ラグナ 強し
ラグナ 強し
なっぴはその姿をアカデミアで見た事があった。絶滅したカンブリア紀の化石が多く見つかった「バージェス頁岩」の講義のときだ。それは復元された想像図の『アノマロカリス』に似ていた。エビのようなカニのような、トビムシやクマムシにも似た全ての節足動物の集合体のようなものだった。
「お前はこの姿に、驚きもしないのか?」
ラグナはそう不思議そうになっぴに言った。
「あなたは本当に『神の子』なのかも知れないわね。だけど私はその姿を見ても遠慮はしないわ、かかってらっしゃい」
なっぴはゆっくりキューを構え直した。
「お望み通り、絶望でまずその口をきけなくしてやろう」
ラグナはまずゆっくりとセイレに近づいた。
「エスメラーダ、アガルタの人魚。その剣を使え、効果があればだがな」
セイレがかけ声とともに振った。
「なぎ祓え、バジェスの剣よ!」
しかしそれは、堅い甲羅に跳ね返り四方に砕けた。
「くくくくっ、そんなものは、わしには効かない。わしは既にラグナ・マルマに近いのだ。そらっ」
ラグナは口から糸を吐く。その糸は網状になりセイレを絡めると壁面に粘着した。セイレがその衝撃で短くうめき声を上げ、その気を失った。
「後で、もっと小さくまとめてやる、肉団子にしてな」
それを見て、ミーシャが「白龍刀」を抜く。
「ラグナ、浄化、斬!」
白金の閃光がラグナを切り刻んだ。しかしその傷は塞がり、ラグナは今度はミーシャに襲いかかった。
「効かぬなあ、幼体では危なかったが、俺は既に二度の脱皮を終えている。白龍刀など効くものか」
「きゃっ」
ミーシャもまた粘着網につかまり、セイレのとなりに貼付けられた。さすがに「タケル」は二人に駆け寄り、その網を懸命に破ろうと短剣を使った。
「そんなもので破れるものか。その網はわしの『マルマ』で編んだものだ。わしが倒されない限り破れはせん。さあ、マンジュリカーナ。厄介なのはお前で最後だ」
「ラグナ」は二対ある捕獲用の「牙」を交互に拡げた。その姿を見てヨミの戦士は背筋が凍り付いた。それが何故なのか、初めて見るラグナのその姿に彼らの古い記憶が呼び戻されたのだ。ダゴスはその姿を見た事があった。それはリカーナがラグナの幼体を浄化した後の事だ。次元の谷にあった「シャングリラ」が開いた。その中から這い出てきたのがこいつだったのだ。浄化された幼体を抱え、ラグナはリカーナに尋ねた。
「お前は、ヨミ族のメシアになるつもりか?」
「もし、それが彼らの望みなら、しかし彼らには必要ない事でしょう。彼らは自らが『考え』そして向って行く事でしょう。ヨミ族、いえアガルタを追われ、この谷を抜けた『カンブリア族』の生き残りは既にこの星のかけがえのないもの、この星の子供なのです。ヨミ族は自らの「メシア」を選ぶでしょう。それは邪心のない、他人のために命をかける巫女に違いありません。その日が来るまで私たちはたとえ何年でも待ち続けます。彼らの真の「メシア」がこの地に現れるまで……」
「何故、そんなに信じられる。リカーナ」
彼女は微笑んでこう言った。
「彼らは私たちと同じ星のもとに産まれた生命体だからです




