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なっぴの昆虫王国 シュラ編  作者: 黒瀬新吉
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カグマ

 カグマ


『カグマ』は『ゴリアンクス』の王子『ゴラゾム』に一言も言わず外宇宙に向けて出発した。外宇宙航行用の宇宙船に乗り込んだ『カグマ』は母星の引力圏を離脱すると『シュラ三号』からの信号に向け、進行方向を固定し終えた。モニターに映る母星『ゴリアンクス』はここから見れば昔と変わりなく美しく輝いていた。『シュラ三号』を回収するため、辺境の銀河に向かったその船には、誰一人同乗者はいない。

「どうやら『シュラ一号』は、起動プログラムが故障したらしい。二号は既に破壊された。三号は起動した様だ、一刻を争う。『シュラ三号』を止めれるのは、私しかいない……」

『カグマ』は『ゴラゾム』の言葉をもう一度思い出した。


「何故、『シュラ』にあの様なコマンドを組み込んだのだ!」

『カグマ』は、押し黙ったままだった。ようやく目に見えてムシビトの国『ゴリアンクス』の人口にかげりが見え始めた、いち早くそれに気付いた科学者『カグマ』は王子に移住可能な星を今のうちに探査したいと進言し、三体の『探査用インセクトロイド』を創り、それぞれを外宇宙に向かわせたのだった。『インセクトロイド』には王子『ゴラゾム』の皮膚細胞を培養し装着した、ムシビトの中でゴラゾムの皮膚は比べようも無くしなやかで、丈夫だったのだ。その一体が先日母星に通信してきた事が、彼を単身外宇宙へと出立させたのだった。


「……愚かな異星人に告げる、この兵器は我らには通用しない。我々の星は『オムズ』この星の知的生命体には違いないが精神社会に生きる。見ればこの兵器は生命エネルギーに異常に反応する様にプログラミングされているが、いくら攻撃しようと我々を殲滅などできない。残念だがこの星に異星人の住む余地はない。忠告する、他の生命体を滅ぼしその星に移住をしたところで、未来を手に入れる事は出来ない……」

『カグマ』は『二号』の通信回路を通じて送られたメッセージを、王子とともに聞いた。

「滅び行く生命体は、そのまま滅びてしまえというのか、断じて違う。しかし、他の生命体を殲滅する事は決して許されまい……。『カグマ』、別の方法が見つかるまで自重し、即刻『シュラ』を回収しろ」

「しかし、『ゴラゾム』様、我々には時間はそれほど残っていないのです……」

「これは、命令だ。カグマ!」

それが『カグマ』と『ゴラゾム』が交わした最後の言葉だった。


挿絵(By みてみん)


 帰還


「あれからどのくらいたったのだろう」

カグマは母星に進路を固定したまま、軽い眠りについた。シュラ三号は、回収しコマンドを書き換えた。そしてシュラ二号はカグマと三号により完全に破壊したのだった。相変わらず一号の行方は知れなかった。だが母星に帰ればその行方を調べることはできる、カグマは長い旅を中断し、母星に戻ることにした。

「もう誰も残ってはいないだろう、『ゴリアンクス』そして『ルノクス』にも……」


『ゴリアンクス』に降りたその宇宙船は、すでに残り少なくなった燃料を補給する事もしなかった。そして小型の宇宙船は再び飛び立ち、兄弟星『ルノクス』に降下していった。その船体は長い航海と度重なる星間戦争に巻き込まれた結果、あちこちが痛んでいた。船体だけではない、『ルノクス』の王宮に向かう搭乗者の身体にも痛みがあるらしく、まるで力ない足取りだった。無理もない、宇宙歴で百年を越える時間を宇宙船は外宇宙で過ごしてきたのだった。


「ここにはまだ、ホストコンピュータを起動出来るエネルギーが残っているのか」

原色に点灯する起動コマンドを見て、宇宙船の搭乗者は半ば驚きの声をあげた。『ゴラゾム』のメッセージをダウンロードしたところで、母星『ゴリアンクス』のコンピュータは、やっとその使命を終えた。そのメモリーを再生するために、宇宙船は兄弟星の王宮の庭に降りた。その宇宙船の搭乗者こそ、『ゴリアンクス』の最高の科学者『カグマ』だった。

メッセージが王宮に流れ、三次元映像システムが起動した。映し出されたのは疲れた表情の『ゴラゾム』だった。『カグマ』は、静かにそれを見つめていた。


「……『カグマ』、すまない。おまえの言う通り、時間はなかった。おまえのあとを追うように毎年『ゴリアンクス』から多くの者が移住先を探しに旅立った。だが誰一人戻ってこなかった、とうとう我々の人口は半減した。それでもおまえが戻ってくればと国民は望みをつないだ。しかし『ゴリアンクス』だけではない『ルノクス』でも同様に原因不明の人口減少が止まらなかった。『ルノクス』の王も女王も、わしの父もおまえの母も没した。父は私にこの星を捨て、旅立てと告げた。おまえの創った最高の宇宙船『キャステリア』に、われら虫人は乗り込みこの星を出立する。もはや『ゴリアンクス』も『ルノクス』もない。おまえが『シュラ』に与えたコマンドが間違っていたのか仕方のなかった事なのか、今のわしにはもう断言する自信もない。ただ『カグマ』おまえがあのままこの星にいたら、きっと良い方法を考えたに違いないだろうと私は思う。『カグマ』おまえは宇宙一の科学者だ、そのことは断言しよう。我々は今より外宇宙に向けて出発する、我らの航跡を見る事ができたら必ずそこへ向かってくるのだ。わしはその日をいつまでも待っている……」


さすがにそこで補助電源が弱まり、三次元映像再生システムが沈黙した。

「ゴラゾム様、私は何のために『シュラ』を回収したのですか?」

『カグマ』は『キャステリア』の航跡レーダーを呼び出した。その到着地を計算させるために、自分の右の指をプラグに変換したのだった。そのとき『カグマ』の背後から機械的な声がした。

「キケン、脳細胞維持用電源減少中、キケン域二入リマス……」


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