ミーシャの危機
ミーシャの危機
「ふふん厄介なものをもっているがこれは防げまい。怒りよあれ、ナム・レツ」
「アガルタオオウズガイ」が紫色の霧を吐く。それは幻覚をミーシャに見せた。その瞬間、彼女は「白龍刀」をもつ腕を激しく振るわせた。
「お前は、ガラム……」
彼女はその霧の中に母の仇を見たのだった。
ただならぬミーシャの様子に、ブローチの中のテンテンが言った。
「なっぴ、メタモルフォーゼよ。ミーシャを止めるわ」
「解った、テンテン着装。メタモルフォーゼ!」
なっぴが少し小型になったコマンダーに話した。
「テンテン、ミーシャは何を見ているの。私には見えないんだけど」
「それは、彼女の母を殺した敵の姿、私には彼女の心が壊れかけていくのが見える。怒りに任せて『白龍刀』を使ってはだめ、一振りごとに自分の心が傷を負うわ。なっぴ彼女が見ている敵の事、何か知っている?」
なっぴは即座に答えた。
「ミーシャの祖母と母を殺したのは、確かヨミの戦士『ガラム』と『ゴラム』だと言っていたわ。でもラグナを浄化したし、彼らは消え去ったはずなのに……」
「暫く見ないうちに、こんなところまで来ているとはな」
「まったくだ、どうやらこいつらは本気で『シュラ』を止めようとしている様だ。ムシビトが団結する訳だ」
「ダゴス、お前の言う通り、なっぴは不思議な娘だ」
「虹色カブト」の中ではこんな言葉が交わされていた。
「ミーシャ、私が変わるわ。それは幻術よ、心を乱してはいけない」
なっぴは高く飛び上がった。彼女の声に我に帰ったミーシャは白龍刀を納めた。なっぴはバイオレット・キューを抜いた。
「レン・スティノール」
なっぴはちょうど良い長さに伸ばしたキューを回転させ、本体の「アガルタオオウズガイ」の殻の中心を打突した。
「ギュルル」
確かな手応えがある。しかし「アガルタオオウズガイ」は触手を一斉に伸ばした。そしてそれはまるで巨大な網の様になっぴの目前に広がった。至近距離のこの攻撃になっぴはなす術がない。
その時なっぴの背後から緑の光が輝きその無数の触手の動きを止めた。たまらず触手は一本また一本と殻に逃げ込んでいく。そして蓋を閉じ、小さな目で辺りをうかがっている。それはまるで何かにおびえているようだった。なっぴが振り返ると、緑の短剣をもつセイレが息を切らして立っていた。
「セイレ、それにタケル、来てくれたの。あれっミコは?」
「この剣の中よ、なっぴ」
「バジェスの剣か、それを持つあの娘はツクヨミの娘、『クシナ』の力を受け継ぐものなのか?」
「この海底でクシナの力に逆らうものがどれほどいる。『アガルタオオウズガイ』はもう、うごけまい」
しかし、ザラムとゴラムの話を聞いていたダゴスはこうつぶやいた。
「しかし、あいつの中のあれはアガルタの者ではなかろう。はたしてどうかな」




