ルシナの部屋
ルシナの部屋
「あなたがあのセイレ? 随分大きくなったこと。わたしはルシナ、アガルタ最初の伝承の人魚」
その巫女もセイレをよく知っているようだ。次第にセイレの中にエスメラーダ人魚の力がたまり、彼女が何故産まれたのかも少しずつ解り始めてきた。
「一体、あと何度人魚の試練があるの?」
セイレは部屋に入ってきたミコに聞いた。
「人魚の試練? そうね、私たちはあなたにその心構えがあるか確認をし、その試練を超えるための力を伝授しているだけ。私たちは再誕させていただいた、その代償はこの足。この通りすでに力もはいらない……」
エスメラーダ人魚はセイレの為に再誕し、そして消え去ろうとしている。語らずともセイレには解った、ルシナの持つ伝承は「アキナ」が受け継ぐものだった。それは聖三神の一人「ツクヨミ」から産まれた「クシナ」が最初のエスメラーダに与えるべきものだったのだ。セイレは一歩進み出た、そしてルシナに言った。
「ルシナ、それを私に伝えるためにエスメラーダ人魚は死ねなかったのね。なんて長く辛い事。さあ私がそれを受け止めましょう」
ルシナは微笑みそしてこう言った。
「セイレ、この伝承にはあなたにとって辛い事もあります。しかしそれにとらわれてはいけません。エスメラーダは全ての生命の源、しかしそれと同時に死さえも操れるのです」
その話の間にも、次々とセイレに伝承は続いていた。
「ルシナ、女王の事を私に教えて」
「もちろん、そうするつもりです」
ルシナは、香奈が里奈とすり替わったときの話をセイレに語り始めた。
「ダーマの行動に不信を感じた香奈様はタケル様をメイフ様に預けると、一度人間界に戻られました。その時里奈様とすり替わったのです。里奈様は精霊として『マンジュリカの玉』の中に隠されたのでした」
セイレはなっぴが持つマンジュリカの玉から産まれた「ナナ」が母の精霊である事を知った。あの力は里奈のものだったのだ。
「そして、それを見破られた香奈様はダーマたちに捕らえられました。セイレ、あなたをもう一度アコヤガイに戻したのは香奈様ですが、人魚たちのアコヤガイと見分けがつかない様に幾重にも結界を張ったのはあなたの母、里奈様です」
香奈にはダーマの古い記憶があった、その記憶をルシナもセレナに伝承した。それを伝授されたあとセイレはつぶやく。
「信じられない、この星にこんな時代があったなんて。ムシビト、ヨミ族、彼らは私たちにとって敵なの……」
ルシナは答えなかった。そして伝承が終わるとこうセレナに伝えた。
「セイレ、その足を預けてもらうわ。ダーマたちを倒せなければもう二度とその足で地上を踏む事はできない。その覚悟を見せてもらいましょう」
セイレに伝承されたこの星の歴史。もしこれを知ったとしてもなっぴは「シュラ」と立ち向かえるのだろうか?しかしセイレはルシナにはっきりこう言った。
「たとえ、相手がマンジュリカーナだとしても、アガルタを守るため戦います」
「セイレ様、あなたこそエスメラーダとしてこの星に誕生した本当の人魚姫でございます」
その言葉にミコがセイレに臣下の礼をとった。
「ミコ、あなたはこの歴史を知っていたの?」
ミコは黙っていた。セイレが口調を変えた。
「知っていたのかと尋ねている!」
「はい、以前から」
ルシナは次第に消えていこうとしていた。
「ミコ、エスメラーダに話しなさい。あなたの生い立ちを、人魚の試練がはじまる前に。二人はここで結束しなければなりません」
ルシナが消え去った部屋でミコはついに口を開いた。




