アロマリカーナ
アロマリカーナ
「アロマ、また考え事? きっとアガルタの事でしょう」
マンジュ(マンジュリカーナ)は妹に声をかけた。アロマはアガルタの「マオ」に懇願され、再誕術でアキナを再誕させた。その時に産まれたのがエスメラーダ人魚『ルシナ』と女王『カルナ』だった。(そのいびつな再誕のプロセスは、ラミナまで続くのだが、アロマはカイリュウ族のその後の騒動は知らない。)
母リカーナがミコトをレムリアで再誕させた。その際記憶の全てをリセットしたのを見てずっと思っていた事があった。
「姉さん、カブトは以前の記憶を全てなくしてしまったのね」
マンジュはそう言った妹のとなりで座った。
「ええ、すっかり別人になってしまった。母様の言った通り、再誕には別の意味があるのかも知れない」
「別の意味?」
「ルノクス最後の王を女王が再誕させたときから私たちに不思議な力が受け継がれている、それは『マナ』と『ヨミ』の力を操るだけでなく、それを逆転させる事すらできる。産まれた命は老い、死んでいく。不老不死は時間を逆転させる事なのかも知れないわ」
アロマは再誕術が姉よりも巧みであった。彼女は、この星のムシビト『ヨミ族』の精霊に気に入られたのかも知れない。
「まあ、いいか。姉さんがいるから」
「私がいるからって、何考えてるのアロマ」
「私の力を封印して、姉さんの術で……」
「本気なのアロマ」
「私にはその意味など解らない。ただ限りのない命に重みは感じられない。アガルタに私はとんでもない事をしてしまったような気がする。私のこの力をあのほこらにでも封印して、お姉様」
それを封印したものが『七色の原石』となった。先日虹のほこらから「虹色テントウ」の姉妹が持ち出したものだった。アロマが術を封印したために、のちに誕生した彼女の一人娘『フローレス』は巫女としては覚醒しなかった。フローラ国の女王となり、三姉妹『ラベンデュラ』『スカーレット』『バイオレット』を産むが彼女らもマンジュから術を教わったに過ぎなかった。しかし、やはり血は争えない。筆頭巫女の「ラベンデュラ」はその術をほとんど修得していたのである。巫女たちは由美子を人間界に送ろうと、マナの力を放出したため、三姉妹の命はまさに消えようとしていたのだった。ついにヨミはシルティに再誕の術の封印を解いた。
「シルティ、アロマが使ったのは、この星のマルマを集めたもの。星の生命力そのものだ。等しく生き物にはある、体が滅んでもその力は再びわしの元に集まりそして浄化される。過去の記憶や経験はひとつになりマルマの中心に集まる。その混沌が『タオ』というわしらの父であり、そして母なのだ」
マナとヨミがバランスされた時、命は産まれる、アロマはマンジュよりも「マナ」の力が足りなかった。彼女がアガルタで使った再誕の術が不完全だったのは、そのためだった。
(マンジュはルノクスの『リカーナ』が持っていた『力』を受け継いでいたのだ。あのなっぴが、その『力』の正体を知った時。ムシビトたちはやっと救われる……)
それは「シルティ」には聞こえない。彼女の体にアロマが降臨し始めた。その白い装束が裾から次第に青く色づいていった。
「アロマリカーナ様……」
「マンジュリカーナ様の妹」
虹色テントウの姉妹はその姿をはじめて見た。しかしその顔立ちはマンジュリカーナに似ていた。アロマリカーナは口を開いた。
「さあ、急ぎましょう。それ程時間はありません。シルティが力尽きる前に、私が動けるうちに。巫女たちよ私に話してみなさい」




