ミコの生い立ち
ミコの生い立ち
「気が付くと、私は南極を遠く離れていた。黒い体に湾曲した大きな口。水平についたひれ、そう私はクジラの子として産まれた。ひもじくはなかった、ベルーガたちがミルクをわけてくれていたから。そしてマナトに人魚姫が産まれた。それがセイレ様だった。一度顔を見てみたいとマナトに向って泳ぐ私に先王『メイフ』様の声が聞こえた。それは助けを呼ぶ声だった」
「セイレ、セイレを返せ」
シュモクザメが小さなかごをくわえてこちらに向ってくる、メイフは大型のサメに囲まれている。香奈、里奈、ラナによって、ようやく産まれた人魚姫をなき者にしようとしていたのは、ダーマだった。
「助けてくれたお前はセミクジラか。なんと心強いことだ。この姫を今後もどうか守ってくれまいか」
やっと駆けつけた香奈はセミクジラのミコをダーマたちを欺くため『リュウグウノツカイ』に姿を変え、セイレを守らせていたのだった。
「あなたは不思議な事に『カイリュウ』の力を持っている。一体どこで受け継いだのでしょう。しかしその力はセイレを守るにはじゃまになるわ、暫く封印しておきましょう」
そう言うと香奈は「封印の術」を使った。
「ミノーレ・カラミール・ミコ」
それが『リュウグウノツカイのミコ』の誕生だった。
「それから今まで私はつかず離れずセイレ様をお守りしていました。地上に上がってからはお仲間として」
「ミコはカイリュウ族だったの」
「はい、しかしそれは誰も知らない事。あのギバハチも知りません」
「ならば私に伝承されたカイリュウ族とムシビトたちの戦いもあなたはすでに知っているというの?」
「もちろん、知っております。なっぴ様がその末裔である事も」
セイレはまるで自分にに言い聞かせる様にミコに尋ねた。
「それでも、なっぴを信じ、ともに戦うというのか」
「私は彼女を信じています」
「そうか、それでいい。私もそのつもりだ」
彼女もまたなっぴを誰よりも信じていた。髪も声も足さえエスメラーダ人魚に預けた彼女は、こんな深海のアガルタのために命がけで現れたなっぴやミーシャ、タイスケ、マイ。そしてレムリアの由美子やムシビトたちを信じている、ともにダーマたちを倒すため迷いはなかった。
「エスメラーダ人魚から全ての伝承は終わりました。ここから本当の人魚の試練がはじまります。セイレ様、私も一緒に戦います、シュラを止めましょう」
突然、その部屋が黒い霧に覆われ始めた。何者かがその部屋にいる気配がした。それも一人ではない、セイレはそれを正確に感知した。
「二人の気配、何者かっ」
「ほほほっ、人魚にして最高の闇。黒人魚の『イラーレス』さ」
「そして始まりの人魚『アキナ』、私を超えるなどと、おこがましい」
二人の前に現れたのはその二人だった。セイレはつぶやいた。
「これが人魚の試練だったの」
もちろん部屋の外のなっぴにはセイレとミコ以外はその目に映らなかった。その時コマンダーのナナが説明した。
「これが人魚の試練。複雑に分離した『クシナの力』をまとめる事ができれば、セイレはこの星の唯一の母となる」
黒く立ちこめていた霧が晴れた。




