フローレスとゲンチアーナ
フローレスとゲンチアーナ
アロマは最後の力を使い、テンテンを送還した。その手には『ムシビト』たちの思いが結集した『虹色カブト』が握られていた。それを見送るアロマは残った時間で「フローレス」について語った。その話は「ラグナ」を「浄化」した「リカーナ」のその後からだった。
何故リカーナにその力があったのか、それは「ラグナ」が「ルノクス」にいたからだった。そして女王「リリナ」が優れた巫女であったからだ。
王の復活を約束した『ラグナ』は星の「マルマ」を取り入れ生きながらえていた。宇宙の辺境に追いやられた彼は、失敗作である未完成な星「ルノクス」に産まれた「ムシビト」の生命力の限界に早くから気付いていた。新たな命が産まれないのは「浄化」し再び生命を産むための「マナ」が十分になかったからだ。「ラグナ」は自分の中の「マナ」を「リリナ」に与えた。そして王の再誕は叶う、だがその王はまったくの別人であった。悲観した女王はやがて命を落とす。その事で「ラグナ」は初めて気付いたのだった。再誕と言うのは何も産まない、ただの繰り返しなのだと。そして神を捨てたのである。
「ラグナ」は長い旅を続け、ついに真っ赤に燃える星に向けてゆっくり降りていった。途中に立ち寄ったルノクスに似た星にもいくつかの子供を残して。「ラグナ・マルマ」を救った『メシア』こそ、その「リリナ」であった。ルノクスを離れる前に、彼は全てのマナを「リカーナ」に与えたのである。それが宇宙で産まれた「マンジュ」にも伝わったのだ。
「この星でラグナの子孫を見つけた時、母は姉と私に語った。ラグナの持つ再誕の力はマナとヨミによる生命誕生の力と比べて『いびつ』なもの、みだりに使ってはならないと。母がそれを使えたのは、ラグナの力をつかったにすぎない、本当の「生命誕生」には、大宇宙の真理「マナ」と「ヨミ」を正しく扱ってこそ可能になる。まだそれを私たちは手にしてはいないと……」
「でも、マンジュリカーナ様はそれを使うことができました。それは何故ですか?
残されたゲンチアーナ(リンリン)はマイを甦らせたマンジュリカーナ、ギラファを生き返らせたなっぴの事を思い出してそうアロマに聞いた。
「姉はラグナさえ包み込む程の強大なマナを持っていたのです。そのため、完全な再誕もできる巫女『マンジュリカーナ』として目覚めたのです」
長い宇宙の旅で吸収したマナの力は、この星のマナとは比較にならない程だった。ここはヨミの力があふれるばかりだった。私が甦らせたのはアキナとはまったく別人のカルナ、そして伝承のエスメラーダ人魚……」
私は自分の愚かさを悔い、七つの石に「ヨミ」の力を閉じ込め、ほこらの奥に納めました。そして産まれた娘『フローレス』に次々と禁呪を教えた。その結果、娘は壊れてしまった。娘を哀れに思い、この星の精霊が再誕させた『フローレス』は一人ではなかった。
「優れたマナの力を持つラベンデュラ、愛と癒しの心を持つスカーレット、そして呪術に長けるバイオレット。彼女たちは私の娘、フローレスの生まれ変わりです。その時現れた精霊こそ『ヒドラ(ナナ) 』なのです。そして着床した姿こそこの星の最高巫女『ヒドランジア』なのです」
「じゃあ、ナナがマイに着床したら本当のヒドランジアの力が使えるの?」
「マイがそれを受け入れれば……」
ゲンチアーナ(リンリン)の問いに答えながら、アロマは次第にその色を失っていく。
「それから三人は『ヒドランジア』とともにその意識を取り戻します。私ができるのはここまでです。ヨミ族の巫女アゲハのシルティ。よくがんばりましたね……」
気を失った巫女アゲハを残し、アロマリカーナは消え去った。抱きかかえたコオカが閉じかけたヨミの目に叫んだ。
「さあ、シルティの代わりに私を連れて行くがいい、約束だ。遠慮はいらない」
「お前を? 馬鹿を言うな。そんな事をしてみろ、二度とあの娘に会えないではないか。ヨミ族をも救おうとしているなっぴのためだ。それにこれでシルティはヨミ族の『メシア』となった。コオカ、わしはそれがうれしい。どうしてもと言うなら、シルティをお前の妃にしてやってくれ。代償はそれで許してやろう。あっはっは……」




