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なっぴの昆虫王国 シュラ編  作者: 黒瀬新吉
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人魚の試練

人魚の試練


「ダルーシャ・ナム・ホノ」

黒人魚は「劫火の術」を振り出した。それをセイレは止める。

「オローシャ・カクラーナ」

吹雪がそれを吹き飛ばした。

「ダルーシャ・ナム・トツ」

今度は続けざまに大岩がセイレに向い持ち上がった。

「オローシャ・ピリリカ」

しかしそれを雷針が砕いた。黒人魚は腰の刀を抜いた。そしてさらにもう一本、二本の刀は水平に左右に伸ばされる。そしてそのままセイレに近づいてきた。

「人魚のくせに、オロスの術を使えるのか。ならばその首を切り落としてくれる」

垂直に飛び上がると、黒人魚は二本の刀を交差しながら振り下ろした。次の瞬間金属のぶつかりあう音が部屋に響いた。

「キィーン」

セイレはマーラの槍を頭上で横一文字にしてその刀をはじいた。それもつかの間、黒人魚は左右から二本の刀を交互に突く。セイレはすかさず真後ろに飛び下がると寸前でそれをかわした。ただごとでは無い様子に、なっぴは「ミズスマシ」の眼を召還しようとさえ思った。その時、精霊の姿が見えた以前の記憶が浮かんだ。


挿絵(By みてみん)


「そうか、ナナの力を借りればいいんだわ」

 彼女は七色のブローチに祈った。

「母さん、セイレが戦っている相手を私に見せてください。邪魔はしませんから」

その願いが叶った時、彼女はその目を疑った。

「あれは、まさしく黒人魚。そしてもう一人は誰なの?」

里香の記憶にあった「イラーレス」がセイレに襲いかかっている。もう一人はどうやら人魚らしく大きな長いひれを持っていた。

「なっぴ、人魚の試練に手を貸してはいけません。セイレはミコとともに必ず乗り越えます。エスメラーダはこの星の全ての母なのです。いいですか」

「そ、その声は母さん。何故、何処にいるの?」

声のする方向にいるのは、その初めて見る人魚だった。人魚は彼女を見て微笑んだ様に見えた。


「さあ、そこの若者よ、遠慮はいらない。二人してかかって来い」

黒人魚は呪文を唱えた。

「ダルーシャ・ナム・ヒメカ」

巨大な尾を持つその姿は「ヒメカ」を降臨した黒人魚の姿だった。その尾がミコの俊敏な足をついに捕らえ、巻き付けると引き倒した。

「うぐっ、しまった」

それを見ると黒人魚は大弓に矢をつがえて放った。その矢はまるで生きているかの様にミコの胸に飛んでいった。

「オローシャ・ピリリカ」

たちまちその矢は雷針によって粉々になった。正確にその矢に命中したのだった。しかし体を引き倒しなおもその尾はミコの体を締め上げていく。セイレは黒人魚の太刀を槍で受けながら人魚の精霊が宿った人形に願った。

「エスメラーダの力よ、我が身に降れ。ルーラ・エスメラーダ」

 三体のエスメラーダの像が彼女の周りに浮かび、その瞳が開く。マーラ、ダルナそしてルシナの精霊がそれに宿った。セレナの周りに海水が集まりやがて今度は高く上げた彼女の右手の「ミドリアコヤガイ」の中に吸い込まれていった」


挿絵(By みてみん)


青い髪と瞳の人魚は、なっぴには着こなせなかった青いドレスに変わった。それがセイレのエスメラーダの姿に違いない。彼女はミコに呪文を唱えた。

「リボンヌ・ミコ・アガルテ(ミコよ生まれ変われ)」

ミコは緑色に輝く短剣となり、セイレの右手に握られた。

「ついにセイレは覚醒を果たしたのね」

ナナの言葉と同時に、なっぴは部屋の奥の人魚の口が、そう動くのを確かに見た。

「それはまさしく『バジェスの剣』ついに手に入れたのねエスメラーダ」


「後は、あなたの役目よ。セイレはあなた以上のエスメラーダになったみたいね」

黒人魚はそう言い残し、いずこかへ消え去った。

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