案内人
案内人
「セイレはまだ目覚めないのかしら?」
なっぴはマナトに着くのが待遠しかった。
「マナトまでまだ暫くかかるわ、ベルーガは何をあなたに渡したの?」
後部の『コクピット』で操縦桿を握る美沙の問いに答えたのは里奈だった。
「それは銀の竜、マナトに着いたらそれをセイレの手に握らせなさい」
「おばさまそうすれば、セイレはどうなるのでしょうか?」
「マナトでセイレが覚醒するための試練がはじまります。誰もそれを手助けはできません」
「試練?」
「戦わねばならないのです」
「一体誰と?」
「セイレ自身と、それが最後の試練なのよ。なっぴ」
里奈はそう言うと、セイレの髪を撫でた。
「セイレ、私の娘。母は何もしてあげる事ができません。その試練を乗り越える事を信じているだけです」
海底のクレパスから水泡がいくつか上っている。それを集めたマナトには長い年月のうちに空気が溜まっている。入り口の洞窟からまっすぐと進むうちに、ひとつまたひとつと『深海ウミボタル』が集まって来た。
「そろそろ浮かんでもいい頃です」
里奈の指示に美沙は操縦桿を手前に引いた。
『amato2』が浮かび上がったそこは天井の高い、海底都市の入り口だった。
なっぴはハッチを開きその洞窟をぐるりと見回した。ふとそれは『次元の谷』に似ていると思った。まるで様子は違う、でも彼女はそう思った。背後から聞き慣れない声がした。振り返る彼女の瞳に桃色の髪の少女が映った。
「さあ、行きましょう。マナトの人魚塚まではわたしが案内しましょう」
「あなたはいったい誰なの?」
「フフフッ、七色テントウ。なっぴも知っているはずよ」
テンテンの声が聞こえた。
「ええっ、ナナって、女の子だったの……」
「マイがナナをようやく覚醒させてくれた。マイをずっと見守っていたの。これはラベンデュラ様が命じた事なのよ」
「じゃあ、これから一緒に戦ってくれるの、よかった」
「あのね、なっぴ、『精霊』は戦うものではないの、手伝うだけ。『パピィ』も『ナナ』も由美子やマイの力を強めるだけ、最後の決断は自分が決めるのよ」
「解った、解った、さあ先に進みましょう」
セイレを抱えたミコが岩に下りるのを確認して、美沙はハッチを閉じ海中に『amato2』を待機させた。アガルタの『マオの洞窟』まではまだ遠い、『amato2』を傷つける訳にはいかない。
天井には化石化したアガルタの『深海ウミボタル』が星の様にちりばめられていた。それは奥へ進むにつれ『紅珊瑚』に変わり皆に進むべき道を指し示す様に輝いていた。




