エピソード3 レムリアの巫女
レムリアの巫女
なっぴを助けるために『サフラン(由美子)』を送ろうと、ラベンデュラたちはマンジュリカーナの伝授した力を全て使った。送還は成功したものの、レムリアの巫女たちは力つき倒れてしまう。もちろんそれはなっぴも由美子も知らない、人間界の二人に余計な心配をかけてはいけないとの『デュランタ(テンテン) 』と『ゲンチアーナ(リンリン)』の判断だった。ギラファ大臣がもう一人の『リカーナ』の娘『アロマリカーナ』の名を口にする。
由美子送還の後
「母上はまだ眠られているのか」
「おう、戻ったのかカブト」
テラリアの王、コウカとともにカブトが王宮の寝室に入って来た。各国で修行を終えた第二王子は今では『カブト』と名乗っている。バイスは『デュランタ(テンテン) 』を妃にし、ドルクの名を継いでいた。数日前、五人の巫女はなっぴを助けるためにマンジュリカーナの力と引き換えに『サフラン(由美子)』を人間界に送還したのだ。そのため力尽きた巫女たちは次々と倒れていった。マンジュリカーナの娘、トレニアーナの血を持つ『ヴィオラ(サキ)』と『アイリス(フランヌ) 』は間もなく正気に戻ったが、フローラ三姉妹の長女にして筆頭巫女の『ラベンデュラ(ロゼ)』は未だ目を覚まさない。その横で考え事をしていた『ギラファ(ノコギリ) 』大臣が言った。
「間違いありませぬ、この地でお産まれになったアロマ様の力が再びひとつになろうとしているのです。アガルタの一件でアロマ様が、王女フローレス様にもそして孫娘の『フローラの三姉妹』にも伝授することなく今まで封印していた再誕の力。……しかし誰を再誕しようとするのでしょうか?」
「カブトじゃよ、ムシビトたちの神」
「これは大臣、それにラクレス王」
「ギラファ、彼は元大臣じゃ。それより、カブトにイオとアギトが加われば、そのインセクトロイドに勝てるのか?」
ラクレスが念を押した。
「解りませぬ、しかしそんな事が可能でしょうか。黄金のカブトはフローラ国のトレニアの丘にあるらしいですが、なっぴ殿が地中深く埋めたと聞いています。誰もその正確な場所を知りません。それに再誕にはマンジュリカーナ様の降臨の術が必要です。それらを無くした今『イオ』も『アギト』も降臨させる事はできないのでありませんか」
「ははっは、相変わらず、早い決断じゃな、ギラファ。マンジュリカーナ様の伝えた術は消え去った。しかし、レムリアにはもうひとつ封じられていた力がある。さあ入りなさい、二人の巫女」
「お義母様、それにアイリス様、もうよろしいのですか?」
「デュランタ、私たちは大丈夫。母トレニアのおかげかしら? ねえ、フランヌ」
「そうね、まだがんばれるわ」
それを聞いてギラファが大臣に言った。
「その力とは『トレニアーナ』様の力でしょうか?」
彼は既にその力の事は知っていた、しかしマンジュリカーナの力には及ばない。
「まあ、アイリス殿の話を聞いてからだ」
アイリスが話したのは。つい最近まで各国を調べていた女スパイの話だった。
「ナノリアの戦いが終わってすぐ、各国に正体不明の『スパイ』が出没したのは皆さんは知らなかったでしょう。どうやらそれは女、マンジュリカーナ様の事を調べていたようです。各国にはまだ王の消息さえも知らせていなかった。王たちがこの王宮やナノリアを立て直していたことも知らない時に」
「その女が何の関係があるのだ、アイリス」
ラクレスがせかした。
「はい、実は私にはその『女』に心当たりがあります。いえ、間違いありません。彼女こそ戦いの最中に行方知れずになっていた、巫女アゲハの『シルティ』です」
「何、シルティと申されたか。『巫女アゲハ』がその女だったと」
ギラファは驚きからかアイリスを睨みつけてしまった。その部屋で眠る女王はまだ目覚めそうになかった。
「もしそうなら、諦めるのはまだ速いぞ」
ラクレスが王たちにそう言った。
「やれやれ、トレニアの丘でまた穴を掘るのか」
コウカがそう言って逞しい角を振るわせて苦笑いをした。




