記憶
記憶
「わしの記憶は、父の言葉からはじまる。そうとも、わしはラグナの子孫だ。神の子であった『ラグナ』はある日を境に永遠に消え去った。父はラグナの意志を継いで産まれた、この星からも見える、今ではヒトに『火星』と呼ばれている星でな」
ムシビトの移住先を探査するための『シュラ』は火星に向っていた。その時の話だ。
「不思議な事だ、あの日を境にラグナはわしたちを残して何処かへ消えた。やがてわしらは星と同化してこの力で生き続けていた。そしてずっと待ち続けている。随分経つがそれは未だに現れない」
ラグナのオサはそう言い、自らの分身たちを振り返った。分裂を繰り返して、ラグナ・マルマの子供たちは次第に退化していた。遥か彼方にはようやく固まりつつある若い星が見えた。
「息子よ、わしたちは何を探しているのか解るか? あの星にそれはあるのか?」
若き日のダーマは答えた。
「そんな事、まずは行ってみなければ解りません」
ダーマは父にそういい、地球に向った。
その後シュラが火星に到着した。シュラを倒したと思ったのもつかの間、シュラはたちまち再生しラグナ族を殲滅するまで果てしない攻撃を繰り返していった。やがてシュラは、彼らの力の根源が星の力である事に気付いた。シュラは火星の中心のマグマを攻撃した……。
「それがあの星の最期だった。父の記憶はい絶命する前に、もう一体のシュラが星に現れたというところで終わっている」
「つまり、シュラは3体あったという事なのですね」
「おそらくそうだろう、火星に現れたシュラはその後再びこの星にくるかと思っていたが、別方向へ飛び去った。わしはヨミ族の住むこの国でひっそりと隠れていた。シュラを倒すためにはわしの力では到底無理と知っていたからな」
「何を探しにこの星へ来たのですか?」
里奈はダーマに聞いた。
「わしらをラグナの元へ導いてくれる救世主『メシア』を探すためだ。しかしそんなものは幻想に過ぎなかった。この星の生き物には、わしは奇妙な形の寄生虫としか映らない。この体に宿るマナとヨミの力は、タオ様直伝のものだ。それを手にするためわしを奪い合うものまで現れた。その代償はとてつもなく大きいのにな、クククッ」
ダーマはそう言うと、『人質』の両手首を縛っていたひもをほどいた。
女王がようやく自由になった手首を擦りながら言った。
「あなたはこの星で次々とムシビトに寄生していった。それは何のため?」
「……何故だと?」
しばらくしてダーマはこう言って締めくくった。
「わしは、ラグナ・マルマが消滅したその日『メシア』を手にしたことに気付いたのさ、香奈……」




