ラグナの脱皮
ラグナの脱皮
「バジェスの剣におびえるとは、やはり進化にとり残されたカンブリア族。見るがいい、ラグナの力を」
貝の蓋が開き、ヨミの戦士の力を併せ持つ巨大な「ラグナ」が這い出てきた。それを見たなっぴはこう言った。
「ラグナの幼体、でもこいつはさらに成長しているわ」
「なっぴ、一緒に戦うわ、援護する。ミーシャもいくわよ」
セイレはすっかり逞しくなった様だ。それを聞くとなっぴもミーシャも頷いた。ラグナは関節を長く伸ばしその節から何対もの細く長い脚を伸ばした。それは「クモ」にも「ゲジ」にも似た不気味な容姿だ。
「なっぴ、グリーン・サイスをセットアップして!」
「オッケー、グリーン・サイス」
巨大なサイスを装着し、彼女は苦もなくその長い足を切り飛ばした。もちろんガマギュラス顔負けの「めちゃ振り」だが。
「シャア」
かけ声とともにラグナは細い糸を吐き、なっぴはそれに絡めとられそうになった。それをセイレがなぎ払う。
「バジェスの剣よ、なぎ払え!」
なぎ払うどころか、その糸は一瞬で蒸発した。恐るべき力だった。
「オローシャ・カムイリカ」
ラグナを休ませる間もなく、ミーシャの吹雪がラグナを取り囲む。動きが鈍った。続けて今度はセイレが岩の塊をいくつも放つ、凍り付いたラグナを砕こうというのだ。
「ダルーシャ・ナム・トツ」
しかし完全に凍り付いていないラグナはその岩の塊の下で、不気味に笑った。
「クククッ、その程度でわしが参ると思うか。見よ」
ラグナは聞き慣れぬ呪文とともにその皮膚を変える。
「マルマ・ドゥ・コンテーラ」
それは憑依の術、なっぴの着装の術と似ている。ラグナの皮膚が甲冑の様に硬化し深い赤へと変化した。メタモルフォーゼとは違うが、さらに脱皮をしたのだ。その姿は堅い殻を持った『三葉虫』と言ったところだ。
「ラグナは成長している、こいつは手強い。俺たちが動ければ……」
「いや、あの娘たちなら大丈夫かも知れん」
ガラムとゴラムはそれをコマンダーの中から見ていた。ラグナは体を震わせると長く伸びた触覚を振り上げながら節足を使い岩の下から這い出した。
「やはり、エスメラーダが現れたか、忌々しい『バジェスの剣』を持って。しかし今度はやられんぞ。ヨミの戦士の力を得た今、わしは覚醒し『ラグナ・マルマ』となるのだ、再び『神の子』にな」
「ラグナ」は今度は炎を吐きながら、向ってくる。その劫火は二人の巫女の呪文で防がれた。
「オローシャ・カムイリカ」
「ダルーシャ・ナム・ルツ」
ミーシャの出した吹雪がセイレの起こす雷雲に吸い込まれると、巨大な渦となってラグナの劫火を一瞬で吹き消す。これこそ、かつて「アガルタ」を救った二人、ミーシャの祖母「ラナ」とエスメラーダ人魚「ダルナ」とのコンビネーションだ。
「ありがとう、二人とも。思い切り行くわよ、レン・スティノール」
なっぴは伸びるバイオレット・キューにつかまったまま、上空に跳び上がった。




