに深い海の底に移り住んだ。それがこのアガルタの地だ。マルマに近いここで暮らすつもりだった。しかしここに現れた『カイリュウ族』は『バジェスの剣』という刀を振い、わしらを追ってきた。わしらは恐怖しまだ生きているものまで浄化していった。その結果が『ラグナ・マルマ』に先祖帰りをする事になった。シャングリラのひとつを使い、異界へ落ち延びたラグナ・マルマは次元の谷でひっそりと暮らしていたのだ。数えきれない仲間を融合して連れて行った。これがカンブリア爆発後の大絶滅、いや大移動なのだ」
(似ているわ、私たちの故郷『ルノクス』と『ゴリアンクス』の危機を逃れるための、ゴラゾムとリカーナの行ったムシビトたちの融合に……)
なっぴはそう思った。そしてラグナはその先を伝えた。
「異界に暮らしていたのは、見捨てたはずの『カンブリア族』、『ヨミ族』と名乗るムシビトの祖先だった。しかも彼らは『偶生』を手にしていた。それは再誕のプロセスを失ったからだろう。限りある命を持つ様になっていた。わしの責任だ、わしはもう一度彼らに再誕のプロセスを教えてやろうとしたのだ」
なっぴは、ラグナからこれ以上念波を受け取るのを止めた。ラグナが寄生した訳がようやく分かったのだ。ラグナはそれを感じ取り、なっぴに向い体を震わせた。その腹の下から土ぼこりが上がり、二つの影が現れた。




