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なっぴの昆虫王国 シュラ編  作者: 黒瀬新吉
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闇の種

闇の種


「ギバ様が嘘を言うとは思えません、しかし遥か遠くの星からこのアガルタに着くまでにその力は失われていたり、古くなっているとは思われませんか。セイレ様、タケル様のためにもそれを早急に確認する事が必要なのではありませんか?」

「しかし、万一の事があっては」

「ハッハッハ、実験のためにマナトの洞窟に運び込めばよいのですよ。もしもの時はその天井を打ち抜けば大量の海水が一度に流れ込んでくるでしょう」

「ふむ、それでお前の言う通り『シュラ』の力が心配の無い程度のものなら、前もって破壊しておくというのか」

「今後のアガルタ、いえ王子と姫のために不安なものは取り除いておくのに越した事は無いですから」


「と、そう申したのだ。お前はどう思う?」

ギバもそれはもっともだと思った。実は同じ事をシルラに進言しようと思っていた。

(ダーマは信頼できる男だな)

ギバは同じ考えの彼に心からそう思った。しかしこうして『闇の種』はアガルタに持ち込まれた。それを聞いた女王はシルラに聞き返した。


挿絵(By みてみん)


「シルラ様、本当に大丈夫でございますか?」

「はははっ、心配ない、マナトの岩盤は固い。海水に満たされた洞窟にシュラを移すだけだ。今いる場所よりも安全だからな」

里奈はそれでも心配そうに言った。

「しかし、万が一という事がございます。マオ様の洞窟の方がより深く、安全ではございませんか」

「案ずるな、シュラなどすでに古くて使えないものかも知れないぞ、それより近々地上の妹に会うのだろう。マナトの空気を入れ替えておいた、新鮮なモンゴルの空気だ」

「香奈のためにお気遣いありがとうございます」

「なに、人には肺しか無いのだから仕方あるまい。わしもここでは人型でいられる。

もう、わしが竜化する事も無いしな、いや既にわしには叶わぬのだがな、ははははっ」


実験


シュラを運び込むのはマナトのはずれの古い洞窟、その中は太古の空気が閉じ込められていた。

「実験を中止する時は、ギバとお前が岩盤を一気に破壊する。任せたぞ、ダーマ」

「はい、明日にはギバ様は南極からお戻りになります。ところで女王様はこの実験をご存知なのですか」

「いや、余計な心配はせぬ様に、里奈には詳しくは話しておらぬ。もちろん父にもな」

「そうでございますか」

ダーマは心の中で笑っていた。

(フフフッ、馬鹿め。シュラはお前ごとき、いや俺でさえ倒せないのだ。それを『カグマ』という科学者は随分昔に創り上げた。たったひとつの弱点、塩水を使わなければ封じる事はできない。ギバが南極から戻る頃には、この実験は見事に失敗している事だろう)


その頃南極に着いたギバは、複雑な思いで「それ」をそっと撫でた。巨大なクジラの骨は『セミクジラ』のものだった。死んでもう数年は経っている。ギバを深海で飲み込んだのは、偶然にもそのクジラだった。

「俺はマッコウクジラとばかり思っていたが、こいつだったのか」

そのクジラはギバに体の内部から切り裂かれ苦しみもがき、その結果シュラの存在を彼に伝えた。複雑な思いで彼はクジラに祈った。


「おかげでわしは、カイリュウの力『竜化』の術を未だにこうして持っている、アガルタのためタケル様、セイレ様の役に立てる」

クジラは暫くは生きていたのだろう。陸に這い上がった跡があった。そして再び海に頭を向けたまま死んでいたのだ。

「全ての生き物は、アガルタより産まれる。ここで力尽きたのか、おや?」

そのクジラの先に、海まで続く小さな『這いずり跡』があった。


「そうか、セミクジラは最後に母になって死んだのだな……」

そう言うと彼は、もう一度そのセミクジラの亡がらに祈った。

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