オロシアーナ見参
オロシアーナ見参
「ミーシャ、セイレがまだ戻ってこない」
なっぴが不安そうにミーシャに言った。
「なっぴ、思った以上にクレパスは深く続いている。引き返すわけにはいかないわ、それに『amato2』はさっきの衝撃でスクリューがひとつ破損している。速度が60パーセントになっている。最悪の場合、途中でバッテリーが切れるかもしれない」
彼女はそうなっぴに答えた、また一目盛りバッテリー残量が減った。その時モニターがクレパスの先にあかりを捕らえた。それがアガルタの最深部、マオの洞窟の入り口だ。ミーシャは動力部の「ラダー」を水平にし、そしてその洞窟を慎重に進んだ。タイマーをセットし、帰りまでの時間を計った。やがて「ラダー」は上向きに切り替わった。海底の洞窟はマナト同様に太古の大気に満たされている様だった。排水をしつつ『amato2』は再び浮かび上がった。『耐圧穀』のカプセルから、二人が岩場に降り立った。『amato2』はアンカーを下ろし、決死の二人はついにアガルタに着いたのだった。
「いくわよ、なっぴ。計算通りならバッテリーはさっきのセイレと分かれた場所まではもつ。今度は私がいるから、チャッチャと片付けましょう」
海底洞窟をそう言いながら進む二人の前に、やがて広い空間が開いた。
「ここが、マオの洞窟かしら?」
彼女に答える者がいた。
「お前たちはマオ様の事を知っているのか?」
その声は目の前のドーナツ状の石から聞こえてきたものだ。
「この先に行くのなら、わしが相手をしよう」
その石は浮き上がり。ゆっくり回り始めたのだ。そしてさらに高速に回りミーシャに襲いかかった。
「オローシャ・ピリリカ!」
その呪文とともに、雷針がそれに向って放たれる。しかしそれはことごとくはじき飛ばされた。すかさず彼女は次の呪文を唱えた。
「オローシャ・カムイリカ!」
ミーシャは氷結の呪文に切り替えた。幾分かその回転は鈍くなったが、あまり効果はない。吹雪の呪文を彼女は続けた。
「オローシャ・カクラーナ」
やっと回転がとまり水平だったそれはゆっくり90度起き上がり、垂直になった。それはオウムガイに似ていた。なっぴは驚きの声を上げた。
「まさか、アンモナイト……」
無数の触手を動かし、空中に動くのは正に『アンモナイト』そのものだった。しかしなっぴたちの身長ほどの直径がある巨大なものだった。
「アンモナイトだと? 滅び去ったやつらと一緒にするな、わしは『アガルタオオウズガイ』。ここの守りを「ギバ様」から命じられている。見た所オロスの巫女、ならば術には術だな」
そう言うと、それは呪文を唱えてミーシャに攻撃した。
「炎よあれ、ナム・ホノ」
劫火が彼女を包む。しかしそれは吹雪の風で吹き飛ばされた。
「オローシャ・カクラーナ」
「岩よあれ、ナム・トツ」
その岩盤の攻撃をかわし、ミーシャは金髪を逆立てるほどの「気」を込めて腰の短剣を抜いた。
「オロスの神よ、我に力を与えたまえ。オローシャ・クシナ・アガルータ」
彼女の髪は黒くなり、巫女装束に変わり、短剣はその呪文とともに長い太刀に変わった。その太刀は白金の輝きを放った。




