初志貫徹
初志貫徹
セイレがその沈黙を破った。
「なっぴ、それでもアガルタを救ってくれるというの? ムシビトたちを異界に追いやった私たちのために」
なっぴは黙ったままだ。ナナがぽつりと言った。
「私はその『カンブリア族』の生き残り『ヨミ族の精霊』なのだ」
「なっぴ、私はダーマたちを止めるつもり。でも無理強いはしない。あなた自身で決めなさい」
そういうミーシャに、なっぴはこう答えた。
「決まってるでしょ、初志貫徹」
「それは『香奈』が人質だからか?」
「そうね、ナナ。それもある、だけど……」
「アガルタの人魚姫が助けを求めている、それが戦う理由。そうでしょう、なっぴ」
「コンバーター」からテンテンの声がした。
「さすが、テンテン。大正解!なんてね」
なっぴが笑いながら答えた。
「私たちのためにナノリアまで来てくれたものね、死ぬかも知れないのに」
「そう、それに私はダーマもギバもそしてシュラの存在さえ、この星にとって何かの意味があると思う。母さんは最大のマナを持つ『マンジュリカーナ』きっとわざとダーマの人質になったのだと思う、それは私へのメッセージ。それが何かは解らないけれどこの先にきっとその答えがあると思う。セイレ、ムシビトはあなたたちのおかげで知的生命体へと進化できたのだと思っているわ。明日のために未来を切り開くのがわたしたちの生き方だと『ゴラゾム』から聞いたの。きっと遺伝ね」
なっぴはセイレにそう言って微笑んだ。
「ゴラゾム、それはゴリアンクスのゴラゾムの事か?」
「ナナも知っているの、そう宇宙で産まれたマンジュリカーナの父、ヨミにその体を預けムシビトたちをこの地球に導いたゴリアンクスの王子の事よ」
「そうだったのか、だから私の力を使えたのだなアロマというあの巫女も」
「アロマリカーナはマンジュリカーナの妹、その父親はゴラゾムの弟だったのよ」
新たに「amato2」の先に巨大なクレパスが現れた。
「どうやらあのクレパスから真下に降下すれば洞窟に入れるらしいわ」
やがてミーシャが言った。耐圧殻を全面にし、超深海航行を続ける「amato2」にやっと追いついた「ナガスクジラ」と「セミクジラ」が先に進んでいく。そのひれは頼もしく三人の眼に映った。
「そうか、なっぴ。それがお前の意思なのだな。では、私の次の役目だ……」
「ナナ、ナナ?」
コマンダーがひときわ虹色に輝いた。そしてその中からナナの存在が消えた。なっぴはナナが母船に向うのを心のなかで感じた。「マイ」の元へ向ったのだろう。彼女にはナナの次の役目が解った。
「マイに教えてあげて、彼女はダゴスに命を救われたの。この星の精霊を扱える唯一の巫女なのだと」
「何のんきに見送っているの、まったく。こんな深海でなっぴをほっとくなんて……」
テンテンの声がなっぴに届いた。
「そうだった、どうしよう?」
コンバーターの向こう、ナノリアから聞き慣れない声が響いた。
「今からテンテンをトランスしましょう、トランスポーテーション、デュランタ」
なっぴの右肩にあったコマンダーは、もう一度七色の石がひとつづつ、輝き始めた。七色が揃い、それは彼女のブローチに変わった。
「由美子に先越されたけど、やっと駆けつけたわよなっぴ」
「テンテン、じゃあ女王様たちは元に戻られたのね、よかった」
「事情があって、完全に元通りってわけじゃ無いけど、シルティのおかげでね。あの声はシルティなのよ。アロマリカーナ様の寄り代となったの、長くは動けない。最後の力で私を人間界に送ってくれた。マンジュリカーナを助けなさいって」
なっぴは思わずうれしそうに言った。
「よかった、シルティは死んでしまったのかと思っていた……」




